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欧州開発報告書2015年版 [持続可能な開発]

European-Report-on-Development-2015-blog.jpgEuropean Centre for Development Policy Management (ECDPM)
European Report on Development 2015
Combining finance and policies to implement a transformative post-2015 development agenda
May 4, 2015
http://ecdpm.org/publications/european-report-on-development-2015/





最近読んだ本の中の一節に、「本を書きたければ、書きたいテーマに関連した本を3冊読みなさい」というのがあった。僕の場合は本ではなく論文ということになるが、同じ法則を当てはめると、既にご紹介した『開発協力と新興国』が1冊目であり、本日ご紹介する『欧州開発報告書2015年版』(以下、ERD2015)が2冊目ということになる。

ERDはオランダ・アムステルダムにあるシンクタンク欧州開発政策運営センター(ECDPM)がドイツや英国の有名な開発シンクタンクの協力も得て編集・発刊している年次報告書で、毎年6月にブリュッセルで開かれる欧州開発デーで公表されている。世界銀行が世界開発報告書(WDR)を毎年出しているように、EUも毎年年次開発報告書を出している。ERDがそれに相当する。

ERDの今年のテーマは持続可能な開発を可能にする開発資金の話である。

本書では先ず、開発資金を巡る情勢は過去15年間で大きく変化したと指摘している。各国国内で動員される資金は急激に増加し、開発に必要な資金の相当部分は国内で調達される一方で、外国から流入する公的資金-いわゆるODAとOOFというので表される公的資金は、若干の増加は見られたものの、金額としては微々たるもので、その相対的な地位は15年間で大きく低下した。国内動員資金のうち、民間資金は最も急激に増加したが、その対GDP比は、低所得国(Low Income Countries, LICs)では極めて低い。

必然的に、低所得国では外国からの公的資金が大きな役割を果たす。ODAは低所得国に振り向けるべきだとする途上国の主張はこのあたりが根拠となっている。しかし、低所得国が低中所得国(Lower Middle Income Countries, LMICs)に移行していくにつれて重要性を増すのは国内で税収をしっかりあげることだと本書は指摘する。国内資金動員の中でも、先ずは税収増加に基づく公的資金の動員が必要で、より長期的には民間資金の動員も課題として視野に入って来るということなのである。

ERDはさすがに低所得国や低中所得国にだけスポットを当てた書き方はされていない。「持続可能な開発に向けた2030年アジェンダ」は全世界の国と人々にとっての普遍的な課題なのだという原則に従えば、高中所得国(Upper Middle Income Countries, UMICs)や高所得国(High Income Countries, HICs)にも言及しなければならない。このあたりになってくると、関心はもっぱら民間資金動員で、それが国内の民間資金であろうと外国からの民間資金であろうと問わない。

ERDが腐心したのは、こうした国の発展度合いを問わない分析枠組みをどう作るかという点である。ERDはそれを、➀いかに開発資金の動員額を拡大するか(資金源)と、②調達された資金をいかに効果の出る形で利用するか(資金使途)の2つの側面から捉え、そのいずれにおいても重要なのは「政策」なのだと指摘している。

ついでに言うと、これは僕の解釈だが、資金の使途を考えるにあたっては、➀どこに投入するかと、②いかに効率的に投入するかという2つの側面がある。そして、資金使途に関するこうした取組みが成果を生み出していることが内外で十分訴求されれば、それが新たな資金動員にもつながるという好循環も生むだろう。だから「政策」が重要なのだとも言える。

どこに投入するかという点に関しては、ERDは持続可能な開発を可能にする要素(enablers)は6つあると述べている。➀(主には地方の)ガバナンス、②インフラ、③人的資本、④自然資本(生物多様性)、⑤(環境・エネルギー関連)技術、⑥貿易、である。(ちなみに、別のシンクタンクの予測では、2030年までの持続可能な開発への取組みに必要な資金の65~70%はインフラ整備が占めるらしい。)

――以上がERD2015の概略だ。

前半の部分はわかりやすいが、後半の分析枠組みについては、ちょっとわかりにくかったというのが正直なところだ。SDGsの実施を考えればこの枠組みは国単位で考えるのが適切なのだと考えられるが、そこで述べられている政策の幾つかは明らかに各国政府の取組みのレベルを超えた、国際的な政策形成の場に委ねられるものである。

それと、政策の重要性は強調されているものの、効率的に資金を使ってしっかり成果を上げていくのに必要な制度構築やキャパシティビルディングの議論があまりされていない印象を受ける。

おそらく、ERDの提示する枠組みは、国単位で分析するための枠組みではなく、国際社会全体を捉えた、世界で1つの枠組みなのだろう。それであっても、6つのEnablersの部分は大変参考になった。

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