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『民主化するイノベーションの時代』 [仕事の小ネタ]

民主化するイノベーションの時代

民主化するイノベーションの時代

  • 作者: エリック・フォン・ヒッペル
  • 出版社/メーカー: ファーストプレス
  • 発売日: 2005/12/09
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
イノベーションにはユーザーの知恵が組み込まれている! 3M、ネスレ、ゼロックスが採用する実践的技法「リード・ユーザー法」を紹介。ユーザー中心のイノベーションの重要性はますます高まっており、それはわれわれに重大な新しい機会と挑戦を突きつけている。多くの産業や企業は、それに適応していくための長期的ビジネスモデルへと根本的な変革を行わなければならない。
この本の読了はおよそ1カ月前の7月22日である。重要な会議に間に合わせるために飛ばし読みをしたので、ブログで紹介記事を書けるほど内容の吟味ができておらず、それが遅くなってしまった大きな原因である。今回紹介するにあたって、概論部分と各章の冒頭及び結論部分だけを改めて読み直してみた。二度読んだことで改めて理解が深まったところもあるし、感じ方が前回と同じだったところもある。

ここで言っている「重要な会議」では、オープン・イノベーションの議論を進めるに当たって、米国のシンクタンクから参加された方が案の定知的財産保護の問題を持ち出した。本書でいえばちょうど第6章「ユーザーは、なぜイノベーションを「無料公開」するのか」で論じられている箇所だが、このチャプターの標題が語る通り、各ユーザーが別々にイノベーションを起こしているような社会では、往々にしてユーザーは自らの成果を無料で公開している実態が指摘されている。その情報に関する知的財産権の一切がイノベータ―自身によって自発的に放棄され、関心のある者は誰でもそれにアクセスできるということだ。著者によれば、そうした情報は公共財になるのだという。

ここから連想されるのは、最近度々僕がブログでも言及しているファブラボ(デジタル市民工房)のユーザーが、ラボのマスターやデスクトップ工作機械の力を借りて製作したものは、そのデザインや仕様をウェブ上で公開するのが原則となっていることだ。市民ユーザーがラボで製作したものが抜本的な新たなテクノロジーを生み出しているわけではなく、言ってみれば低コストのイノベーションを起こしているに過ぎない。それを知財の観点から保護したところで、それによって得られるイノベーターの利得は大したものではない。むしろ、無料公開することで、先行したイノベーターとしての名声、評判を得ることができるかもしれない。また、仮にそうでなかったとしても、開発途上国の地方都市や農村の状況の中でラボが開設され、そこで草の根の発明家が社会問題を解決するために新たな製品を作り出したとしたら、そうした社会問題解決のためのイノベーションは、やはり公共財として広く共有されることが必要だともいえる。(勿論、それを完全コピーしてもそのイノベーションが育った特定地域の文脈というものがある筈なので、他地域で適用するには何らかのカスタマイズ措置が必要となるだろう。)

また、第7章「イノベーション・コミュニティ」では、ユーザーによるイノベーションがごく少数の非常に革新的なユーザーに集中するのではなく、広く分散する傾向にあること、結果的に、ユーザー・イノベーターにとってみると、自分たちの活動を組み合わせてレバレッジを効かせる方法を見つけることが重要で、彼らはこれを様々な協力関係によって達成していると指摘されている。その協力関係も様々で、よく見られるのは直接的で、インフォーマルなユーザー間の協力関係(他者のイノベーションをサポートするとか、質問に答えるとか)を築くことで、メンバー間の相互作用とイノベーションの普及に役立つ仕組みとツールを提供するネットワークやコミュニティに、ユーザーが加わるという組織的協力も多いという。

 イノベーション・コミュニティによって、ユーザーとメーカーは自分たちのイノベーションを開発、テスト、普及させ、その結果、スピードと効率性を高めることができる。イノベーション・コミュニティはまた、コミュニティの参加者が作成した相互リンク可能なモジュールを用いて、イノベーターが大規模なシステムを構築する際の作業負担を大きく軽減することができる。(p.26)

このチャプターの記述でも、連想されるのはファブラボ間のネットワークで、どこかのラボでユーザーないしはマスターが何らか疑問に思ったことやラボの運営、機械の操作法等で人に聞いてみたいと思ったりした場合に、近隣のラボのユーザーだけでなく、国境を越えた他国のユーザーからSNSやビデオ会議を通じて新たなアイデアや助言を得ることができる。ファブラボの世界的なネットワーク自体が一種のイノベーション・コミュニティになっているともいえる。

但し、この記述はファブラボだけではなく、他のネットワークの議論においても適用可能かもしれないと思った。僕は今出張でアジアの某都市に滞在中だが、その目的は会議に出ることで、その会議自体は年に1回ぐらいはネットワークのつなぎ直しのために対面で顔を突き合わせる機会があってもいいかということで始められたものである。そうやってネットワークを維持していれば、何かの時には誰に質問したらいいかが予め特定できており、しかも照会しやすい雰囲気を維持できる。

さらには、第11章「適用例:ユーザー・イノベーションとカスタム設計のためのツールキット」自体、読んでいるとデジタル工作機械を備えたファブラボの存在自体が一種のツールキットなのだと考えたら理解がしやすいということに気付いた。

ことほどさように、この本で展開されている議論は、ファブラボ及びそのネットワークとイメージが相当重なる。そんな本が2005年に既に出ていたことには驚かざるを得ない。

その他にもいろいろな論点を提示してくれている本だと思う。出会えたことに感謝したい。

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