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『少女は卒業しない』 [朝井リョウ]

少女は卒業しない

少女は卒業しない

  • 作者: 朝井 リョウ
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2012/03/05
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
今日、わたしはさよならする。図書室の先生と。退学してしまった幼馴染と。生徒会の先輩と。部内公認で付き合ってるアイツと。放課後の音楽室と。ただひとり心許せる友達と。そして、ずっと抱えてきたこの想いと―。廃校が決まった地方の高校、最後の卒業式。少女たちが迎える、7つの別れと旅立ちの物語。恋愛、友情、将来の夢、後悔、成長、希望―。青春のすべてを詰め込んだ、珠玉の連作短編集。
くどいようだが、朝井リョウ君は、世代は大きく違うけれど僕の高校の卒業生である。1980年代初頭に卒業している僕が過ごした「南舎」と呼ばれる校舎は2004年に建て替えられ、朝井君はその直後に入学している計算になるので、厳密に言えば過ごした母校のレイアウトは相当に違っている筈である。それでも、朝井君が作品で高校生活を扱えば、その文章の中に母校の思い出のかけらを探そうとしている自分に気づく。

朝井君の作品はこれですべて読んだことになる。『桐島、部活やめるってよ』も高校生を扱っていたが、この処女作と今回の最新作を比べてみると、同じ連作短編という手法は採用しながらも、以前は感じていた登場人物の会話の粗さが薄れ、ちょうどイイ感じになってきたような気がする。今どきの高校生や大学生がこういう会話を日常しているのだと言われてしまえば身も蓋もないが、それでも本にする以上は節度というものもあるだろう。最新作はすべての収録作品が女子高生の視点から描かれているからか、『桐島~』とはかなり違った印象を受けた。

すべて同じ高校が舞台で、しかも中心として描かれているのは卒業式前後の数日間、後は回想シーンとして出てくるだけだ。どの作品も印象的だが、この限られた時間の間に、同時並行でこれだけの人の思いが交錯しているというのは最初は驚きでもあった。

でも、振り返ってみたら、僕自身にも卒業式にかけた思いがあった。3年間ずっと好きだったクラスメートに、「好きでした」という言葉も言えずにいた僕の最後のチャンスが卒業式だったが、結局言う勇気を出せずに終わった。このためになんとなくダラっと終わってしまった印象だったのだろう。でも、卒業式に向けて様々な思いが交錯するというのはそうなのだろう。

どの短編もいいと思うが、評判が高いのは「エンドロールが始まる」だろう。図書室の司書を務める大卒5年目の先生に恋した女子高生が卒業の日の式当日にその長く秘めた思いを相手に伝える話である。この恋がかなうとは本人も思わなかっただろう。ただ伝えただけで、伝えられた方も淡々と聞いただけで終わっている。そういうのは卒業の日には多い話なのだろう。

個人的には、収録作品の幾つかに出てきた生徒会長の田所君の思いというのをもっと知りたかったと思う。確かに彼は1年上の先輩が好きで1年前の卒業式の日にその思いを伝えられずに涙を流したことになっているが、自分が卒業する日に逆に後輩から、しかも式の在校生送辞という公式の場で堂々と告白されて、彼はその後どう振舞ったのだろうか。収録作品はすべて女子高生の視点から描かれているので、田所君の思いを窺い知ることはできないが(笑)

若干ネタばらしになってしまうが、思いを伝えた結果として、次に繋がるという話は、収録作品の中にはあまりなかった気がする。付き合っていた2人が別れてしまう話はあれど、告白した結果が新たなカップル誕生とはなっていない。地方の高校を卒業すれば、ある生徒はそのまま町に残り、ある生徒は大都市へと出て大学に進学する。自分が思いを寄せる人が、自分と同じ方向に進もうとしている確率は、極めて低いのである。それが地方の高校なのだ。

朝井君の本はこれまでに5冊ほど出ているが、初めてという人に薦めるとしたら、この作品は結構いい線に行っていると思う。ちなみに、本作品を中1の娘に読んでみたらと薦めてみたが、数ページ読んで「文章が難しい」とギブアップした。こういう作品が読めるようになるには、まだ2、3年は必要か。中3の長男はこの夏、『桐島~』を借りて読もうとしている。そのうち感想を聞いてみたいと思う。

【8月13日追記】
12日に行なわれた小学校の同窓会で、わりと仲良かったクラスメートの女性から、彼女のお嬢さんのクラスメートが朝井リョウ君だと聞かされた。世の中は本当に狭い。まだ作品は読んでないと言っていたので、宣伝しておいた。


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