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借り手に有利な金融制度 [ブータン]

金融セクターで司法の効率性改善をーADB報告書
Improve judicial efficiency in financial sector: ADB
Kuensel、2016年9月16日、Tshering Dorji記者
http://www.kuenselonline.com/improve-judicial-efficiency-in-financial-sector-adb/

民間セクターが金融サービスへのアクセスが成長の制約要因だと巷間指摘されるが、その一方で、銀行側もブータン企業の約半数しか会計士の認証を受けた財務報告書を準備できない今の状況では、キャッシュフローよりも物的担保に頼ることを強いられる―――これは、アジア開発銀行(ADB)が世界銀行の行った調査データをベースにまとめた指摘事項の1つである。

ADBが行った金融セクター開発評価の中で、借り手が債務不履行に陥った場合、銀行は迅速に担保物件の保全措置を取ることができないことが明らかにされた。司法制度が債権者の負担により借り手に便宜を図るような非効率な制度になっているからだという。

例えば、借入人が訴訟手続きに出頭しない場合、裁判所は何ら措置をとらず、単に手続きを先送りするだけである。このため、担保権実行手続きには何年もの時間を要する。借入人が人権委員会に異議を申し立てたために、貸し手側が借入人の実名を公表したことに対して制裁措置を課されたケースもあるという。

「こうしたケースは最も信用力のある借り手を除く全ての借り手に対する与信額を抑制する方向に働くため、間違いなく経済成長にマイナスの影響を及ぼしている。貸し手保護に向けて、借り手の関係者全員が補足されている包括リストのようなものは存在しない」―――報告書はこう述べている。

借金を滞納した借入人は、その配偶者や子ども、その他の家族の名義で新たな与信申請を行うなどして、信用情報をごまかそうとする行為を行ったりもする。

動産法では、借金返済が滞納した場合、その融資に相当する担保の保全措置を貸し手が取る権利が認められている。しかし、同法はその一方で、保全措置をとる場合に貸し手は借入人の許可を取り付けることも求めている。そのような許可は当然認められるケースは滅多にない。

貸し手は、会社法をよく理解している裁判官が少ないことも問題点として挙げている。貸し手は民法に基づき訴訟手続を進める必要があるが、借り手がこの訴訟手続に応じるには6カ月の猶予期間が設けられている。

また、報告書は、自動車ローンは特に問題が多いと指摘する。借入人は貸し手に通知せずに第三者に車両を売却してしまうことがあるという。

ADBは、国会が司法制度の効率性を改善するための法案を成立させるべきだと提言する。信用情報センターが借入人の関係者の包括リストを作り、借金を滞納する借り手が家族や別の関係者の名義で追加的な融資を得る行為を抑制し、貸し手を保護するべきだと指摘する。国家はまた、動産法改正に着手し、その中で担保保全措置の実行にあたって借入人の許可を得ることを義務付けるような措置は廃止するべきだと求めている。

危機管理について、報告書は、王立中央銀行(RMA)が銀行破綻を念頭に置いた危機管理政策を策定すべきであると述べる。これには金融機関もその対象に含めるための破産法の改正も含まれる。政府は預金保険制度を導入し、金融危機の際に預金者の金融機関に対する信用を下支えすることが必要だと報告書は述べる。

報告書はまた、与信は住宅や個人消費にばかり集中しているだけでなく、パロやティンプーに極度に集中している状況を明らかにしている。「RMAは首都圏での住宅信用危機といった、地理的ショックの可能性を検討しておくべきである」と報告書は指摘する。

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2016-9-16 ADB.jpgこの記事の元ネタになっている報告書は、8月22日付でADBがウェブ公開しているワーキングペーパー"An Assessment of Financial Sector Development in Bhutan"のようである。先月公表されているレポートのことを何故9月も中旬になってから新聞が取り上げたのかはわからない。プレスリリースか何かがあったのかもしれない。或いは、ブータンの金融セクター関係者向けの概要ブリーフィングのようなものが行われて、それにクエンセルの記者が参加してたのかも。

僕自身もこの報告書をダウンロードして、ひと通り読んでみた。ブータンの金融制度とその歴史、課題等が網羅されていて、なかなか面白かった。この新聞記事は、そのうち、金融制度の問題点について書かれた章からの抜粋で、まったく同じような記述が頻出する。記事ではこれは世銀のデータから分析したことになっているが、よくよく読んでみると、この世銀のデータというのは投資環境を国際比較したDoing Business調査の2014年版から引っ張ってきている。ただ、この世銀の調査における信用へのアクセスは、民間企業へのアンケート結果から評価されていて、個人の信用へのアクセスについては調査対象外である。このため、ADBの評価結果は、世銀のDoing Business調査とはちょっと違った結論になっているようである。

来週にはブータン銀行の人と会って話す機会があるから、これで話のネタにはできそう。

僕はこちらに銀行口座を開いて、主には家賃の支払いのために小切手を振り出すのに使っている。借入を行うのに銀行を利用したことがないので、記事で書かれているようなことを実体験をもって語るのも難しいが、でも、「そういえば…」というのは多少はある。

例えば、クエンセルを読んでいると、裁判所が特定市民の顔写真まで公開して、いついつまでに裁判所に出頭するよう命令する公告が時々掲載される。興味深いのでそうした公告を読むと、出頭拒否を何度も繰り返しているのではないかと思わせる文言になっていたりする。勿論こうでもしないと居場所が突き止められないという事情もあるのかと思うが、召喚状を登録住所に送付すればそこに住む家族なり親戚なりが対象者にちゃんと連絡を取って出頭させるというのが当たり前のことだろう。それを、この国では新聞への公告掲載でやっている。出頭しろと言われても出頭しないというのでなんとかなってしまうって、どれだけ司法の立場が弱いのだろうか。

また、自動車ローンについても、この国は自動車輸入にかかる関税率がかなり高いのに、ティンプー市内ではランクルタイプの大型RVをやたらと見かけるし、戸建ての邸宅で車が何台も停まっている家も多いので、きっとローンを組んで購入しているんだろうし、名義も世帯主だけではなく、世帯構成人個々人でのローン借入は行われているに違いない。その人物がどこでローンを借りているか、あるいはその人の家族や関係者がどこかでローンを借りていないか、日本だったら個人信用情報センターのような組織が全国銀行協会主導で設立されているが、ここでは民間金融機関の発意でそうした公共サービスを提供するような機関の設立には至っていないので、抜け穴は相当ありそうな気がする。

いずれにしてもこの国も制度構築の途上にあると思うので、所々に問題点が存在するのは仕方がないことだと思う。こういう報告書をベースライン情報として、今後どこがどう改善に向かっていくのか、引き続き見守っていきたい。


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