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『ファミレス』 [重松清]

ファミレス

ファミレス

  • 作者: 重松 清
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
  • 発売日: 2013/07/23
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
妻と別居中の雑誌編集長・一博と、息子がいる妻と再婚した惣菜屋の康文は幼なじみ。料理を通して友人となった中学教師の陽平は子ども2人が家を巣立ち“新婚”に。3・11から1年後のGWを控え、ともに50歳前後で、まさに人生の折り返し地点を迎えたオヤジ3人組を待っていた運命とは?夫婦、親子、友人…人と人とのつながりを、メシをつくって食べることを通して、コメディータッチで描き出した最新長篇。
今月上旬、『みんなのうた』を読んで、「重松作品はそろそろ潮時か」なんて感想をこのブログでも書いていたにも関わらず、性懲りもなくまたシゲマツに手を出してしまった。図書館で予約していてようやく順番が回ってきたということなので、お許しいただければと…。

この作品は、日経新聞夕刊でずっと連載していたものだ。重松ファンだと言いながら、僕はこの新聞でのこま切れ連載小説を読むのが大の苦手で、この作品も一度は挑戦してはみたものの、1話を読んだだけでは登場人物が誰なのかがわからず、感情移入も全くできずに挫折してしまった経緯がある。新聞の連載小説は第一話から読み続けないといけないものなのだ。

それが6回X51週続くのだから、その分量たるや大したもので、上下二段組みにしても400頁近くあってとにかく長い。僕はこう見えても忙しい身分なので、読み終えるのに4日もかかってしまった。ただ、新聞の連載だから一応お話自体もある程度はこま切れになっており、読書を中断して栞を挟みやすい、それでいて読書再開してもそこまでの展開を忘れていて読み始めに難儀するということはない。

ただ、1年間の連載を想定していたからか登場人物が多く、固有名詞付きで登場する人がざっと数えただけで20人を超えるので、ごちゃつき感は相当にある。いつも正論ばかりを述べる堅物からヘタレまで、食材選びから手間ひまかけておいしい料理をこしらえる人から柿の種やベビースターラーメンを利用して小手先だけどでもおいしいという料理を作る「プロ」まで、そして、単に空腹を満たすだけならコンビニ、ファミレスで十分という若者から、食事は一緒に食べる人がいてお腹だけでなく心も満たしてくれると考える人もいる。いろいろな座標軸を定めて登場人物をそこに置いてみると、極端から極端へと登場人物が大きく分散しており、考え方や行動の仕方が多様であることでストーリーにいい味を出しているような気がしないでもない。

重松作品には珍しく、「食」をテーマにしている。登場する料理の数の多さは驚きで、分量はともかくとしてこういう食材をこう組み合わせたら結構おいしいという意外性のあるレシピがいっぱい載っていて、読んでいて食べてみたくなる。この本をもう少しちゃんと吟味して、中のレシピを実際に試して男の小手先料理を作ってみたくもなるだろう。特に、「卵かけごはん」に関するレシピの豊富さ、おいしい卵かけごはんにするための薀蓄には感銘を受けた。

そしてもう1つのテーマはやはり「家族」ということになる。登場人物は沢山いるものの、主人公はアラフィフティの男―――ミドル向け有名雑誌の敏腕編集長、惣菜を出張販売する料理人、中学校の国語教師の三人組で、編集長は子供なしで妻と長く別居中、料理人はバツイチで17歳も若い、幼子を連れた女性と再婚、国語教師は2人の子供が家を巣立ち、妻と2人きりの、でも会話に乏しい生活を送っている。これに、それぞれわけありの親子関係がいくつか絡んでくる。

ストーリーの長い展開の上で、中心となっているのはアラフィフの敏腕編集長と国語教師の夫婦関係の行方ということができるだろう。親元を巣立って独立した家計を営むようになってから、日本人の平均寿命である80歳ぐらいまでを考えた場合、50歳というのはちょうど折り返し地点にさしかかることになる。大学を出て就職し、やがて結婚して子どもができ、その子どもが親の元を巣立っていくのがちょうど50歳前後となる。子どもの面倒を見ずに済むようになり、逆に後期高齢期を迎えた自分の親の方の面倒を見ることが気にかかるようになる年齢、その境界が50歳前後ということになる。結婚した時期とか、子どもが成長して独立する時期とかによってこの年齢には多少のバラつきはあるが、夫婦関係には転機が必ず訪れるのだ。

この作品は、転機を迎えた夫婦の各々が、これからの30年をどう過ごそうとするのかも描いている。僕たち40代から50代の男性読者には身につまされる話だ。

だから、読後感は複雑だ。単純に読むなら、本書で登場する料理のレシピをマーカーでチェックし、1人でも食っていけるような簡単レシピのガイドブックとして手元に置いておくとよいとは思うのだが、説教じみたセリフが鼻につくし、居候生活を送っていながらエリカ先生親子の不遜な言動には虫唾が走るし、アラフィフ男三人組の友情なんてクサいし、ちょっと付いていけないなと思ってしまったのもまた事実なのだ。シゲマツさん、自分が作品を通じて何を伝えたいのかを読者に考えさせるところまでにとどめておけばいいものを、登場人物のセリフとしてしゃべらせてしまうのはちょっと行き過ぎじゃないでしょうか。

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