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『神去なあなあ日常』 [読書日記]

神去なあなあ日常

神去なあなあ日常

  • 作者: 三浦 しをん
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2009/05
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
美人の産地・神去村でチェーンソー片手に山仕事。先輩の鉄拳、ダニやヒルの襲来。しかも村には秘密があって…!?林業っておもしれ~!高校卒業と同時に平野勇気が放り込まれたのは三重県の山奥にある神去村。林業に従事し、自然を相手に生きてきた人々に出会う。

三浦しをんさんという作家は、日常的でないテーマで人間関係を上手く描ける作家だと思う。『風が強く吹いている』は箱根駅伝、今回は若者が誰も振り向かなくて産業としての存亡もかかっている林業である。あまり読まない作家だけれど、小説を書くために相当念入りな取材をされている。『風が強く吹いている』を読んで箱根を目指したという駅伝ランナーは未だ聞いたことがない。多分『神去なあなな日常』を読んで林業やってみよかと思う若者はあまりいないのではないかと思うが、こういう形で斜陽産業が脚光を浴びるのは悪いことではない。

実はこの本、先般の一時帰国の際、帰国当初から気になっていた1冊だった。結局迷いに迷って再赴任前日に購入し、デリーに持って来た。実は、この小説の舞台となる三重県神去村、架空の村だとわかっているが(多分尾鷲の方じゃないかと思うが)、これに近い一志郡美杉村に昔単身ドライブ旅行で訪れたことがある。今や市町村合併で津市に統合されてしまった村であるが、ここには南朝・北畠氏末裔の居城(霧山城)と北畠氏を祀った神社(北畠神社)がある。それを見に行っただけのことだが、この霧山城址というのはかなりの山奥で、今回読んだ作品をイメージするのにちょうど良かった。この作品が三重県を舞台にしていなかったら、おそらく単行本を買ってデリーに運んで来ることはなかっただろう。

KiriyamaFort.jpg
《霧山城址からの眺望》

さて、作品の方は、さすが三浦さん、登場人物一人一人を非常に生き生きと描いていて、非常に面白い作品に仕上がっていると思う。今や林業は衰退の一途で、日本の森林は維持管理の担い手がおらずに荒れ放題になりつつあるという。当然、若者が不在で折角の技能が世代を超えて伝承されない。この作品でさりげなく描かれている山仕事の多くは、あと10年もしたら実演できる人自体が絶滅してしまう可能性があるように思う。本作品中に登場する神去村の神去地区は、中学生以下の子供が1人しかいないという記述がある。登場人物の構成を見渡しても、この村はあと10年20年したらどうなってしまうのだろうかとふと考えてしまった。おそらくここに描かれる様々なお祭りやしきたりも、保存困難になっていくのだろう。

ところで、本書の中には、神聖や神去山に入って12年に1回神木を切り出すとか、切った後に同じ樹種を植林するとかいった光景が描かれているが、実はこれと同じような風習がニュージーランドのマオリ族にもあるというのを最近某テレビ番組の録画を見ていて知った。環境保護を声高に謳うわけでもなく、神去の人々にとってはごく当たり前のことをやっているのに過ぎないが、とはいえ自然環境を保全していくための知恵はどこの国にもよく似たものがあるのだなというのを改めて実感させられるエピソードだった。多分、インドの森林を見てもそういうところで生活している先住民にはそんな知恵があるのではないかと想像する。

主人公・勇気は作品中ちゃんと恋愛も経験するのだが、さすが女性作家らしく非常にさらりと描かれている。若い男女の出会い自体が少ない僻地農村で、美人の小学校教師と出会うというのはちょいと出来過ぎのような気もするが、仕事が長続きするのなんて意外とそんな要素だったりするのかなとちょっと苦笑いした。
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twilightkuma

こんにちは。
日本の森林は国土の67%を占め、世界有数の森林大国ですが
木材供給は2割程度で、残り8割は安い外材におされています。

長い年月をかけて木を育てても、伐採・搬出等に費用がかかり
赤字になってしまうのが日本の林業の現状のようです。

物語に登場の中村家のように広大な森林を保有していれば
それなりに林業で生きていけるかもしれませんが
小さな山林は保有していても今や無用の長物同然だそうです。

天然柿の巨木や千年杉なら、一本“ん百万”“ん千万”
で売れるのでしょうが、一回切ったら後はまた千年後なんて
何だか気が遠くなる話しですね。
by twilightkuma (2009-07-20 11:12) 

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