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『七十歳死亡法案、可決』 [読書日記]

七十歳死亡法案、可決

七十歳死亡法案、可決

  • 作者: 垣谷 美雨
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2012/01/27
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
2020年、高齢者が国民の3割を超え、社会保障費は過去最高を更新。破綻寸前の日本政府は「七十歳死亡法」を強行採決する。2年後に施行を控え、宝田東洋子(55)は「やっと自由になれる」と喜びを感じながらも、自らの人生の残り時間に焦燥感を隠せずにいた。我侭放題の義母(84)の介護に追われた15年間、懸命に家族に尽くしてきた。なのに妻任せの能天気な夫(58)、働かない引きこもりの息子(29)、実家に寄りつかない娘(30)とみな勝手ばかり。「家族なんてろくなもんじゃない」、東洋子の心に黒いさざ波が立ち始めて…。すぐそこに迫る現実を生々しく描く。注目作家、渾身の書き下ろし小説。
楡周平『プラチナタウン』に続き、超高齢社会の問題を取り上げた小説をご紹介する。想像もしなかった解決策だが、高齢者に流れる国の財政負担を強制的に削減するには有効な政策かもしれないと思う。東洋子さんのように夫の介護でヘトヘトに疲れている人には福音かもしれないし、能天気な夫のように、70歳までの残りの時間を考えたら、ストレスためて会社に行くのも馬鹿らしくなるのもわからぬではない。今週、地元の国際交流協会の定例部会に出席したが、司会者の制止を無視して自由奔放な発言を繰り返すシニアの委員の姿に、70で「死ね」とは言わないけれど、レッドカード一発退場ぐらいの措置は導入して欲しいなと感じることもあった。

突拍子もない法案だが、著者の発想の豊かさに感銘を受けた。思いもやらない解決策だったので、話の意外な展開が面白かった。こんな法案が成立するだけでこれだけ人の行動パターンが変化するのか、しかも、それは既に70歳を超えていて、法律が施行されるまでの「執行猶予」が2年弱しかない高齢者や、その介護に追われて、気がつけば親(往々にして義理の親ということもある)だけでなく、自分自身の残り時間がそれほど多くない50代、60代の人々、未だ35の折り返し地点にもさしかかっていない、しかしこのままいくと同居して親の脛をかじっていられる残り時間も10年少々しかないというアラサーティーの引きこもり、親の面倒を誰かに押し付けておきながら、その親が残り2年で亡くなるとなった途端、遺産相続を狙って動き出す兄弟、いろいろな人の思考と行動に影響を与える。こんな法案が可決されてしまうというのはほとんどジョークだが、こういう人の思考や行動に影響を与えるアナウンス効果は確かにあると思う。作品に登場する馬飼野首相というのは、そこまで読んでこんな法案を送稿したのだろうか。すごい政策だと思う。(いや、著者の発想がすごいのだ。)

東洋子さんの日常は、身につまされるものがある。義母の首を絞めたくなる気持ちもわかるし。この宝田家の話の展開はいろいろな前提条件に支えられているのも事実で、どこの家でもこんなにきれいなハッピーエンドにはならないだろう。そこはフィクションの世界だ。それぞれいろいろ問題は抱えていても、子供が2人いるというのは大きいし、うちの1人が高齢者居住世帯の住宅リフォームを手掛ける会社を経営する中学時代のクラスメートがいたというも、別の1人が結局会社勤めを辞めて介護福祉施設で働いていたというのも、ご都合主義的なところはあるかもしれない。そこもフィクションの世界、エンターテインメントなんだから赦そう。面白かったし。

ただ、子供が2人いるだけでこれだけ劇的な展開が期待できるという点で、我が家の3人の子供たちを今から巻き込んでおくことが重要なのだろうなと思った。我が家でもそうした意識の刷り込みには努力もしていきたいと思うが、高齢者や障害者の支援の意識付けや実際の作法のようなものは、小中学校の教育カリキュラムの中でも取り上げ、そういうのが当たり前なんだと考えて行動できるようにしていくことも必要なのではないだろうか。

その一方で、最近フェースブックの友人から、こんなコラムを紹介された。考えて見たら今回ご紹介している垣谷作品には、文字どおりの子供が一人も登場していない。郊外の一戸建て住宅というとこんなものかもしれないが、宝田家の娘と息子がいずれも子供云々を言える状況ではなかったことが、子供が一人も登場しない小説になっているのだと思う。ただ、なかなか結婚できない事情はいろいろあると思うが、子供に冷たい社会、子育てに冷たい社会であるとの指摘にも、僕らは耳を傾けなければならないと思う。

「ベビーカーで電車に乗るな」という傲慢さ!それなら他人が産んだ子に将来の年金や社会福祉の負担を押しつけるな
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/33659


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