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『蚕の村の洋行日記』 [シルク・コットン]

蚕の村の洋行日記―上州蚕種業者・明治初年の欧羅巴体験 (セミナー〈原典を読む〉 (5))

蚕の村の洋行日記―上州蚕種業者・明治初年の欧羅巴体験 (セミナー〈原典を読む〉 (5))

  • 作者: 丑木 幸男
  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 1995/07
  • メディア: 単行本
内容(「MARC」データベースより)
「帰国の時はおまへを大切に致し候」 蚕の種紙を売りに出かけたイタリアから、こう妻に書き送った上州村の豪農たち。近代のとば口の様々な西洋体験は、人々に何をもたらしたか。

6日(水)、かねてからの念願だった「世界遺産」富岡製糸場に行ってきた。「世界遺産」というのがくっついたお陰で訪問客が増え、なかなか行く機会を見出せずにいたのだが、さすがに海外赴任まで残り時間が少なくなり、前の部署での仕事もひと段落ついて出勤せずに赴任準備に時間が割けるようになってきたので、まさにその赴任準備と称して、富岡まで足を運んだのである。

東京からの一人旅。車で行くのと電車で行くのとでかかる費用を比べて、後者を選択した。但し、目的地にまで辿り着くまでには時間もかかる。行きは朝8時半に最寄り駅から出発し、製糸場到着は正午だった。帰りも同様に3時間半かかった。これだけ時間がかかるわけだから、良い機会なので積読状態だった蔵書を多少でも読み進めようと考え、携行した1冊が『蚕の村の洋行日記』だった。

サブタイトルに「上州蚕種業者・明治初年の欧羅巴体験」とある。このサブタイトルだけ見れば、上州境島村の田島家が代表して欧州にわたり、島村産の蚕種を欧州のバイヤーに直接売った例の話だと容易に想像がつく。この話については橋本由子著『上州島村シルクロード』をブログでご紹介した際に概略説明済みなので併せてご参照下さい。『上州島村シルクロード』は子供向けの読みものとして書かれているので、欧州に渡った人々の現地でのご苦労が物語風に描かれているので理解しやすいが、実際に彼らが残した報告書や現地から出した書簡などの史料が直接引用されてるわけではない。そこを補っているのが『蚕の村の洋行日記』だ。

この本には、そうした史料の引用がかなり頻繁に出て来る。お陰で、1879年(明治12年)の第1回直輸出における派遣で、田島弥平、信、弥三郎の3人は西回りの航路ではなく、東回りの航路を使い、先ずサンフランシスコで上陸して、大陸横断してナイヤガラ、ニューヨーク見物など行っていることや、こんなルートを使えるくらいだから、相当な所持金を持っての豪遊だったことなどが浮かび上がってくる。

一方で、サブタイトルから誤解を招きやすいのは、「欧羅巴」とあるからてっきり島村の話だけなんかと思っていたら、1871年(明治4年)の岩倉使節団の残した「米欧回覧実記」の話が出て来る。これはこれで面白いが、岩倉使節団のメンバーに上州出身者っていたんだろうか疑問だ。また、上州出身者ということでいえば、水沼出身で若くして米国にわたり、生糸の対米輸出の販路開拓で大きな功績のあった新井領一郎も取り上げられている。新井については、渡米の際に吉田松陰の妹・文(楫取美和子)からお守り代わりにと託された、松陰の短刀を携行していたという話や、孫娘が後のライシャワー駐日大使の妻となるというので有名な人だったが、本書では、新井が渡米に必要な資金を捻出するのに、相当な借金をしていたことが紹介されている。

同じ上州の、「蚕の村」の出身者だったとはいえ、巨額の借金を背負って渡米した新井の生活は、相当な倹約によって成り立っていたらしい。それに比べたら、1913年以降都合5回行われた蚕種直輸出の御一行は、結構豪勢な旅を過ごしたらしい。

それにしても、ここでもサブタイトルの「欧羅巴」はミスリーディングである。新井は欧州ではなく米国に渡ったのであるから。

折角だから閑話休題。富岡製糸場で撮って来た写真を幾つか紹介しておこう。世界遺産ということで、今でも多くの観光客が訪れるこの製糸場、明治初期の近代化を担った貴重な設備が、かなり良好な状態で保存されているとの印象だ。そこに、桜の季節に行けたのは良かったと思う。また、僕はどうやったら繭の糸口を見つけられるのか(索緒)、やり方がよくわからなかったが、ここで糸繰りの実演を見せてもらった際に質問してみたところ、ちゃんと説明していただけた。そこは勉強になった。

しかし、その一方、富岡の展示は施設や機械に偏り過ぎていて、肝心の繭がどのようにして製糸場に運び込まれたのかとか、逆にここで出来上がった生糸はどのように流通したのか、そのあたりの事情がわかる展示物があまりなかったという点ではちょっと残念だ。日本の近代化を支えたのは確かに間違いないが、そのことで一体誰の生活が豊かになったのか、そこまで踏み込んだら、富岡は外国人がもっと訪れる、いいスポットになると思う。

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