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『限界費用ゼロ社会』 [仕事の小ネタ]

限界費用ゼロ社会 <モノのインターネット>と共有型経済の台頭

限界費用ゼロ社会 <モノのインターネット>と共有型経済の台頭

  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2015/10/29
  • メディア: Kindle版
内容(「BOOK」データベースより)
いま、経済パラダイムの大転換が進行しつつある。その原動力になっているのがIoT(モノのインターネット)だ。IoTはコミュニケーション、エネルギー、輸送の“インテリジェント・インフラ”を形成し、効率性や生産性を極限まで高める。それによりモノやサービスを1つ追加で生み出すコスト(限界費用)は限りなくゼロに近づき、将来モノやサービスは無料になり、企業の利益は消失して、資本主義は衰退を免れないという。代わりに台頭してくるのが、共有型経済だ。人々が協働でモノやサービスを生産し、共有し、管理する新しい社会が21世紀に実現する。世界的な文明評論家が、3Dプリンターや大規模オンライン講座MOOCなどの事例をもとにこの大変革のメカニズムを説き、確かな未来展望を描く。21世紀の経済と社会の潮流がわかる、大注目の書!

読了から1カ月近くが経過してしまうと、何が書いてあったのかを思い出すのが大変だが、知の巨匠が著したこの作品、情報盛り込み過ぎで僕の頭の理解容量をはるかに超えており、全部思い出すのは不可能に近い。多分、今後必要に応じて必要な箇所を読み直し、部分理解に努めるぐらいが関の山かなという気がする。自分の言葉で著者の論点を整理して述べるのは大変だが、IOTとファブラボ、幸福度、持続可能な開発、再生可能エネルギー、スマートシティ、MOOC等のキーワードが纏めて概念整理されて1冊の本の中で論じられているという点では非常にコスパが高いと思う。

そもそもこの本を手に取ったのは、IOTのことを知りたいと思ったからだが、IOTとは縁遠いと思われたここブータンにおいても意味をなしそうな論考が本書の中でも行われていたので少しだけ紹介してみたいと思う。

1つは、ブータンのような内陸国が、今後発展していくにあたっての示唆である。ブータンは人口が75万人強と市場としては規模が小さいし、輸入するにしても輸出するにしても輸送コストがかかるので、産業立地条件としては相当不利がある。放っておいたらどんどんインドから安い製品が入ってくるが、ブータンには輸出に向く産品が少なく、輸出するにもコストが高くつくので競争力がつかない。一方で、水資源だけは豊富なので、電力は豊富だ。また、若者の失業が問題だと言われているが、一方ではブータン人は3K仕事はあまり好きではないので、土木作業現場の労働力はインドからの出稼ぎ労働者に依存している。

そんなところに、実は3Dプリンティング技術は向いている。著者は、3Dプリンティング技術が従来の中央集中型の製造とは異なる点として、以下を挙げている。

「ソフトウェアの制作を別とすれば、人間による関与がほとんどない。仕事はすべてソフトウェアがやってくれる」
(p.138)
これは自らの手を動かすのを嫌うブータン人の気質には非常に向いていると思う。

「アディティブ・インフォファクチャリングは、サブトラクティブ・マニュファクチャリングの10分の1しか材料を用いないので、3Dプリンティングは効率と生産性の面で断然有利」(p.139)
どのみちフィラメントは中国製品の輸入になるとみられるが、それでも最終製品を輸入するよりはフィラメントを輸入して、いろいろなものを少量製作する方が輸入量は少なくて済む。

「3Dプリンターは自らの予備部品をプリントできるので、多額のコストをかけて工場の工作機械を切り替える必要もないし、それに伴う時間的損失も避けられる。また、3Dプリンターを用いれば、製品をカスタマイズし、最小限のコストで注文通りの製品をたった1つ、あるいはほんの少量作ることも可能」(pp.139-140)
ブータンは市場規模として小さいので、ブータン国内市場を想定した大量生産はそもそもが難しい。そこでは、必要なものを必要な数だけ作るという発想が必要となる。

