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『ひなた』 [吉田修一]

ひなた (光文社文庫)

ひなた (光文社文庫)

  • 作者: 吉田 修一
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2008/06/12
  • メディア: 文庫
内容(「BOOK」データベースより)
新堂レイは有名ブランドHに就職したばかりの新人広報。彼女は、海で偶然再会した同級生の大路尚純と昨年夏から付き合っている。尚純は大学生。彼が両親と暮らす文京区小日向の家で、兄夫婦が同居をし始めた―。それぞれが関わり合って淡々とした日常を紡ぎだす。お互いに踏み込むことのできない「聖跡」を抱えながらも―。四人の視点で「春夏秋冬」を描き出す。
この本も、インドに持って行って現地の知人に贈呈する予定。だから暇を見つけてはコツコツ読んだ。

吉田修一という作家は、僕らが日常交わしている会話に近い会話を小説の中でも展開できる人だ。自分が知っている作家の小説の中で、これほど親近感を覚える作家のものは記憶がない。

ただ、登場人物が抱える、人には話せぬ裏の事情といったものに対しては、それほど親近感を覚えることはない。普段の何気ないひとコマひとコマが、微妙な均衡、不気味な静けさの中で成り立っているということをこのように突き付けられると、正直言って不安に陥る。

この作家の作品は『横道世之介』や『悪人』を今までに読んでいるが、盛り上がらない日常会話とその裏に秘められた非日常性は、『横道世之介』はともかくとして『悪人』とは通じるものがあるように思えた。春夏秋冬の1年間を描いたという点では『横道世之介』とも似てないといえないこともない。でも、結局、播かれた伏線の中には結末に向って収束していかずに宙ぶらりんのものも結構あったし、そもそもクライマックスシーンも特にない状態でストーリーが終わりを迎えた感があり、「え?これで終わり?」というのが今の偽らざる気持ちである。


タグ:吉田修一
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yukikaze

伏線の多いストーリーが収束せずに終わるほど気持ちが悪いものはありませんね。
連載途中で作家が亡くなったりした場合や、亡くなられた作家の未完成作品を読むとそういう気分になることがありますが、作品が完成してるのに、宙ぶらりんで終了は困ります。
by yukikaze (2010-12-01 16:57) 

Sanchai

yukikazeさん、いつもコメント&nice!を下さり、ありがとうございます。

>伏線の多いストーリーが収束せずに終わるほど気持ちが悪いものはありませんね。

その通りなのですが、今振り返ってみると、散りばめられていた伏線に気付いたのなら、何が起きたのかぐらいは想像働かせろよと著者は言いたかったのかもしれないとも思えます。なんだか、読者側のイマジネーションが試されているような気もいたします。
by Sanchai (2010-12-02 00:27) 

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