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『絹の国を創った人々』 [シルク・コットン]

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絹の国を創った人々―日本近代化の原点・富岡製糸場

  • 作者: 志村 和次郎
  • 出版社/メーカー: 上毛新聞社
  • 発売日: 2014/07
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
明治期、国を挙げての養蚕、製糸、絹織物の振興策が取られる。富岡製糸場の器械製糸をキーワードに、生糸、蚕種の輸出や養蚕技術の向上策など、日本版産業革命の推進力になった「絹の道への先駆け」ロマンとは!

富岡製糸場等の世界遺産登録に合わせて上毛新聞が組んでいた様々な特集ものの1つ。 地元の歴史研究家兼ジャーナリストが、群馬県や埼玉県北部の深谷周辺を出身とする幕末から明治期に活躍した偉人を取り上げて、近代日本の建設にどう貢献したのかを紹介している本である。(1人はフランスから招聘されて富岡製糸場の設計から創業にかけて貢献したポール・ブリュナであるが。) ジャーナリストの方が書かれたという割にはあまり読みやすい文章でもなく、誤植も目立つが、地元の人は一度読んでおかれるとよいであろう。地元への愛着が湧きそうだ。

世界遺産に認定された「富岡製糸場と絹産業遺産群」であるが、富岡はともかく、あとの3カ所については、それぞれの歴史的意義は説明がされているものの、シルク産業の発展という1つの歴史の中で、それがどこでどのように位置づけられているのかが各々の個別の説明だけでは全く理解できず、困ったことがある。本書が扱っている登場人物は大きくは6人だが、その郷土の偉人の伝記を描く中で、これら産業遺産群がそもそもどうやって作られていったのかが書かれており、その点からも理解はしやすかった。富岡製糸場が蚕糸業人材育成の拠点となっていた期間は意外と短く、その後は採算維持のためにいろいろ取組みが進められたが、それにコンパクトに触れている本として有用でもある。また、生糸の主要輸出先が欧州から米国に変化していった経緯が、本書を読んで初めてわかった気がする。

フィーチャーされている偉人の冒頭は渋沢栄一であるが、彼についての説明は多言を要しないだろう。明治政府の産業振興・工業化政策の一環として、器械製糸の導入を図るため、富岡製糸場の開設に踏み切った仕掛け人である。

渋沢に続いて紹介されている偉人は以下の通りだ。

楫取素彦(かとりもとひこ)
長州藩出身で、群馬県令(県知事が政府に任命されたようなもの?)に任命されて、シルク産業全体を行政面から支援。富岡製糸場が民間移管される際には、入札が不調に終わった時点で、存続のために官営を続けるよう、中央政府を説得し、閉鎖を免れた。

中居屋重兵衛
横浜開港とともに、輸出産業としての生糸に目を付け、生糸貿易を開始し、横浜の発展のきっかけを作った。

尾高惇忠
武州の渋沢栄一人脈の1人で、富岡製糸場の初代所長を務めた。

ポール・ブリュナ
官営製糸場を富岡に定め、器械製糸場の設備設計を手がけ、操業開始にあたってフランスから技師と工女をリクルートして、日本人の技師や工女への指導に当たらせた。富岡製糸場を設備整備面、人材育成面から支えた「雇われ外国人」。

速水堅曹
前橋藩時代に富岡に先んじて器械製糸を開始し、その経験が買われて、富岡製糸場の第三代、第五代所長を務め、官営製糸場の経営改善と民営化に貢献した。

原善三郎・富太郎
中居屋重兵衛の後を継ぐ形で、生糸貿易で財をなし、親子二代で横浜経済界に君臨した。富太郎の世代になるると富岡製糸場の経営を継承し、蚕種貯蔵施設の整備により、蚕の掃立時期を調整し、質の高い品種による大量糸繭生産を可能にした。

星野長太郎
明治後期から大正・昭和期にかけて、米国への生糸直接輸出の道を開き、民間による器械製糸業参入を可能にした。

荒井領一郎
星野長太郎の弟で、兄の意向に基づき生糸貿易のために英語と商学を学んだ後、米国に派遣され、生糸の直輸出を可能にした。後に路線の違いにより兄と袂を分かつが、米国でも有数の実業家として成功をおさめ、日米友好のために団体を設立。孫娘のハルは後に駐日大使になるエドウィン・ライシャワー氏と結婚、日米の懸け橋となった。

楫取素彦あたりの伝記を知っておくと、同じ長州人脈の吉田松陰とのつながりもあって、来年の大河ドラマ「花燃ゆ」が面白くなりそう。来年の大河の主役は吉田松陰の妹・文だが、文は元々は久坂玄瑞と結婚するが、久坂が自刃した後、楫取に嫁いでいた姉の寿子の早世に続いて楫取に嫁いでいる。従って、ドラマの後半の舞台が群馬になることが予想される。荒井は、兄・星野長太郎の指示により渡米する前、楫取県令を表敬に訪れ、その場で妻の寿子から、兄・松陰の形見の小刀を託され、これを持って海を渡っている。大河ドラマでは、そんな人物相関が、群馬を舞台としても繰り広げられそうだ。

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