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『モジュール化の終焉』 [仕事の小ネタ]

モジュール化の終焉―統合への回帰

モジュール化の終焉―統合への回帰

  • 作者: 田中 辰雄
  • 出版社/メーカー: エヌティティ出版
  • 発売日: 2009/11/26
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
iPhoneの隆盛、クラウドの広がり、グーグルの成長…統合への回帰による産業構造の変化と、日本企業復活の可能性。歴史的考察と実証分析によるIT産業の未来像。

この本は、ある問題意識に基づいて9月初旬に市立図書館で借り、2週間の貸出期間延長の後、さらに1週間延滞させた上で、ようやく読み切ったという代物である。時間がかかった理由は、この本が専門書でボリュームがそれなりあったというのが大きいが、読了する前に用件が片付いてしまったりして、読み切るモチベーションが途中で下がってしまったことも大きい。

とはいえ、専門書というわりには論点も明確で、文章もやさしいので、本気で読めばそれなりにスラスラ読めるいい本だ。著者の仮説を実証する幾つかの章は飛ばし読みでも構わない。

先ずお断りしておくが、本書は情報通信産業のことを述べている。「モジュール化」というと様々な定義があるが、本書では公開されたインターフェースで分けられているものをモジュールと呼び、「ある目的に使う財・サービスをいくつかのユニットに分け、その組み合わせのインターフェースを固定して一般にも公開すること」をモジュール化と呼んでいる。例えば、パソコンでいえば、ハードウェアとOSとアプリケーションソフト、周辺機器類が分けられるのがモジュール化ということになる。

昔のコンピュータはメーカーの作ったハードの上に専用OSと専用のアプリケーションソフトが載っていて、周辺機器も専用のものを接続して使っていた。統合化製品というやつだ。それが切り離されて、第三者の企業が公開されたインターフェースに従ってモジュールの生産・供給を始める。OSはOSの企業、ハードはハードの企業、アプリ開発はアプリ開発の企業、プリンターはプリンター専門メーカーといった具合だ。そして、モジュール毎に企業間の競争が起こり、技術革新も進む。

ここ30年の情報通信産業はモジュール型製品の圧勝、統合型製品の完敗の歴史だったと著者は言う。パソコンは大型コンピュータを駆逐し、インターネットが電話網を圧倒した。個別の製品で見ても、ワープロ専用機はパソコンとワープロソフトの組み合わせに完敗し、市場自体が消えてしまった。これに伴い、産業構造は垂直統合型から水平分離型へ移行し、旧来の大企業に代わってベンチャー企業が台頭した。インテルやマイクロソフト、シスコ等、特定のモジュールを世界規模で供給する大企業が出てきた。

一方で、モジュール型製品はユーザーが自己責任で組み合わせなければならないので、ユーザー側の負担が大きく、使い勝手が良くない。それなのに情報通信産業でモジュール化が進んだのはなぜか。著者の仮説は、技術革新には突破型と改良型があり、突破型革新が集中する時代が数十年続くと次に改良型革新の時代が数十年続くという技術革新のサイクル説をとる。そして、情報通信産業ではマイクロプロセッサーやワープロ、表計算、ブラウザ等、かつてはなかった製品が次々と発明され、突破型革新の時代を歩んできた。突破型革新が続く時代には、事後的にその革新を利用するために、製品を交換可能ないくつかのモジュールに分けておいた方が有利であったからだと考えられる。

しかし、突破型革新はやがて減速し、改良型革新に移っていく。既存の製品・サービスの基本的性格は変えず、安定性を高めたり、機能拡張したり、使いやすさを改善するような取組みであるが、これらはどの企業でもある程度は遂行でき、世界のどこかで生じた革新を事後的に利用する必要性も乏しい。1つの企業が統合化して生産した方が、余計な機能を削り、調整を済ませて使いやすいものにすることができる。モジュール型製品ではモジュール間のトラブルはユーザーに負担を強いていたが、統合型製品はそれらの問題は最初から解決済みで、ユーザー側の負担が軽減されて誰でも利用できるようになる。

こうして供給面では突破型革新が減速し、需要面では大衆ユーザーが登場してきたことで、統合型製品に対する回帰が起きる――これが著者の仮説である。この仮説を実証するために、➀突破型革新が本当に減速しているのか、②統合型製品への回帰が本当に起きているのかを、量的質的分析をもって明らかにしている。

ちなみに、大事なのは何が統合型製品と言えるのかという点だが、本書で挙げられているケースは、デジタルカメラのダイレクトプリント、iTunesと携帯音楽配信、パソコンでのソフトの機能統合とプリインストール化、企業・大学におけるパソコンの再中央集権化、SaaS(Software as a Service、ソフトウェアのコードをサービスの形で売ること)やクラウドコンピューティング、iPhone、SNS、ポメラ、デジタルフォトフレーム、ヤフー、グーグル、アップル等だという。

まだ僕にはよくわからないのは、こうして統合型製品・サービスが身の回りで増えてきているように見えるのに、別の識者は「これからの経済社会のキーワードは「モジュール化」「オープン化」だ」と主張していることである。1つの可能性は、情報通信産業では確かに統合型製品・サービスへの回帰の兆候が見えつつあるのかもしれないが、それ以外の産業ではモジュール化自体がそれほど進んでいない。


上の動画は「TABBY」というオープンソース・ビークルの製造工程が描かれているものだが、これも各ユニット毎に製造工程がモジュール化されているように見えるし、少し前にインドで話題になったタタ自動車の「10万ルピー乗用車(One Lakh Car)」も狙いは乗用車の製造工程をモジュール化して組み立てられるところが特徴だったと記憶している。自動車製造ではまだモジュール化はそれほど進んでないと僕は理解しているけれど、徐々にではあるがそうした方向にあるのかなという気もする。


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