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『ものづくり革命』 [仕事の小ネタ]

ものづくり革命  パーソナル・ファブリケーションの夜明け

ものづくり革命 パーソナル・ファブリケーションの夜明け

  • 作者: ニール・ガーシェンフェルド
  • 出版社/メーカー: ソフトバンククリエイティブ
  • 発売日: 2006/02/11
  • メディア: 単行本
出版社からのコメント
本書では、やがてくる「(ほぼ)あらゆるものを自分でつくれる時代」への幕開け的取り組みについて、MITビット・アンド・アトムズセンター所長のニール・ガーシェンフェルド氏が語ります。氏の言う究極の未来である、自己増殖する機械(自分で自分の種を再生産できる生物のような機械)といったSFのような話もまじえ、すでにMITからはじまっているパーソナル・ファブリケーション(個人的なものづくり)の動きを、多くの実践事例に触れながら紹介します。過去、人類はまさに「欲しいものは自分でつくって」いました。現代は分業化が進み、誰もが歯車の一部のようになって、大量生産されたものを使うことを余儀なくされています。ガーシェンフェルド氏は、より高度な技術を使って、「ものづくりの回帰」を模索しています。人によって、「もの」の理想的な形はさまざまのはず。「欲しい形」を自分で設計し自分で制作できたら、、、そんな夢のような話が、すでに世界各地で実践されているのです。「ものづくり」に携わる人のみならず、すべての人に読んでいただきたい先端事例解説書です。
昔、マサチューセッツ工科大学(MIT)のメディアラボが、先進国と途上国の間で広がる情報格差(デジタルディバイド)対策として「100ドルラップトップ」を開発し、これを途上国の農村部で学校に通う子供たちに配布して、コンピュータの操作に習熟し、コンピュータを使った遠隔教育やEラーニングで教育の普及にも役立てようと考えたことがあった。僕はこの100ドルラップトップ計画について、このブログでも一度だけ記事を書いており、その時は、埃っぽい途上国の農村の環境で、こんな機器がちゃんと動くのかどうか、そもそもラップトップなど見たこともない途上国の農村で、子供たちは変な使い方をしないだろうか、といった懸念を述べたと記憶している。ただ、天下のMITの研究者が僕レベルでもわかるようなことについて考慮していないとは思えず、ひょっとしたら革命的な凄いことが起きるのではないかとも考えていた。

さて、数年が経過し、その100ドルラップトップはどうなっただろうか…。実は、やっぱり結果は芳しくなかったらしい。理由は壊れたパーツの調達が現地でできなかったからだという。マウスやキーボード、それに、タッチパネルをもし使っていたのだとしたら、タッチペンやディスプレイも、紛失したり劣化したりする事態が当然起きるけれども、そうしたスペアパーツのニーズに、100ドルラップトップは答えられなかったのだという。

つまり、ここから得られた教訓は、デジタルディバイド対策の問題は、ハイテクよりもローテク、ラップトップの演算装置のような中枢部分よりも、ラップトップを構成するパーツの製造・供給体制が現地で作れないことにボトルネックがあったのだということだ。

では、途上国の農村のような環境下で、必要なものを現地で入手できる材料を用いてササッと作るにはどうしたらいいか―――本書の著者・ガーシェンフェルド教授はそうした問題意識に立ち、MITでほぼあらゆるものを作る講座を開講し、世界中でそれに類する取組みをすでに始めている人々を探して回った。

 先進国と発展途上国の間にはコンピュータへのアクセスに関する「デジタルデバイド(情報技術格差)」が存在すると言われているが、こうした数々の実例は、ものづくりや計測を目的とするツールへのアクセスに関するデバイドのほうがそれより深刻であることを物語っている。そもそもデスクのないところではデスクトップコンピュータなど何の役にも立たない。援助機関がパソコンを収納するために作った部屋にパソコンだけがポツンと置かれていることはよくある。コンピュータの能力をうまく活用するには、ビットから構成される仮想世界だけでなく、原子から構成される物質を作り、測定し、加工する手段が必要なのだ。ファブラボは、ITの代わりに、ITを開発するツールを一般大衆に広めることが可能なことを証明している。それを利用すれば、地域固有の問題を解決するための地域固有のテクノロジーソリューションを開発し、構築することができる。
 私たちは長い間、世界の国食いの発展にテクノロジーが果たす役割は、ローテクからハイテクへとテクノロジーの進化の歴史を反映しているという先入観を抱いていた。ファブラボでの経験が教えてくれたのは、それと逆で、発展から取り残されている地域ほど最先端のテクノロジーを必要としていることだ。(中略)ファブラボは、この種の機関(註:国際援助機関)の基盤をなしている想定に次のような疑問を投げかける。巨額の資金を投じてコンピュータを世界中の国々に送る代わりに、コンピュータを作る手段を送った方がよいのではないか。確立された知識としての科学に関心を持つように子供たちに働きかける代わりに、科学を「実践する」ための装置を子供たちに持たせて、知識と同時に知識を発見するための道具を与えた方がよいのではないか。最先端テクノロジーを利用すれば、より性能の高い爆弾をつくる代わりに、よりよいコミュニティを築けるのではないか。(pp.25-26)
ここで盛んに「ファブラボ」という言葉が出てくるが、これは、最先端の小型工作機械を備えた工房のことを指す。これを途上国に開設し、そこで世界中のアイデアにネットでアクセスできる機能を設けて、問題解決に向けて世界中から知見を集め、それを工房で形にしていくことを可能にしようという試みである。残念ながらアジアでの取組みは少なく、インドと日本でわずかに試みられているだけである。

