So-net無料ブログ作成
検索選択

『躍進する新興国の科学技術』 [仕事の小ネタ]


金曜夜は夜更かしして、参議院本会議における安保法案採決の模様をテレビで見ていた。自民党議員による賛成討論を聞きながら、「国の存立を脅かす事態」に一刻の猶予もならないというなら、日本は防衛力の増強をハード面で進めるのが本当に唯一の方法論なのか、疑問に思った。いくら頑張ったって、日本の人口は今後も減るし、超高齢化はもっと進む。自衛隊の志願者数だって減るし、財政的な制約はもっときつく効いてくる。そんな中で、力に力で対抗するなんてできるわけがない。安保法案を国会通過させるための与党の説明を聞きながら、何を根拠にそんなことが言えるのか、不思議でならなかった。

シリア難民は欧州諸国にあふれる一方、世界各地で異常気象や自然災害によって甚大な被害が出ている。日本だって例外ではない。国の存立を脅かす事態どころか、地球や人類自体の存立を脅かす事態が各地で起こっているのだ。力には力をという考えをいったん捨てて、「我が国は持続可能な開発に貢献するための技術開発を進め、これを世界と共有していきます」と一方的に世界に向けて宣言すれば、日本は世界から称賛され、「潰すには惜しい国」としてリスペクトされるだろうに。国際的に果たされるべき責任を平均値以上に果たす国になっていったら、それが国の安全保障にもつながると思う。

前置きが長くなったが、本日ご紹介するのは新興国の科学技術イノベーション政策に関する1冊である。こういう姿を見て、日本はどうしていったらいいのか、考えてみるべきだとも思う。

躍進する新興国の科学技術 (ディスカヴァーサイエンス) (Dis+Cover Science)

躍進する新興国の科学技術 (ディスカヴァーサイエンス) (Dis+Cover Science)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
  • 発売日: 2011/05/21
  • メディア: 新書
内容説明
安い労働力や、豊富な天然資源を背景に、経済成長を続けてきた新興諸国。
中国が「世界の工場」から「科学技術大国」に脱却、成長しつつあるのと同じ道をたどって、それら新興国の科学技術も、これから加速度的に進歩すると見こまれている。
ロシアのソユーズはなぜいまだに高い信頼を得ているのか?
韓国サムスン電子の急成長を支えた「地域専門家制度」とは?
多国籍企業はなぜイスラエルに続々と研究所を設立するのか?・・・。
知られざる新興国の科学技術を、各国の風土的背景もふくめて解説する。30年後の世界のパワーバランスを変えるのは、躍進する新興国の科学技術かもしれない!?
前回、科学技術イノベーションに関する記事を1つ挙げたが、実はそれとの抱き合わせで本の紹介もして、1つの記事にまとめようかと思っていた。結局前回の記事でご紹介した報告書と今回紹介する本とは論点がちょっと違うし、前回の記事は意に反して結構長くなってしまったので、2つに分けて紹介することにした。

本書で紹介されている国は、ロシア、インド、ブラジル、南ア、韓国、イスラエル、東南アジア、台湾である。お気づきの通り、「新興国」と言っている割には中国が含まれていないが、仮にあったとしても、各国の政策の羅列であり、あまり比較分析といえるところまで総括もされていない。だから、「それで日本はどうしたらいいの?」という政策的示唆の提示にまで至っていないので、なんだか物足りなさが残る編集だ。この中で紹介された特定の国に興味がある人なら、そこだけ拾い読みするだけでもいいと思う。

「新興国の科学技術を取りあげるのは、経済的に勃興する国(Emerging Economies)では、科学技術にも力が入れられているのではないか、との仮説に基づいています」(p.122)と書かれている。それはそうだと思う。科学技術イノベーション政策を重視するのは、それが持続的な経済成長には必要不可欠だからだ。新興国の中には、タイのように「中所得国の罠」の状態に陥り、なかなか高所得の先進国の仲間入りができない状態に陥った国がある。新興国は低賃金の労働力等を原動力として経済成長し、中所得国の仲間入りを果たしたけれど、自国の人件費の上昇や後発新興国の追い上げ、先進国の先端イノベーション(技術力等)の格差などにあって競争力を失い、経済成長が停滞する状況に陥ってしまうところがある(http://www.ifinance.ne.jp/glossary/global/glo200.html)。この状況を打破するためには産業の高度化が欠かせず、そのためには産業人材の育成や研究開発による産業技術の高度化が必要と考えられている。だから、著者の言っている仮説はもはや仮説ではなく、当たり前のことなのである。

それと、この本は2011年の発刊だから、科学技術振興機構(JST)の調査研究事業はその1年ぐらい前に行われていた筈で、そこからすると既に5年が経過していることになる。世の中の流れは早い。2010-2011年時点での定点観測としては本書はいいと思うが、この手の本は時間の経過とともに陳腐化が激しく、その意味では今読んだからといって即参考になるというものではない。肝心なのはこれをベースラインとして、今どうなっているのかを自分で調べてみることなのだろう。

nice!(3)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 3

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0

メッセージを送る