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寸評:今週読んだ本(2014年8月中旬②) [池井戸潤]

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《前が見えなくなるほどのどしゃ降りです》

報道されている通り、このお盆の数日、近畿、東海地方を中心に集中豪雨に襲われ、避難を余儀なくされた住民の方々、命を落とされた方々が大勢いらっしゃった。同じ岐阜県でも被害が大きかった飛騨・高山の方とは比較にならないけれど、僕がお盆休みを過ごした西濃地方でも、14日から17日までの間、ろくに晴れ間が顔をのぞかせたことすらなかった。雨が降らない時間が1時間でも続くことはまれで、当然ながらジョギングにも行けず、アウトドア系のアトラクションの多い故郷では、雨の中外出しても行けるところは限られてしまう。

僕自身もストレスをためたが、それ以上にストレスをためていたのがうちの妻。連れてきている子供たちはテレビゲームをやるか漫画を読むか、あるいは単にテレビ番組を見てゲラゲラ笑っているだけでも楽しかったのかもしれないが、そういう、持ってきた宿題すらやらずにダレた毎日を過ごしている子供達を見て、妻はストレスをため、さらには僕がまた子供同様に腰が重かったために、そのストレスに油を注いでしまった。

折角のリフレッシュの機会がこうしてストレス増幅の機会になってしまうのはたまらない。妻も読書を趣味として、雨の日はおとなしく屋内で書物を読むというので満足してくれたら嬉しいのだけれど、その部分については残念ながら共有できない。僕の読書量も、肝心の妻には全く評価されていないのは残念だ。(・・・などとブログで愚痴を書いても、僕のブログなどチェックもしていないだろうから問題にならないだろう。)

そんなわけで、読了した本の感想を共有するのは、もっぱらこのブログの読者ということでご理解下さい。

さて、前回書いた通り、このお盆休みの里帰りに持ち帰った本の多くは仕事の関連の文献だったわけだが、寝る前ぐらいは息抜きがあってもいいかと思い、2冊小説を持ってきた。いずれも池井戸潤作品の文庫版で、枕元に置いて読むにはちょうどいいサイズ。個別に紹介してもいいところだったが、このところ平日にブログの記事をアップするのは容易ではないので、いっそのこと休暇中にまとめて掲載するようにしようかと考えた。

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かばん屋の相続 (文春文庫)

かばん屋の相続 (文春文庫)

  • 作者: 池井戸 潤
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2011/04/08
  • メディア: 文庫
内容(「BOOK」データベースより)
池上信用金庫に勤める小倉太郎。その取引先「松田かばん」の社長が急逝した。残された二人の兄弟。会社を手伝っていた次男に生前、「相続を放棄しろ」と語り、遺言には会社の株全てを大手銀行に勤めていた長男に譲ると書かれていた。乗り込んできた長男と対峙する小倉太郎。父の想いはどこに?表題作他五編収録。

こちらは収録作品5編からなる短編集である。表題もその中のひとつをそのまま持ってきている。短編集のタイトルをそうした形で示すのは一般的に行われている手法だとわかってはいるが、実は僕はこのタイトルのせいで読むのを後回しにしていた。中小企業の相続問題をタイトルにするというのは小説としては小物感が否めない。但し、だったら収録作品5編に共通するキーワードって何なのかと問われると、ちょっと思いつかないのが悩ましい。

いずれにしても、タイトルがもったいない。中身はかなり秀逸な作品揃いだと思う。いずれの作品もハッピーエンドではなく、後味の悪さを残してのエンディングになっている。カネを巡る人間の誠実さと醜さがあぶり出される。毎月の返済日に繰り広げられる借り手の金策と不渡りになる事態を気にしながら刻一刻と迫るタイムリミットを見守る担当行員、早く勘定を締めたい他部署の行員のイライラ―――僕も銀行の支店に勤めた経験があるから非常によくわかる。ギリギリセーフで決済できるケースにしても、できなかったケースにしても、そこには極めて泥臭い人間ドラマがあるのだ。相続なんかも同様だ。