それが「工場」というよりも「工房」という規模感であるのは、そもそもこうしたローカルな問題の解決のための手段は、大量生産・大量消費という考え方と相容れないからである。
 インクジェットプリンタと同様に、これまでに説明したパーソナルファブリケーションのツールは、大量生産ではなく、個人の用途を前提としている。もともとこの種の機会が開発されたのは、本格的な生産が始まってからでは修正に莫大な時間がかかる設計ミスを早期に発見するために、試作品を迅速に製作する必要があったからだ。こうした試作品製作用の機会は、工作機械の展示会では、工作機械の主流である巨大な切削機械、プレス加工機、成型機などから遠く離れた活気のない展示コーナーに追いやられている。しかし、たった1人しかいない市場であれば、試作品がすなわち製品になる。(中略)ナットやボルトは、それぞれがユニークだからではなく、すべて同じだから価値がある。しかし、小型の工作機械は、ファブ講座やファブラボで作られるような、違いがものを言う製品を注文に応じて作る用途に使われるだろう。
 パーソナルファブリケーションを実現する上で最大の障害は、技術的なものではない。技術的にはほとんど実現段階にある。問題は研修でもない。MITと同様に、どこの現場でも、仲間が教えあうジャストインタイム方式がうまく機能する。最大の障害は何かといえば、パーソナルファブリケーションが可能であるという知識の欠如だ。本書を書いた理由はそこにある。(pp.28-29)
こうした認識に立ち、本書では、パーソナルファブリケーションの先駆的な利用者と、彼らが使用しているツールの両方を紹介し、また利用者が作り出した新たな製品と、その製品を実現させたプロセスについての紹介も行なっている。

こういう話になると登場する頻度が高いのがインドである。本書で取り上げられているインドの事例としては、プネ近郊でS.S.カルバグが開いた「ビギャンアシュラム(Vigyan Ashram)」という科学学校、スガタ・ミトラがデリーのスラムで始めた「壁の穴」プロジェクト(これは2000年頃には既に相当有名だった)、アニル・グプタが提唱して始まった草の根発明家の特許申請・保護の取組みである「ミツバチネットワーク(Honey Bee Network)」等が挙げられる。インドに駐在していた頃、その気があったら訪問できたところばかりなのだが、そうしたかった自分が返す返すも悔しい。

技術的なことは本書を読んでもわかったようなわからないようなところがあるが、骨太のメッセージは、既存の援助の考え方、あり方に相当大きな一石を投じることになるような爆発力を秘めているのではないかと覆う。

例えば、こんなものができるのなら、国際的な剣道の普及にあたっての最大のボトルネックの1つである竹刀・木刀類、剣道具のクイックな調達も、それだったら工房で竹や木材を加工して現地調達ができてしまう状況にはなってくるのではないかとも思える。そうすれば、剣道をやりたいとするインド人がさらに増えてきそうな気もするが…。

相当大きなパラダイムのシフトにつながる可能性を秘めているお話だと思う。

ところで、このパーソナルファブリケーションを啓蒙するこの本は、それから6年後、別の版元からほぼ同じ内容で再出版されている。読みかけたが、どうも内容がほとんど変わらないようで、図書館で借りたものの、結局パラパラとページをめくった後は、読まずに返却してしまった。

Fab ―パーソナルコンピュータからパーソナルファブリケーションへ (Make: Japan Books)

Fab ―パーソナルコンピュータからパーソナルファブリケーションへ (Make: Japan Books)

  • 作者: Neil Gershenfeld
  • 出版社/メーカー: オライリージャパン
  • 発売日: 2012/12/01
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

内容(「BOOK」データベースより)
ものづくりのデジタル化とパーソナルファブケーションの時代を予見した名著(『ものづくり革命』)、待望の復刊。インド、マンハッタン、ノルウェー、ガーナなど世界各地の先駆的な利用者の事例と、そこで使われるツールの両面からパーソナルファブリケーションを解説。

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