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『楫取素彦と吉田松陰の妹・文』 [シルク・コットン]

楫取素彦と吉田松陰の妹・文 (新人物文庫)

楫取素彦と吉田松陰の妹・文 (新人物文庫)

  • 作者: 一坂 太郎
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/中経出版
  • 発売日: 2014/12/09
  • メディア: 文庫
内容紹介
2015年NHK大河ドラマ「花燃ゆ」の準主役、楫取素彦(小田村伊之助)のことが一番詳しくわかる決定版!!NHK大河ドラマ「花燃ゆ」のヒロイン・文の夫にして、吉田松陰の至誠を継いだ、知られざる偉人・楫取素彦(小田村伊之助)の人生に迫ります。天才で知られる吉田松陰の陰で、彼を生涯支え続け、松陰の死後もその志を継ぎました。幕末、長州藩主の側近として各地を飛び回り、坂本龍馬を桂小五郎に紹介して薩長同盟の端緒役となります。維新後は初代群馬県令として活躍し、富岡製糸場の危機を救い、のちに群馬の父と呼ばれました。こうした楫取の功績は驚くほど知られていません。本書は、楫取素彦と吉田松陰、その妹・文の生涯を丹念に描いた労作です。巻末には、坂本龍馬との出会いを語る楫取の回顧録「薩長連合の発端」と文(美和子)が、松陰がいた頃の杉家の話を語った「楫取美和子回顧録」を特別収録しており、必見です。

今年のNHK大河ドラマ『花燃ゆ』はご覧になっていますか? 僕は、去年の『軍師官兵衛』のように毎週かぶりつきで見るというようなことはないけれど、幕末の出来事を学ぶにはいいコンテンツだと思い、なるべく見るようにしている。井上真央さんがあまり好きじゃないというのもあるのだけど、まあそれは置いておく。むしろ、長年の大河ドラマフリークとしては、『花燃ゆ』というタイトルにも若干抵抗がある。『花神』、『草燃える』、『山河燃ゆ』、『炎立つ』等をガラポンしたらこんなん出ました的なタイトルだ。安易なネーミングだと最初から思っていた。

また、主人公をわざわざ吉田松陰の妹にしなくてもよかったんではないかという気もする。ドラマの視聴率が低迷しているので話題になっているが(僕はそんなに悪いドラマじゃないとも思うが)、夫・久坂玄瑞が蛤御門の変で自刃して長州藩が朝敵と見なされるというドラマのクライマックスが終わると、文が長州藩内外の情勢に絡むシーンが極端に減る筈なので、ドラマの脚本家としては相当頭が痛い時期を迎える。これからの方が視聴率確保が難しいんじゃないかと勝手に心配してしまうところもある。まさかと思うが、坂本龍馬とか西郷隆盛とか木戸孝允とか岩倉具視とかと文を絡ませるんだろうか。それじゃあ『利家とまつ』や『江』の二の舞だ。

なぜこんなことをグダグダ書くかといえば、松下村塾の関係者で吉田松陰と絡んでいた人で1年間という大河ドラマを持たせるとしたら、割と長生きした人――伊藤博文とか小田村伊之助とかを主人公に据えた方が、ドラマの脚本は書きやすかったんじゃないかと思うからだ。取り分け、小田村伊之助の最初の妻は松陰の妹・寿で、寿を亡くした後、松陰の母・滝の勧めもあって寿の妹である文と再婚している。「楫取素彦」に改名した小田村が、明治政府樹立後初代群馬県令になるまで結構な愛妻家だったらしいし、群馬県令を務めていた頃に寿を亡くし、喪が明けてすぐに文と再婚したのも、県令たる者が独り身でいるのも具合が悪かろうというぐらいの感じだったらしいから、楫取を中心に据える方が、多分人物としてもドラマとしても描きやすかったんじゃなかろうか。

このブログではあまり政治的なことは論じないよう心掛けているところではあるものの、この時期に長州舞台の大河ドラマというのは何か政治的意図でもあるのかと思いたくもなる。『八重の桜』を見てたら、会津にとっては長州は明らかに敵だったしね。『新撰組!』でもそうだったかと。ここいらで長州の名誉挽回と行きたいところではあったのかもしれないけれど、文を主軸に据えると舞台の殆どが長州藩内の話になるんじゃないかと気になる。これを楫取にしていれば、舞台が長崎に飛んだり静岡に飛んだり、そして当然ながら熊谷や群馬にも飛ぶことになる。潜在的なファンを広く開拓するには文よりも圧倒的に有利だったんじゃないか。

