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『ラーニング・レボリューション』 [持続可能な開発]

ラーニング・レボリューション――MIT発 世界を変える「100ドルPC」プロジェクト

ラーニング・レボリューション――MIT発 世界を変える「100ドルPC」プロジェクト

  • 作者: ウォルター・ベンダー
  • 出版社/メーカー: 英治出版
  • 発売日: 2014/05/13
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
すべての子どもが1人1台パソコンを手にしたら、この世界はどう変わるだろう。グローバルにつながり合う企業・政府・個人が共に仕掛ける教育革命の大プロジェクト「OLPC」。

OLPC(One Laptop Per Child)-「1人に1台のラップトップを」と称した巨大プロジェクトのことは、かなり前から聞き知っていた。構想を最初に聞いたのは2000年代に入ってから意外と早い時期で、「100ドルラップトップ」という良い方をされていて、世間の耳目はラップトップのコストダウンをどうやって実現させられるのかというハード面に集まり、これが学校に通う子ども達の手に渡った後、子ども達の学習姿勢にどのような変化をもたらすと期待されているのかという点については、あまり触れられることがなかった。

OLPCが具体的なラップトップとともに世界にお目見えしたのは2006年にチュニスで平かれた「世界情報社会サミット」の時である。当時、僕は「そんなにコストダウンできるのなら自分も1台欲しい」と思ったが、そういうものがヨドバシカメラやヤマダ電機の店頭に並んだことはないし、駐在していたインドでも見かけたことはない。都市部ならともかく、途上国の農村部はラップトップの使用環境が過酷だ。そして、OLPCが狙っている市場は、まさにそうした農村部であると理解している。ハード面ではとても制約が大きいだろうと当時は思い、そのことをブログでも記事として何度か書いていた(残念ながら、当時の過去ログは一般読者向け閲覧ができる状態で置いてないので、ここではリンク先をご紹介できませんが。)

その後も、『ものづくり革命』をご紹介した中でOLPCにも言及し、やはりかんばしくない結果を「それ見たことか」とこき下ろしたことがある。

こうして、僕はOLPCのことはかなり以前から聞き知っていたけれども、ハード面での制約要素の方ばかりに気を取られ、話の主役となるラップトップ「XO」が子どもの学習姿勢に及ぼす変化への洞察がほとんどなかった。それが本書を読んでみての大きな反省点だ。使い方のわからないラップトップをいきなり渡されたら、子ども達はどうするだろうか。友達と相談して、あるいは自分で調べたりして、操作方法をどんどん学習していくだろうし、こんなこともできる、あんなこともできると、いろいろな可能性を見出し、それをまた友達とシェアできる。うまくいかないこともある。失敗から学ぶことも貴重な教育機会だ。

こう考えていくと、ラップトップは市民向けものづくり工房と一緒で、小さなイノベーションを次から次へと引き起こせるツールキットなのだと気付かされる。それは学びの場でもあり、途上国で往々にして行われている、暗記中心の詰め込み教育とは異なる、より深い学びが可能となるのだろう。

その片鱗は、本書を読んでも感じられる。OLPCはそもそもがこうした狙いもあって考案されたのだが、実際に配布が行われるようになってからまだ数年といったところなので、今確認できるのは、ラップトップを手にした子ども達がどう変化したのかという短期的な行動変化ぐらいで、小中学生時代にラップトップを手にした子ども達が、その後成長して大人になった時、手にしなかった子ども達と比べて有意な能力の違いを見せるものなのかどうか、そこまでの追跡調査は本書ではされていない。

むしろ、本書はこのプロジェクトの黎明期から、発足後のハード・ソフト両面での研究開発のプロセス、各国での導入働きかけの経緯、出荷・陸揚げから各校への配布、先生の研修等に至るまでの各国レベルでの苦労話等が克明に描かれている。これだけの巨大プロジェクトを動かすには、ハード開発、ソフト開発の企業の他に、財団、NGO、大学等、相当に広範なパートナーとの協働が求められてくる。しかも、多くの場合、パートナーは国外にもいる。こんなに巨大でマルチステークホルダのパートナーシップは、どのように形成され得るのかのか、それを知る上では、OLPCは格好の素材だといえる。OLPCの成功した点、失敗した点、率直に語っえいる点には好感も持てる。良いプロジェクトヒストリーだ。

また、せめて、どこの国で現在進行中か一覧できる地図でもつけてくれてたらよかったかもしれない。分厚い本のわりには全体像がつかみにくく、どこの国の学校を見ればXOが導入されているのか、実際にエピソードが紹介されているウルグアイ、パラグアイ、タイ、ルワンダ等を除くと、あまりよくわからないのである。例えば、僕が開発協力の実施担当者だったとして、どこかの国に駐在していたとしたら、このXOというラップトップは利用価値があるのかどうか、もしあるならどの現地パートナーを通じてOLPCとの協働が可能なのかを知りたくなるだろう。

でも、もはやスマホやタブレット端末の時代になろうとしている今日、ラップトップが教育のためのメディアとして十分可能性があるものなのかどうか、やや疑問も残る。はやりすたりのあるテクノロジーの悲哀をOLPCにも少し感じてしまう。

正直言うと、かなり読みづらい本だった。翻訳のせいというよりも、原著者の描き方がそうだからだろう。そして、読んでてどこか切ない気持ちにもさせられた。

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