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『地名に隠された「東京津波」』 [読書日記]

地名に隠された「東京津波」 (講談社+α新書)

地名に隠された「東京津波」 (講談社+α新書)

  • 作者: 谷川 彰英
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2012/01/20
  • メディア: 新書
◇東日本大震災により、東京湾でも船橋に2.4mの津波が襲い、浦安は大規模に液状化した。東京にもっと大規模な地震や津波がおそったらという想定は、ありえないものではない。この機に地名研究家である著者は、東京の高低を記した古地図を入手。そこで改めて、東京が起伏の多い地形であり、いまそれが高層ビルの乱立や地下鉄による移動などで見えづらくなっていること、また、山の手と下町で「山」「丘」「台」、「川」「橋」「江」など地形や水に関する地名が多いことなどを確認した。

軽く読める新書サイズの本を図書室で物色していて、何となく手に取った本。古地図が口絵としてふんだんに挿入されており、読了するのにさほど時間はかからないと思う。

著者は元々全国の地名の由来を研究している学者である。東日本大震災の直後、東京湾にも津波が到達していたという事実を知り、これが三浦半島沖とかを震源にした巨大地震があったら津波の被害は絶対避けられないだろうと考え、問題提起する本を出そうと思い立ったようだ。本書の付加価値は、東京都が地震災害による危険地帯を「建物倒壊危険度」と「火災危険度」の2つの尺度のみで測っていて、津波や液状化現象に関するハザードマップが考慮されていないのを指摘したという点にあると思う。

ただ、後半の地名による危険度評価の章は蛇足で、東京23区の地名の由来を知るのはいいにせよ、災害とは全く無関係の話題に脱線するところも多々ある。それはやむを得ないことで、東から見ていったら、沖積層の上に形成された東京東部から都心のビジネス街あたりまでは元々軟弱な地盤でもあるし海抜も低いので、地震の際には液状化や津波の影響を受けやすいのは間違いない。

しかし、章が進んでより山の手のエリアの地名解説に移るにつれ、元々洪積層の強い地盤の上に形成された土地が多いので、液状化や津波の被災リスクはどんどん下がり、そうなると単なる地名の解説に過ぎなくなる。それは元々著者の土俵でもあるテーマだが、こうなってくると内容はどんどん本の主題から外れていき、街歩きガイドブックの様相を示していくのである。渋谷や千駄ヶ谷といった谷も所々にあるので、この構成はある程度はやむを得ないのかもしれない。しかし、そうはいってもこの手の切り口で書かれた読み物としては既に中沢新一著『アースダイバー』という良書があり、二番煎じ感が相当強い。

それと、本書を読んでみて感じる大きな疑問は、著者の指摘する津波災害リスクの高低は、基本的に海抜しか基準にしていないところにある。海抜5メートル程度のところは高リスクであり、これが20メートルを超えると単純に安全だと述べている。本当にそうだろうか。海抜が低くて津波のリスクの高いエリアにはオフィスビルも立ち並んでおり、これらのビルが津波の侵入する流路を相当複雑なものにする。このために、高さ10メートルの津波が押し寄せてきたと仮定しても、局地的には20メートルを超える高さに達するケースが起こり得るのではないかと気になる。単に海抜が20メートルあったら安全というわけでもないのではないか。残念ながら本書はそこまでは踏み込んでいない。

それに、三浦半島沖を震源地とする地震が起こったとしたら、東京23区だけでなく、隣りの川崎市や横浜市、千葉県沿岸部へも津波は押し寄せる筈で、そういうエリアで暮らしている人々への言及もせずに東京23区にだけ言及しているのもどうかという気がしないでもない。

そんなわけで、なんだか中途半端な感が否めない本であるが、居酒屋トークで地名の由来の薀蓄を語るためのネタ本としてはちょうどお手頃だと思う。

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