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『幸せの条件』 [誉田哲也]

幸せの条件

幸せの条件

  • 作者: 誉田 哲也
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2012/08/24
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
新燃料・バイオエタノール用にコメを作れる農家を探してこい!突然の社長命令を受け、片山製作所・伝票整理担当の梢恵は、縁もゆかりもない長野の農村へ。ところが行く先々で「コメは食うために作るもんだ。燃やすために作れるか」と門前払い。さらには農業法人「あぐもぐ」の社長・安岡に、「まずは体で一から農業を知れ」と一喝され、これまで興味も知識も皆無だった農業に取り組むことに。そこで初めて農家が抱える現実を思い知るが…。彼氏にも、会社にも見放された24歳女子。果たして、日本の未来を救う、新しいエネルギーは獲得できるのか?農業、震災、そしてエネルギー問題に挑む感動の物語。
誉田作品って、ホント両極端だと思う。『武士道』シリーズのようなとっつきやすい作品もはれば、『ジウ』シリーズのようなハードボイルド系の作品群もその一方で存在する。誉田作品を沢山読んでいるわけではないが、それでも引きだしの多さには感心する。

今回は、福島のお米でもバイオエタノール用だったら生産できるのではないかというのが著者のメッセージだったのかと思う。コメ作りを含めた農業経営のこと、そして売れる農作物作りのキモ、そういうものをしっかり理解した上でないと、なかなか書けない。単に休耕田でバイオエタノール用のコメを作ればいいというものではなく、精製されたバイオエタノールが、消費者が購入できるような価格で売れなければいけない。それには精製にかかるコストを抑えるための企業努力に加え、原料米の調達コストも抑えなければならない。そんな安いコメが簡単に作れるのかという問題が農村には突きつけられる。そういうことを踏まえて、物語は描かれなければならない。

ただ、僕が読み急ぎ過ぎたからかもしれないが、農業法人であることの意義があまり読みとれなかったのが残念でもある。日本に限らず、若者の流出によって生産能力が低下した農村の復興には、経営マインドを持った人が農業生産を行なう企業を興すことが1つの可能性なんだと思っている。そういう農業法人の姿を描いた小説もチラホラと出て来ている気もするのだが、どうやったら採算がとれるのかという点について、どう受け止めたらいいのかわからない戸惑いが本書にはあった。農業だけなら冬場の農閑期は収入減がなくて他所で働いているという点は大きな気付きではあったが、そこで仕事が見つかるかどうかは、農業法人を立ちあげる人が元々地元出身者であることが大きいというメッセージは、外部者にはちょっとつらさも感じた。

話が農業法人のことばかりに集中したので主人公の梢恵に話を移すが、このヘタレ主人公にはあまり感情移入できなかった。成長は認めるけれど、わずか1年だけ農業法人で見習いを務めただけで、派遣元の社長の宿題をクリアできるというのは虫が良過ぎる話であるような気がする。土壌改良詐欺で農地に埋められた産業廃棄物がわずか数週間で全部片付くというのもどうかなぁ。

読後感はいいんだけれど、モヤモヤしたところは残った。



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