そして、最も切ないのは「妻の元カレ」だろう。毎日残業や接待で帰りが遅い銀行員の夫を、社宅で待ち続ける妻の心境を、嫌でも痛感させられる。2年か3年に1回は転勤がある銀行員の場合、社宅での人間関係を妻が構築するのは意外と難しい。僕が勤めていたのは地方の銀行だったが、東京勤務の機会が与えられて住んでいた寮に隣接して建てられていた社宅で、当時の僕の上司が当時の奥様から「鬼!」と罵声を浴びせられているのを、僕は外を歩いていて聞いてしまった。離婚という事態に至るケースも少なからずあった。借りたいと思ってもいない顧客に金を借りさせ、資金繰りが厳しくなってくると容赦なく貸し剥がす、銀行員の勝手な姿が池井戸作品にはよく描かれるが、銀行員の家族がどういう状況に置かれているのかについて思いを至らせる機会を与える作品というのも池井戸作品の中にあってもいいと思っていたので、この作品は収録短編の中でも特に印象に残る。

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ようこそ、わが家へ (小学館文庫)

ようこそ、わが家へ (小学館文庫)

  • 作者: 池井戸 潤
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2013/07/05
  • メディア: 文庫
内容(「BOOK」データベースより)
真面目なだけが取り柄の会社員・倉田太一は、ある夏の日、駅のホームで割り込み男を注意した。すると、その日から倉田家に対する嫌がらせが相次ぐようになる。花壇は踏み荒らされ、郵便ポストには瀕死のネコが投げ込まれた。さらに、車は傷つけられ、部屋からは盗聴器まで見つかった。執拗に続く攻撃から穏やかな日常を取り戻すべく、一家はストーカーとの対決を決意する。一方、出向先のナカノ電子部品でも、倉田は営業部長に不正の疑惑を抱いたことから窮地へと追い込まれていく。直木賞作家が“身近に潜む恐怖”を描く文庫オリジナル長編。

さて、銀行員の家族というのにスポットを当てた池井戸作品ということで、もう1つ紹介するのが『ようこそ、わが家へ』である。これは長編で、主人公の倉田は今は出向先の電子部品商社で管理職を務めているが、元々は大手銀行の行員で、可もなく不可もなくのパッとしない行員生活を送り、50前後になって出向を言い渡されている。こういうキャリアの行員が猛烈な残業をしていたかどうかは定かではないが(その時その時の勤務した支店の状況にもよると思うので)、少なくとも家庭生活は円満で、子供2人もいい感じで育っている。夏休みには毎年軽井沢に避暑に出かけるのが恒例行事となっているらしい。

誰かと衝突することもなく、無難に生きてきた倉田が、たまたま帰宅途中の駅で電車に割り込み乗車しようとした乗客に注意したのがきっかけで、話が急に動き始める。割り込み乗車はともかくとして、電車内でのトラブルの種は結構多い。ヘッドホンから響くシャカシャカ音とか、プレステや任天堂DS等でのゲームに夢中になり、両肘を周辺の乗客にぶつけても全く気にしていない乗客とか、優先席周辺でケータイ、スマホ等電子機器を平気で操作している乗客とか、あまり度が過ぎると注意するケースがないとはいえない。僕自身もシャカシャカ音については二度ほど隣の乗客に注意したことがあり、そういうのが逆恨みになり、自宅への嫌がらせにつながっていくというのは結構恐ろしさを感じるシチュエーションだ。

ただ、そういう逆恨みの嫌がらせに対して結束する家族を描いているというだけでなく、本作品は、家族の中にもブラックな部分が潜んでいることとか、こういうトラブルを通じて家庭以外の場での家族の人間関係のトラブルの火種があぶり出されるとか、そうした一種の毒がストーリーの中に紛れ込んでいる。職場の人間関係にしても同様で、部下が発見した非違の兆候を掘り下げていけばいくほど、それに関わっていた人の闇の部分が明らかになっていく。主人公・倉田のその後を見るにつけ、後味の悪さが多少残ることは否めないけれど、単なる勧善懲悪以上に奥の深さのある長編なので、お薦めもしたい作品だ。

銀行員の家族を取り上げた池井戸作品に触れて、まあ僕も残業ばっかりしないとやってられない部署は早く異動して、うだつが上がらなくてもほどほどのところで、家族や地域とも付き合えるような仕事の仕方をしたいものだと改めて感じたところです。

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