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『流』 [読書日記]

流

  • 作者: 東山 彰良
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/05/13
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
1975年、偉大なる総統の死の直後、愛すべき祖父は何者かに殺された。17歳。無軌道に生きるわたしには、まだその意味はわからなかった。大陸から台湾、そして日本へ。歴史に刻まれた、一家の流浪と決断の軌跡。台湾生まれ、日本育ち。超弩級の才能が、はじめて己の血を解き放つ! 友情と初恋。流浪と決断。圧倒的物語。

この作品は、出たばかりの頃にTBS『王様のブランチ』で紹介され、それを見てたら相当面白そうな作品だったので、いつか読みたいと思っていた。間を置かず、『流』は直木賞を受賞した。同時期に『火花』で芥川賞を受賞した又吉直樹に話題をさらわれてしまったのは惜しかったが。

生来あまのじゃくな僕は、こういう場合『火花』は読まない。でも、『火花』があまりに話題になり過ぎた裏で、ひっそりと評価を受けていた作品には食指が伸びる。たまたま近所のコミセン図書室に出かけたタイミングで新着図書のコーナーで『流』を見つけ、これぞ千載一遇の機会だと思い、すぐに確保した。

期待に違わぬ素晴らしい作品だった。いや、「すごい」という表現の方がぴったり当てはまる。カテゴリー的にはミステリーに入るのだと思うが、三世代にもまたがる運命の糸を描いているというスケールの大きさは、ミステリーというカテゴリーを超越していると思う。ロバート・B・パーカーの『過ぎ去りし日々』とちょっと似てるかな。

作品は1975年に起きた台湾・蒋介石総統の死前後から始まる。息子の蒋経国が総統を世襲した直後の台湾は、国民党が必ずしも内省人に受け容れられていたわけでもないという緊張した状況があったらしい。そんな中で、国民党に付いて大陸から台湾に移り住んできた人々は、台湾の内省人との間で交流は始まっていたけれども、やはり身を守るのは家族や同郷人ということで、固まって暮らしていたようだ。

一族の中でも、大陸時代に匪賊として山東省で殺戮行為を繰り広げ、今も傍若無人な振る舞いがある祖父が、衝撃的な殺され方をし、それを17歳の主人公・秋生が遺体の第一発見者となる。話はそこから急激な展開を見せる。祖父の死が頭から離れない秋生は、その後時間をかけ、台北から嘉儀、さらには日本、中国本土にも足を運び、真相に近づいていく。

僕が台湾を訪れたのは1987年が最初で最後。当時は既に蒋経国総統時代の末期だったのだが、初期の台湾ってこんな感じだったんだというのがよくわかって面白い。僕が台湾行ったのは丁度大陸への渡航が条件緩和されていく頃だったから、当時こういった苦労をしながら外省人は大陸に渡ったんだなぁとしみじみ。

士林や西門町の喧騒を思い出した。今はどうなのかよくわからないが、僕が台湾を訪ねた当時も、既に海のものとも山のものともわからない、珍妙なお店が沢山あって活況を呈していた。戦争の名残がまだ残っていて、血族の結束が強く、その割には体罰とか平然と行われていた。あまりに強い血族の結束を窮屈に感じた若者はあぶれ者として街を闊歩し、悪さをしまくる。そんな社会がいいのかどうかはわからいが、その活況に淡い憧れを感じる自分もいた。

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