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『小さな理由』 [森浩美]

小さな理由

小さな理由

  • 作者: 森 浩美
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2010/03/23
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
私は破れた鯉のぼりを抱え、「おかあちゃん、僕んちには本物の鯉のぼりはないの」と涙をこぼしながら尋ねた。答えあぐねている母を尻目に、「ヒデ、鯉のぼりを上げるなんてのは立脈な男の子がいるうちがするもんだ。お前みたいな子のために上げる鯉のぼりは、うちにはねえ」伯母はそう言い切った。―父のいない家庭で育ち、苦労と我慢を重ねた主人公に、訪れたささやかな奇跡とは(「夜の鯉のぼり」より)。心に沁みる家族小説短編集。
いい作品が収録されている。中年サラリーマンの話ばかりだという点で今の自分の境遇とも通じるところがあり、「そうだ、そうだ」と頷きながら一気に読んでしまった。重松清作品に近い家族をモチーフにした泣かせる作品ばかりだが、重松ほど「死」を多用していないところにはむしろ好感を覚えている。今年48歳になろうとするオヤジにとっては、重松作品で癌におかされる中年サラリーマンに出会うたびに、「明日は我が身かも…」と思って暗い気持ちになったところ。いや一家の大黒柱とは限らず、家族の一員が難病におかされてゆっくりと死を迎えるような話は読んでいてつらい。森作品にはそうした展開が少ないのがいいと思える。

但し、逆に主人公が「離婚」とか「リストラ」とかに絡む話が多いのは少々つらい。年老いた親を兄弟の誰が引き取って面倒を見るかで揉める話というのも…。やっぱり「明日は我が身かも…」と考えてしまう。

いちばん泣ける話は「いちばん新しい思い出」だろう。娘が小さい頃に妻と離婚してしまった主人公が、結婚を控えた娘の突然の来訪を受けるというお話。昨年生島ヒロシが出したCDシングル曲「もしもし、お父さんです」をちょっと連想させる。この歌は、離婚した父が出張で上京してきたついでに都会に住む娘に電話を試みるという話だったが…。

昨日は母の日だった。「手のひらが覚えてる」も、年老いた母の突然の来訪に都会に住む主人公夫妻が戸惑う話だが、こういう簡単に答えが出ないお話はとても考えさせられる。うちの母がそうなったとしても、多分住みなれた田舎を離れて僕達の住む東京に移り住むようなことにはすんなりならないだろうというのがよくわかっているから。

あとは「渡り廊下の向こう」ですかね。中学生で高校受験を控えた娘に突然彼氏とコンサートに行きたいので夜の外出を許して欲しいと懇願され、自分の中学時代の経験を振り返るという話だが、程度の違い、男女の違いこそあれ僕らも似たような経験をして、そして男として取るべき行動を取れずに後で後悔したことがあるので、そうした自分の中学時代の出来事を思い出してしまった。

著者本人がその界隈に住んでいるからか、作品中に三鷹や吉祥寺が登場するので親近感があった。
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