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『ダイヤモンドダスト』 [南木佳士]

ダイヤモンドダスト (文春文庫)

ダイヤモンドダスト (文春文庫)

  • 作者: 南木 佳士
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 1992/02
  • メディア: 文庫
内容(「BOOK」データベースより)
火の山を望む高原の病院。そこで看護士の和夫は、様々な過去を背負う人々の死に立ち会ってゆく。病癒えず逝く者と見送る者、双方がほほえみの陰に最期の思いの丈を交わすとき、時間は結晶し、キラキラと輝き出す…。絶賛された芥川賞受賞作「ダイヤモンドダスト」の他、短篇三本、また巻末に加賀乙彦氏との対談を収録する。
『エチオピアからの手紙』に引き続き、南木佳士作品を読んだ。相変わらず数少ないセリフよりも豊かな情景描写で読ませる作品群であり、味わい深い文章だと思う。癌で亡くなる人々を同じく描きながら、重松清は泣かせる作品が多いが、南木佳士は静かに読ませる作品が多いように思う。登場人物が泣くシーンが意外と頻繁に登場するけれど…。

収録4編のうち、「ダイヤモンドダスト」を除く3編は著者も参加したことがあるタイのカンボジア難民キャンプでの国際医療チームに参加した医師・看護師が主人公である。任地から戻ってきて職場に復帰したもののそこでの仕事に馴染めなかった医師が、同郷の幼なじみの女性が癌に侵されて入院してきてその死に立ち合う「冬への順応」、同じく任地から戻った医師が久し振りに参加した国際医療チームの同窓会に出席し、同じ時期に任地にいた看護婦から絡まれ、そこで行なわれていた措置の妥当性について振り返るという「長い影」、国際医療チームの現地通訳が看護師として日本に留学してきたのを契機に、チームに参加していた日本人看護師の勤務地を訪ねて久々の時を過ごす「ワカサギを釣る」と、いずれもリアルタイムで難民キャンプの医療活動を扱っているのではなく、その後を描いている。チームに参加した主人公はいずれも立場が異なるが、一見すると同一人物が主人公かと錯覚を起こしてしまう。多分著者はこれに近い経験を国際医療チーム参加後にされたことがあるのだろうと思う。

「ダイヤモンドダスト」について言えば、カンボジアのことは出てこないが、ここで既に高齢者の死と若くして癌による死というものが扱われている。本作品が芥川賞受賞したのは1989年のこと。これ以前に著者が書いてきた短編の殆どは舞台が浅間山を眺められる群馬か信州の町や山村だが、1981年のデビュー作「破水」から約10年、既にこの地域では高齢者の看取りのあり方や、癌患者への医療のあり方について、議論が生じる余地があったのだと思いながら読むと興味深い。1980年代は、日本の人口構成が、OECD加盟国(つまり先進国)中最も若かったところから一挙に高齢化が進行して先進国の中で最も年老いた国に踊り出るという劇的な変化が生じた10年間だったのだが、それが最も先鋭化して見られたのが農村部で、それが南木作品の中ではよく垣間見える。また、この頃に日本の死亡原因の第1位が交通事故から癌に交代している。

個人的には「冬への順応」が好きだった。
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