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『極北ラプソディ』 [海堂尊]

極北ラプソディ

極北ラプソディ

  • 作者: 海堂 尊
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2011/12/07
  • メディア: 単行本
内容紹介
 『極北クレイマー』につぐ、週刊朝日連載の迫力満点の第2弾。崩壊した地域医療に未来はあるのか?「夕張希望の杜」の医師である村上智彦氏は朝日文庫判『極北クレイマー』の解説で、「ここで起こった事は将来の日本全体の縮図である」と書いた。
 『極北ラプソディ』は閉鎖の危機にある極北市民病院に、赤字建て直しのために世良院長がやって来たところから始まる。彼は再生のために、訪問介護の拡充、人員削減、投薬抑制をかかげた。また世良院長は雪見市の極北救命救急センターに外科医・今中をレンタル移籍した。瀕死の地域医療でもっとも厳しい局面にたつ救急医療。速水センター長の指示をあおぐことになった。移籍から3日目には、速水が指揮をとる「将軍の日」で、入れ替わり立ち替わり救急患者が訪れる一日になった。文字通りの救急医療の修羅場に遭遇する今中。
 一方、極北救命救急センター長の桃倉は息子が出場したスキー大会を見学していたが、雪崩に巻き込まれ、命が危険な状態に。速水はドクターヘリの出動を宣言した。医療と行政の根深い対立をえがき、地域医療の未来を探る渾身のメディカル・エンターテイメント。
海堂作品はかなり読んでいるが、最も好きな登場人物は「ジェネラル(将軍)」速水である。従って、どの作品が好きかと聞かれれば、『ジェネラル・ルージュの凱旋』と答えるだろう。では、次に好きな登場人物は誰かと問われたら、速水の先輩にあたる世良である。世良の若かりし頃を描いた海堂作品としては『ブラックペアン1988』と『ブレイズメス1990』がある。個人的には前者が好きだ。そしてその世良が久し振りに病院再建人としてさっそうと登場し、かつ救命救急センター長を辞職して東城大を後にした速水と思しき救命救急医が一瞬登場する作品が『極北クレイマー』である。

舞台は北の大地に移り、僕の好きなキャラ2人が同時に登場し、お互いに絡んでくる『極北クレイマー』の続編は、当然僕の大いに期待したストーリーである。

世良が突如として極北市民病院に院長として乗り込んで来た時、僕には当然ながら疑問が幾つかあった。
 1)世良はいつ東城大学病院を去ったのか?
 2)真面目一辺倒の好青年だった世良の性格は、いつから変わったのか?
 3)その世良と結構いい仲になっていた花房看護師は、なぜ世良と別れたのか?

これらの疑問は、結局『ブレイズメス1990』と「極北」シリーズとの間を埋める作品が描かれないと解決が難しい。多分、東城大学病院を去るきっかけとなった出来事が、性格の変化や花房との別れにも繋がっているのだろう。

極北市民病院(世良)と極北救命救急センター(速水)が距離的に近いことを考えれば、両者の絡みは本作品でも当然期待される。そして、世良と別れた後、片腕として速水を支え、速水が東城大学病院を去る際もこれに同行した花房が、元カレが近くにいることを知ってどう思うのかを見るのも楽しみだった。僕は、自分と同年代と思われる花房師長のファンでもある。多分、著者本人も花房のファンではないかと思える。

本書の紹介には幾つかの切り口があるが、僕の場合はこれをラブストーリーと捉えた。味わい深い大人の恋の物語だ。花房師長は将軍速水の介助役として職務を全うし続けるのか、それとも―――。

これ以上は書けないな。あとは読んでお楽しみ下さい。

速水は「ジェネラル・ルージュ」の頃の方が大人っぽかった気がする。世良は東城大に在籍していた頃と比べたら世の中の酸いも甘いも経験した大人になった印象だが、第4部で神威島を訪ねて恩師と再会した時の彼だけは、普段は見せない弱さをさらけ出し、なんだそれまでが実は空元気だったんだとわかり、ちょっとがっかりした。なんで海堂作品にはこういう、普段はキザで「僕は何でも知っている、この世は僕のシナリオ通り動いている」的オーラを出しまくっている登場人物が多いのだろうか。昔の世良先生は良かった。虚勢を脱ぎ捨てて本音で生きることができるようになれば、昔実らなかった恋ももう一度やり直すチャンスが与えられるかもしれない。

ところで、本来なら「極北」シリーズの主人公であった筈の今中先生、なんだか影が薄いぞ。本書は4部構成だが、今中先生の目線から事の推移が描かれていたのは最初の2部だけで、第3部は速水、第4部は世良が主人公となったお話だった。目線が定まらないのは読者としては読みづらい。


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