「3Dプリンティング運動は、持続可能な生産に非常に熱心だ。3Dプリンティングでは、耐久性、リサイクル可能性、無公害の材料使用に重点が置かれている」(p.140)
ブータンはそもそも「持続可能な開発」への取組みに非常に真摯に取り組んでいる国であり、その一環としての「持続可能な生産」には支持も得やすい。ただでも今ティンプーのゴミ最終処分場は満杯になりつつあり、PETボトルなどプラゴミの再利用は大きな課題だ。もしこうしたゴミが3Dプリンティングのフィラメントとして加工・再利用されるようになると、ゴミ排出量の圧縮にもつながる。

「IOTは分散型・協働型・水平展開型なので、3Dプリンティング業者は、第三次産業革命のインフラがある場所ならどこでも開業して接続し、中央集中型の工場をはるかに上回る熱力学効率を享受し、第一次・第二次産業革命のどちらにも達成できなかったほどの生産性向上を果たせる。」(p.140)
ブータンの地方でも3Dプリンティング事業をやろうとした場合、電力は豊富な水力から利用することができる。

「IOTインフラにプラグインできる場所であればどこでも有形の財を生産し、販売し、流通させられる体制は、社会の空間的構成に劇的な影響を与えるだろう。」(p.142)
第一次産業革命は、都会の密集地の発展に有利に働いた。第二次産業革命のときには、生産は都会の密集地を離れ、全国を網羅するハイウェイの出口からアクセス可能な郊外の工業団地に移った。これに対し、3Dプリンティングを用いた第三次産業革命では、通信インフラに接続できるなら生産はどこでも構わない。極論言えば、首都から遠く離れた東部のブムタンやタシガンであってもいいわけである。

実際、ブータンでファブラボをという動きは既にある。本書の中でもファブラボへの言及がある。
ファブラボは、誰もがやって来てそこの道具を使い、独自の3Dプリンティング作品を作れるラボを提供するという目的で、MITメディアラボのMITビット原子センターで誕生した。ガーシェンフェルドによるファブ財団の綱領は、オープンアクセスのピアトゥピア・ラーニングに同財団がどれだけ力を入れているかを強調している。ファブラボには、レーザーカッターや溝彫り機、3Dプリンター、小型工作機械と、それに付随するオープンソースのソフトウェアを含む、さまざまな種類の柔軟な製造設備がある。設備の整ったファブラボは、およそ5万ドルで開設できる。現在、おもに高度に工業化された国の都市部を中心に70を超えるファブラボがあるが、意外にも、発展途上国にも多くあり、そこでは製造用具や設備へのアクセスは、3Dプリンティング・コミュニティ設立の足がかりになる。グローバルなサプライチェーンに接続していない世界の遠隔地では、単純な道具やモノを製造できるだけでも、経済的福祉が著しく向上しうる。(pp.145-146)
ものづくりには小型工作機械を操作できる知識を有する人からの助言と、製作者が漠然としたアイデアをしっかり具体化させるのを支援するファシリテーションが必要だが、それはテレビ会議システムやスカイプがあれば、世界中から助言を得ることができるだろう。だから、ファブラボは意外とブータンには向いているかもしれない。

その他にも、本書には人々の幸福度に関する示唆があるが、既に冗長になり過ぎたので、記事としてはこれくらいで打ち止めにする。各々の読者が持つ関心事項のキーワードで切り取って再読し、できれば英語でどう表現されているのかもチェックしていけば、ブータンでも結構使える本だと思う。そして、実際に原書との読み比べをやってみて気付いたのだが、訳本と原書との間では、記述内容に相当な違いがあるようだ。本書を話のネタに使いたい場合は、原書の方も要チェックである。

The Zero Marginal Cost Society: The Internet of Things, the Collaborative Commons, and the Eclipse of Capitalism

The Zero Marginal Cost Society: The Internet of Things, the Collaborative Commons, and the Eclipse of Capitalism

  • 出版社/メーカー: St. Martin's Press
  • 発売日: 2014/04/01
  • メディア: Kindle版


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