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11.取り残され声も出ず [S.D.Gokhale]

Gokhale1.jpg タラ(実名ではない)はムンバイのスラムの1つに夫と住む幸せな主婦だった。家計はいつでも火の車だったが、2人の結婚生活は強固で愛情に満ちたものだった。

 しかし、ある日タラは自分の体についてある兆候が見られるのに気付き、それがハンセン病ではないかと疑わざるを得なかった。彼女が恐れていたことを医師も指摘した。この痛ましい知らせで夫を動転させることを望まなかった彼女は、静かに家を出た。

 彼女はハンセン病回復センターに取りあえずの避難場所を見つけた。しかし、病気の方は彼女の体をむしばみ始めた。顔面の神経にも悪影響が出始め、じきに顔面が大きく崩れて、両目のまゆを失い、耳たぶが厚さを増し、鼻がくぼんできた。まるでライオナイトで作った顔のような状態になっていったのである。

 治療が始まると、タラは夫に頻繁に手紙を書き、どれだけ夫に会えずに寂しいかを伝えた。ある日、彼女は夫に、ハンセン病感染者コロニーのすぐ外にある小屋で会って欲しいと要望した。夫も彼女がいなくて寂しいと思っていたが、会うことについて了承した時は、彼女が身体的にどれだけハンセン病の影響を受けてしまったのかがよくわからなかった。

 夫が小屋に辿り着く頃には、夕闇がその地区を覆っていた。激情に駆られて2人は抱き合い、そしてその場で愛を交わした。夫が照明を点けたのはその後のことだった。

 夫は、愛のこもったまなざしで自分を見つめる妻の崩れた顔面に戦慄を覚えた。ショックと悪寒が彼を襲い、よろめきながらドアに手をつき、食べていたものを吐いてしまった。そして、ひとことも発することなく、そして振り返ることもなく、夫は同様にショックを受けた妻を残して小屋から出て行ってしまった。

 タラの夫は二度と戻って来なかった。タラは二度と夫に手紙を書かなかった。そして、その日以来、彼女はひとことも話さなくなってしまったのだった。

 
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