大河ドラマに関する愚痴ばかりになってしまったので、そろそろこの本の紹介もしておこう。

この本、タイトルの付け方がなっていないけれど、れっきとした楫取素彦の伝記になっている。しっかり史料を読み込んだ上で書かれているし、単なる大河ドラマ便乗で出された本でもない。だから、タイトルの付け方がおかしい。フェアに扱うなら、タイトルは文よりも姉の寿をちゃんと取り上げるべきだった。というか、吉田松陰の妹としては、文よりも寿の方が有名だったらしい。

楫取については、以前『絹の国を創った人々』をブログで紹介した際に少し言及した通り、初代群馬県令就任後、県庁所在地を前橋に定め、県のシルク産業全体を行政面から支援した人で、当時既に経営困難に陥っていた官営富岡製糸場の民間移管の際には、入札が不調に終わった時点で、存続のために官営を続けるよう中央政府を説得し、廃業を免れたという功績を残した人だ。(不採算の富岡製糸場の操業継続がなぜ功績といえるのかは一見わかりにくいが、ここでは説明は省略する。)それが楫取の伝記を読んでみたいと思ったきっかけだったので、強いて言えば群馬県令時代の楫取のことをもう少し詳しく書いて欲しかった気もする。但し、著者は山口県に残る史料を中心に調べてこれまでも幕末の長州藩出身の偉人の伝記をいろいろ書いてきた人なので、群馬県にまで守備範囲を広げるのが大変だったであろうことは想像に難くないし、本書の全体のボリュームを考えたらこういうバランスになるのは仕方ないところだろう。

本書を読むと、大沢たかおさんが演じる楫取の実直さがドラマでもよく表現されていると思った。とかく幕末の長州藩といったら吉田松陰のような過激な思想家もいたわけで、特に吉田とのコントラストが本書を読んでも印象的だ。地道に確実に成果をあげていく楫取が、窮地に陥っていた長州藩を薩長同盟に導き、やがて大政奉還へと導いている。明治新政府発足に至るまでの功労者で長州出身者のベスト3に木戸孝允とともに楫取が含まれていたらしいが、それでも旧長州藩主に乞われて新政府での参与職を早々に持して長州に戻るところも、その手腕が誰からも大いに評価されている証左といえるだろう。それが大久保利通に呼び出されて熊谷県令、さらに群馬県令就任を求められるのである。大久保利通も結構他人への評価が厳しくて多くの人から恨まれたりしていた人らしいから、その大久保も楫取を買っていたというのはちょっとした発見だった。

逆にドラマと実際とのギャップに驚かされたことも。特に、ドラマでは相思相愛として描かれていた久坂玄瑞と文の仲だが、結婚生活6年程度のうち、実際に一緒に暮らしたのは1年程度で、江戸や京都からたまに長州に帰国しても久坂はほとんど萩に立ち寄らず、文とも会ってなかったらしい。実際のところこの2人の間にはあまり愛情らしいものはなかったのかもしれないと本書でほのめかされると、ドラマの描き方って何なんだろうかと首を傾げてしまう。

それにしても、昔の日本って、一生涯の間に何度改名してるんだろうか。小田村伊之助にしても、楫取素彦になるまでに一度改名があり、その理由も述べられているが、改名ってそういう理由でおこなわれるのかとちょっと驚いた。それ以上に驚いたのは、女性も結構頻繁に名前を変えていることがわかったことかな。文にしても、そのうち美和になり美和子になるし、姉も寿も幾つか呼称があったらしい。

改めて、楫取と寿を主軸にして大河ドラマを描いてれば良かったのにと思う。楫取は寿が亡くなった時は相当落ち込み、寿の着物の匂いを嗅いでいたらしい。そんな愛妻家の方が大河ドラマには合っていると思うのだが。

ちなみに、今日7月9日は我が家も結婚記念日、しかも今日は結婚20周年です。
性格のよくない旦那によく付き合ってくれた妻には感謝してもしきれません。

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