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ジュガード・イノベーション [インド]

Jugaad Innovation: A Frugal and Flexible Approach to Innovation for the 21st Century

Jugaad Innovation: A Frugal and Flexible Approach to Innovation for the 21st Century

  • 作者: Navi Radjou, Jaideep Prabhu and Simone Ahuja
  • 出版社/メーカー: Random House, India
  • 発売日: 2012/06/01
  • メディア: ハードカバー
内容紹介
伝統的な組織の思考や行動のあり方に対して問題を投げかける1冊。フェースブックやフューチャー・グループ、GE、グーグル、ペプシコ、フィリップス、日産ルノー、シーメンス、スズロン、タタ・グループ、YES銀行といったリーディング企業は、既に「ジュガード(jugaad)」(小さな創意工夫)を実践し、独創性あるアイデアを創出して、企業の成長に繋げている。世界的規模での競争が激化し、研究開発予算が膨張を続ける中、本書では、どのようにイノベーションを起こすか、どのようにして融通性を確保するか、そしてどのようにして少ない投入でより大きな成果を挙げるかが述べられている。アフリカやインド、中国、ブラジルといった新興国のイノベーティブな企業家の事例をふんだんに盛り込んだ本書は、この複雑で資源が希少になりつつある世界をブレークスルーして成長をもたらす途を描いたものである。
今年8月下旬にインドを訪れた際、バンガロールの空港の書店で平積みになっていたので購入した。探していた本で、出張中に見つけたら買うつもりでいたのだ。11月下旬に行なわれた母校の大学院開設10周年記念行事の準備で、インドの農村開発について少し新ネタを仕入れておこうと考えて、この行事を目標に据えて直前2日ほどで集中的に読んだ。というか、インドの草の根イノベーションの事例だけ拾っておきたかったので、かなりの拾い読みだった。

「ジュガード(jugaad)」というヒンディー語は、このブログの過去記事の中で最もヒット数が多い『3 Idiots』(3人のおバカ)を書く際に初めて知った言葉である。その経緯からして、僕は「ジュガード」という言葉には、草の根レベルの日常の小さな問題を解決するための創意工夫というイメージなのだと勝手に考えていた。インドの農村にそんな創造性豊かな農民発明家が大勢いるというのには憧れる。外部からどんな援助をすればいいかではなく、地元で手に入る材料を用いれば生活をちょっとだけ良くすることができるという、内発性に富んだ発想だ。そうした草の根の発明の中には、うまくいけは村の問題どころか、地域や国全体の問題解決にも大きく貢献できるものもあるかもしれない。

Mitti-Cool-Refrigerator.jpgその1つの例が、粘土製の簡易冷蔵庫『ミッティクール(Mitticool)』だ。グジャラート州のテラコッタ職人が考案したこの冷蔵庫は、上部に水を入れるとその水が粘土に浸透し、その気化熱で中の食材を冷やす。原理などは簡単だ。水の入ったペットボトルを濡れタオルで巻いておくと中の水がひんやりするという発想は、インドの庶民だったら誰でも知っている。その原理を冷蔵庫に生かしたこの製品は大ヒットした。電気を使わない冷蔵庫だ。しかも材料の粘土はそこらじゅうにある。このテラコッタ職人はミッティクールがヒットしたことで、さまざまなタイプの冷蔵庫を製作・販売し始めた。今やインドでも有名なサクセスストーリーの1つである。

しかし、実用化量産化に向けては幾つかのハードルをクリアしていかなければならない。研究開発にはお金もかかるし、量産化するための設備投資にも外部資金を取り入れる必要がある。原理が簡単なだけに、意匠登録をしておかないと、類似の製品がすぐに出回る。大企業が目をつけて即量産すれば、草の根企業家はたちうちできない。

「ジュガード」の付いたタイトルを見て、僕はそんなストーリーを想像し、本を即購入したわけだ。ミッティクールのケースは、本書の第1章の冒頭で出てくる。「ジュガード=草の根発明」というイメージは、あながち的外れではない。

でも、読み進めると徐々に違和感が増してくる。草の根レベルの起業家の話よりも、大企業が現場に近いところに権限移譲して、そこで研究開発を主導させるという事例が幾つも出てくるのである。巨大組織で「現場主義」が強調されるのはそれはそれで意義あることだと思うが、もしそうして「新たな発想は現場レベルで」というのが本書のメッセージだったとしたら、僕の期待感とはちょっとズレがあったかもしれない。但し、もしインドでのBOP(Bottom of the Pyramid)層対象としたビジネスを考えておられる日本企業の方々にとっては、本書はちょっと参考になるところがあるかもしれない。

本書でインドを取り上げている事例を幾つか列挙してみたい。

-Colgate Palmolive(歯磨き粉メーカー)の販売網(ヤクルトレディのようなアプローチを取っている)

-Godrej社のChotuKool(簡易冷蔵庫)

-Harrish Handeの創設したSELCO(Solar Electric Light Company)
 (カルナタカ州の簡易ソーラーランタン開発。創始者は、2007年の草の根企業家大賞受賞)

-SAP Labs India社の大学生向けSNSサービスAppHaus、Chaitra

-Dr. Sathya Jeganathan(Chengalpattu Government Medical College)の開発したローコスト保育器

-NOKIA 1100シリーズ

-Aakashタブレット端末

-YES BANK(マイクロファイナンス金融機関の融資債権の小口証券化)

-ロイター社(RML)のSMSによる農業情報サービス

-チェンナイのプリペイド式マルチサービス

-BigBazaar(インド版ウォルマート)

-Jain Irrigation Systems Ltd.の小規模灌漑システム

-GE Healthcare社の簡易心電図検査システムMACシリーズ

改めて見直してみると、やっぱり大手企業のイノベーションマネジメントのお話が多いような印象だ。内発性の観点から惹かれる事例は、SELCOぐらいしかない。なにしろ、最も印象的なストーリーは第1章概説の冒頭で出てくるミッティクールのお話だったくらいで、本書については第1章を読めば事足りるような気がしてしまった。

本書に付随して、ジュガード・イノベーションのホームページが開設されている。本書で取り上げられた企業の最新情報が随時掲載されていて、参考になるところもあると思う。
http://jugaadinnovation.com/

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