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『ひとごと』 [森浩美]

ひとごと (単行本)

ひとごと (単行本)

  • 作者: 森 浩美
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2014/02/26
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
交通事故で幼い息子を失い、自分を責め続ける妻。ともに悲しみを乗り越えなければならないはずの夫との間には、次第に亀裂が入っていった。一周忌の法要が終わり、夫は躊躇いながらも、妻に意外な話を切り出すが…。(第一話「桜ひらひら」)。幼い息子を虐待して殺した母親を逮捕―残酷な事件のニュースが、人々の心に起こした波紋…。8組の家族の人生の転換期を、鮮やかな手法で描いた感動の連作集。

各短編において言行が極端な男や女が登場することや、毎回親による幼児虐待、子供による親への暴力などの事件がテレビで報道されているシーンが登場するというところに共通性がある短編集。『ひとごと』と名付けられたのは、幼児虐待のような残酷な事件をテレビやラジオで流すマスコミの報道を聞きながら、登場人物が感想を述べるシーンが毎回挿入されているからだろう。そういうのを見ながら、「ひどいわねぇ、まったく世の中どうなっているんだか…」なんてひとごとのようなコメントをしながら、実のところはそこまでひどくなくてもそれに近いことが身の回りでは起きているのだという現実に引き戻されるのである。ひとごととは思えない身近なところで、極端なダメ男やダメ女がいて、主人公は虐待に近いような不当な扱いを受けていたりするのである。森作品は程度の差はあれ関係がうまくいっていない親子や夫婦が登場することが多いが、ここまで極端なキャストが登場する作品はちょっと珍しいかもしれない。

ただ、急いで読んだからかもしれないが、どれも終わり方が唐突で、そこに至る主人公の心の変化が端折られているような印象を受けてしまった。言行が極端な登場人物にはあまり変化の兆しも見えず、今の世の中、こういう奴が身近にもいる中で、なんとかやっていこうと自分に折り合いをつけて無理矢理シャンシャンと終わらせている感じだった。あまり劇的な終わり方ではないし、どうしてそうやって終わらせるのか、読者に想像の余地を与えすぎの感もある。会話があまりないため、登場人物にどいう心の変化が起きたのかがよくわからなかった。あまり心に響かなかったなぁ。

これは読んだタイミングの問題も多分にあるような気がする。第一に、僕はこのところ市川拓司や中田永一といった恋愛小説の正統派ともいえる作品を続けざまに読んできた。このブログの少し前の記事をご覧いただければわかると思うが、仕事が忙しかったこともあって、オフの時間は脳をリフレッシュさせるため(現実逃避でもあるが)、あえてそういう小説ばかりを読んできた。いわばこれからちょっとばかりの楽しそうな未来の展開を予感させる終わり方の作品が多かった。それに対して森浩美の得意なのは、平穏な生活からいったんはダウンサイドに落ち込んだ登場人物がそこから少しばかり再起する、あるいは元の平穏な生活の水準になんとか気持ち的には復活できそうだという作品が多い。予見できる未来も、前の2人の作家のようなかなり末広がりに近い明るさとは違い、今よりちょっと先の、ちょっとだけ今よりもいい心境みたいなところを狙っている。超短期指向なのである。

第二に、いわゆる「限界効用逓減の法則」ってやつ。森作品も沢山読んできたが、多く読むにつれて何となく展開が読めてしまい、味わえる感動も少なくなってきたような気がする。重松清を読み過ぎて森浩美を読んで刺激になった昔のように、今は森作品を読み過ぎて、新作への感動が薄れ、むしろ他の作家の作品を読んで得られる刺激の方が強くなったりするのである。

森浩美さんはそもそも僕らと同じ世代の人なので、自ずと登場する人々も僕らと同世代の男性または女性が主人公というケースが圧倒的に多いわけだが、もしこういう人が中高生を主人公にした作品を描いたらどんなふうになるのか、ちょっと期待してしまうところもあるのである。以前『夏を拾いに』で小学生を扱ったケースがあるが、あれと同じでもいいので、大人が中学高校時代の自分たちの生活を改装する形で作品を描いてみて欲しいなと期待もする。

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