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『オープン・サービス・イノベーション』 [仕事の小ネタ]

オープン・サービス・イノベーション 生活者視点から、成長と競争力のあるビジネスを創造する

オープン・サービス・イノベーション 生活者視点から、成長と競争力のあるビジネスを創造する

  • 作者: ヘンリー・チェスブロウ
  • 出版社/メーカー: CCCメディアハウス
  • 発売日: 2012/10/20
  • メディア: 単行本

7月にご紹介した『OPEN INNOVATION』に続く、チェスブロウの著書のご紹介である。前回のご紹介の際に、この著者もオープン・イノベーションを公的セクターや国際協力の分野で適用しているケースがあったら取り上げて欲しいという趣旨のコメントを僕は残していたが、その著者が2011年に『Open Services Innovation』という本を出しており、それも既に邦訳が出ているのを知り、読んでみることにした。

少なくとも、僕は本書がサービス業のオープン・イノベーションの話だろうと思って読み始めたが、すぐにその予想が外れていることに気付かされた。残念ながら、著者の「オープン・サービス・イノベーション」の定義は結局のところは企業のイノベーションのことであり、なおかつ製品中心のイノベーションを行うことの限界を指摘して、「製品を内部・外部のイノベーションを取り込むプラットフォームへと変換し、そのプラットフォームを中心に幅広い付加価値サービスを加えることで、起業は容赦ない価格競争から抜け出せる」(p.33)と主張している。製品を進化させつつ、ユーザーが製品を通して利用できる製品やサービス全体を競争の基盤とするべきだと提唱している。

卑近な例はAmazonじゃないかと思う。元々は本の通販サイトだったが、今では中古書籍の出店も多く、かつ取扱い商品のラインナップもここ10年の間に豊富になった。とは言ってもAmazonはプラットフォームとしてのサイトを提供していて、そこに多くの業者が集うようになっているだけのことである。同様に、本書ではオープン・サービス・イノベーションの好例として、アップル社のiPhoneを挙げている。
iPhoneにはスマートなデザイン、エレガントなユーザー・インターフェイス、本をめくるようなタッチスクリーンが備わっている。しかし、それだけではなかった。iPhoneは(中略)端末機器の域を超えていた。さまざまな体験を可能にするような、他社が提供する多くのアプリケーションやサービスでわれわれを魅了するひとつのシステムなのだ。iPhoneはプラットフォームとなった。10万以上の個人や企業がiPhoneで使えるアプリケーションを考案し、世界中のユーザーが累計20億以上のアプリケーションをダウンロードしている。
 iPhoneの優位性はすぐに衰えそうにない。最近になってこの業界に参入したグーグル、マイクロソフト、パームも、自社のイノベーションが成功につながるように、他社のアプリケーションやサービスを取り込もうとしている。勝者となるのは、かっこいい機械をデザインした者ではなく、いちばん多くのサポートを手に入れて、ユーザーに最高の体験を提供できる者なのだ。(pp.33-34)

そういえば、タイミングの良いことに、新型iPhoneが発表されましたね。

こうした、プラットフォームで儲けるような手法は日本企業はあまり得意としてこなかったところだろう。日本のメーカーは製品の提供をゴールとしてきたと思うが、本書で強調されているのは、製品を媒介としつつもどれだけ多様なサービスをその製品を媒介として提供できるかというところにあるように思う。

メーカーの中には、質的に優れた製品を作れば消費者はわかってくれるという技術部門の発想と、消費者にとって魅力的で売れるものを作って欲しいという営業部門の発想とのせめぎ合いの話はよく聞く。しかし、そうは言ってもそれは1つの企業の中での話になる。ここに「オープン・イノベーション」の発想を入れるということは、第三者も参加できるプラットフォームのビジネスにするということである。

著者はオープン・サービス・イノベーションを推進する枠組みの構築には、次の4つの基本概念の確立が必要不可欠だとする(pp.38-50)。本書の冒頭に出て来る記述だが、おそらく本書全体を通じても最も重要な記述だろう。

コンセプト1:コモディティ・トラップが進行する世界で差別化を避けるため、(製品、サービスの両方で)ビジネスをオープン・サービスのビジネスと位置づける。

コンセプト2:顧客の価値ある体験を創出するために、顧客をイノベーションの共創に引き入れる。

コンセプト3:サービス・イノベーションを加速、深化するためオープン・イノベーションを利用し、イノベーションのコスト、リスク、時間を減らす。そのために、オープン・イノベーションを使って第三者も参加できるプラットフォームのビジネスに変革する。

コンセプト4:オープン・サービス・イノベーションを伴うビジネスモデルに変換し、イノベーションによって利益が得られるようにする。プラットフォームのビジネスモデルが構築できたら、他のイノベーションからも利益が得られる。

さて、本記事の冒頭で述べた、これを公的セクターや国際協力の文脈に当てはめてみたらどのようなオープン・イノベーションのモデルが想定されるのだろうか。未だちょっとモヤっとしているところはあるけれど、何となく見えてきた気もしている。それはここではあまり触れないけれど、特に国際協力の文脈に関していえば、プラットフォームを提供しているのは国連や世界銀行であることが多いし、その裏でこれら機関への働きかけを進めて、プラットフォームが出来上がったらそこに人を送り込んで国際協力の潮流をリードしているのは主には欧米の国々であることが多い。日本がプラットフォームを作ることは多くない。メーカーだけではなく、国際協力の分野でも日本が後塵を拝すことは珍しくない。

どうやったらプラットフォームが作れるのだろうか。「顧客との共創」や「オープン」というあたりにヒントがありそうだ。

原著はこちらです。

Open Services Innovation: Rethinking Your Business to Grow and Compete in a New Era

Open Services Innovation: Rethinking Your Business to Grow and Compete in a New Era

  • 作者: Henry Chesbrough
  • 出版社/メーカー: Jossey-Bass
  • 発売日: 2011/01/18
  • メディア: ハードカバー


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