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『アフリカの瞳』 [帚木蓬生]

アフリカの瞳

アフリカの瞳

  • 作者: 帚木 蓬生
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2004/07
  • メディア: 単行本
内容(「MARC」データベースより)
国民の10人に1人がHIVに感染。毎日200人の赤ん坊が、HIVに感染したまま生まれてくる国。ここではエイズという絶望すら、白人資本に狙われる…。いまわれわれに生命の重さを問う衝撃作。
先週、近所のコミュニティセンター図書館で借りた本について今日は書いてみたい。本書が発刊されたばかりの昨年夏、すぐに読んでみたいと思ったのだが、小説を買うのに躊躇して結局読むのを諦めていた。

2003年始め、米国で仕事をしていた頃、大沢たかお主演のNHKドラマ『アフリカの蹄』を衛星放送で見たことがある。南アフリカのアパルトヘイト下における黒人社会滅亡の陰謀に巻き込まれる日本人医師の話だった。その原作者が帚木蓬生(Hahakigi Hosei)氏である。今日紹介する『アフリカの瞳』は、いわばその続編で、12年後の主人公・作田信が描かれている。

ひとことで言えば南アフリカで全人口の15%もの人々が罹患していると言われているエイズにまつわる話である。作田は、『アフリカの蹄』で知り合った黒人女性パメラと結婚し、クルーガー市の市民病院で外科医を務めるとともに、友人サミュエルが郊外で運営するクリニックの仕事も手伝っていた。そこで、作田は、原因不明の痙攣症状で命を落とした黒人女性を目撃する。調べてみると、市内のあるクリニックで白人医師に得体の知れない抗HIV錠剤を処方され服用を指示されていたことを知った。どこかの製薬会社が、動物実験を省略していきなり人体で新薬の実験を試みているらしい…。一方、妻のパメラは、政府が国産抗HIV剤として普及を試みていたヴィロディンが実はあまり効かないのではないかと疑問を抱き、勤務先の保健センター所長の反対を押し切り調査を開始する。

結局、抗HIV薬の開発では遅れを取っていた米国大手製薬会社の陰謀も、国産薬品の薄い効力の暴露を恐れる政府の陰謀も、いずれも白日も下にさらされ、製薬会社が「他社も同じようなことをやっていた」と暴露したがために全世界的な製薬会社バッシングが起き、結果として抗HIV錠がサブサハラアフリカには無償で配布されるという国際社会の対応が引き出されてハッピーエンドというストーリー展開だ。

429頁という大作であり、一応ピンチもあればクライマックスもあるが、スリル感という点ではイマイチのような気がする。しかしこの本が凄いと思ったのは、アフリカの低開発、とりわけエイズやジェンダーの問題に関して、著者・帚木氏がかなり深い知識を持っていると感じられることである。この1冊を読めば、おそらく南アフリカ(本書では明示されていないが、明らかにこの舞台は南ア共和国である)が抱える深刻な問題がとてもよく理解できる。また、まかりなりにも治療法が確立されていながら治療に莫大な費用がかかる途上国のエイズ問題について、どのような解決の方向性が考えれるのか、著者なりのビジョンをしっかり持っておられるようにも思えた。先進国の製薬会社がガチガチの特許権を設定してコピー薬の製造も途上国への抗HIV剤の無償配布も認めず、莫大な利益をむさぼっている構図を見事に描いていると思う。

途上国が抱える様々な問題を日本にいながらにして理解するには、こうした丹念な取材と確固たる知識に裏打ちされた小説を読むのが最も手っ取り早い手段であると思う。

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