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『貧困を救うテクノロジー』 [持続可能な開発]

貧困を救うテクノロジー

貧困を救うテクノロジー

  • 作者: イアン・スマイリー
  • 出版社/メーカー: イースト・プレス
  • 発売日: 2015/08/19
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
1961年国連にて「開発の10年」が戦略として打ち出されて以来、南北問題は世界全体が注視し、解決すべき喫緊の問題として認識されるようになった。大型の投資と貿易は経済発展の手段としてさかんに取り入れられたが、ほとんどの場合、先進国からの一方通行という性格を帯びていたため失敗に終わる。一方で、小型で単純で安価に導入され、成功をおさめたプロジェクトもあった。本書は、発展途上国の実状と、約50年にわたる貧困との戦いの具体的な実績から、真に有効で持続可能な開発援助の方法を明らかにし、これからのあるべき姿を問う。

まだ発売になってから日が浅いが、日経の書評でも取り上げられ、実際に先に読んだ知り合いも「これ面白いです」と薦めてくれた1冊である。このところ、人の仕事が機械に置き換えられていくという話ばっかり載ってる本を立て続けに読んで気持ちが暗くなっていたが、もう少し夢のある話でもないものかと視点を変えたくて、こんな本も今回の出張には持ってきていた。

この本、原典は2000年に出ていて、販促用の帯によると、米国マサチューセッツ工科大学(MIT)では不朽のテキストとして読まれているんだそうだ。著者は別にMITの先生だというわけじゃないけれど、過去2世紀ほどを遡っての技術史を、途上国の開発という文脈で捉えている興味深い1冊だというのは認める。

15年も前に出た本が今頃邦訳されるというのはなんでだろうかといえば、それはきっとMITのものづくりが注目されたからだと思う。巻頭言を書かれている遠藤謙氏といったら、MITのメディア・ラボ所属の注目の研究者で、以前、『クーリエ・ジャパン』が2011年にメディア・ラボの特集を組んだ際にも登場していた。今やMITは世界中のものづくり愛好家の聖地のようなところであり、メイカームーブメントの一環としてこのような本も今になって注目されるようになってきたのだろう。慶應大学の田中浩也先生が監訳で随分とものづくりの本が日本でも出版されるようになってきてはいるが、絶対的にはまだまだ不足で、特にものづくりが途上国のような身の回りに不便や問題が多いような環境の中でどのようにそれに立ち向かえるのか、ヒントを与えてくれるようなコンテンツは少ない。そういう意味では、「痒いところに手が届く」ような1冊であるといえる。

面白いので、先ずはご自身で手に取って読んでみられるのをお薦めする。過去に国際社会が犯してきた失敗の数々を振り返り、あるべき技術開発のあり方を考える良書だと思う。僕も途上国の開発問題に多少は造詣があるが、自分の見聞してきたことを振り返ってみると、確かにあの頃はそんなのが流行りだったと感じられるものはあった。例えば、僕が初めて「適正技術開発」と銘打った日本の技術協力プロジェクトの話を聞いたのは1990年代のはじめのことだが、本書によれば、実はその頃には既に適正技術のブームは終わっていたとのことだ。その辺の背景については本書を読んでみて下さい。正直、マーカーで線を引きすぎてこの場で紹介しようという気すら起きない。

でも、本書は基本的には「中間技術」や「適正技術」と呼ばれるものを好意的に見ている。それも、実は著者のオリジナルではなく、元々はシューマッハーの「中間技術」に依拠している。本書を理解する前提としてシューマッハーの『スモール・イズ・ビューティフル』を読んでおくと良いかもしてない。

400ページ超というボリュームの中でいろいろなケースを取り上げているので、国際協力に従事しているようなNGOや開発協力機関の人なら取りあえず自分が今関わっている分野の該当するチャプターだけでも読んでおき、後で必要に応じて必要な箇所を読み直すような使い方でいいかもしれない。

でも、敢えて苦言を呈するとしたら、やたらと引用があるわりに出典明記されていないばかりか、脚注も索引も付いていない。これはかなり読者に不親切な編集で、後になってもう一度読もうと思っても、拠り所にできるのは目次しかない。例えば、僕がインドの失敗事例を知りたいと思っても、索引がないために、最初からページをめくって、「インド」という言葉を探さなければならなくなる。本文だけでも有用は有用だが、そういうところを大切にしてないという点でこの本はその価値を損ねている。これ以上知りたきゃ原書を読めということかと思うが。

そんなわけで、原書はこれです。
Mastering the Machine Revisited: Poverty, Aid and Technology

Mastering the Machine Revisited: Poverty, Aid and Technology

  • 作者: Ian Smillie
  • 出版社/メーカー: Practical Action
  • 発売日: 2000/11
  • メディア: ペーパーバック

15年前に出た本だから、さすがにここ15年間の出来事がフォローされていない。記述の古さは気になるところだ。その15年の間に起きてきた世界的なメイカームーブメントが、途上国に何を引き起こしているのか――。またの機会にご紹介してみたいと思う。

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