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『陸王』 [池井戸潤]

陸王 (集英社文芸単行本)

陸王 (集英社文芸単行本)

  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2016/07/08
  • メディア: Kindle版
内容紹介
勝利を、信じろ――。足袋作り百年の老舗が、ランニングシューズに挑む。埼玉県行田市にある「こはぜ屋」は、百年の歴史を有する老舗足袋業者だ。といっても、その実態は従業員二十名の零細企業で、業績はジリ貧。社長の宮沢は、銀行から融資を引き出すのにも苦労する日々を送っていた。そんなある日、宮沢はふとしたことから新たな事業計画を思いつく。長年培ってきた足袋業者のノウハウを生かしたランニングシューズを開発してはどうか。社内にプロジェクトチームを立ち上げ、開発に着手する宮沢。しかし、その前には様々な障壁が立ちはだかる。資金難、素材探し、困難を極めるソール(靴底)開発、大手シューズメーカーの妨害――。チームワーク、ものづくりへの情熱、そして仲間との熱い結びつきで難局に立ち向かっていく零細企業・こはぜ屋。はたして、彼らに未来はあるのか?

この本は、今週一時帰国していれば、単行本を買ってブータンに持ち帰ろうかと思っていた池井戸潤の新刊である。こちらで、ある大物人物と来年3月のブータン国際マラソン(フル)を一緒に走る約束をしてしまった。実際本番まで残り半年となったので、最近になってようやくジョギングを再開した。気分的に盛り上がるには、こういう池井戸さんの勧善懲悪ものを読むのがいいかと思って、ひそかに楽しみにしていた。しかも、今度の作品の舞台がマラソン・駅伝。ランナーのパフォーマンスを下支えする、ランニングシューズに関するお話である。

ところが、楽しみにしていた一時帰国が急にできなくなってしまい、単行本を買ってくる計画も頓挫。でも読みたい気持ちは変わらずで、それならということでキンドル版をダウンロードすることにした。書籍版だと588頁もある超大作だが、電子書籍だとそんなに分厚い本だという印象はなかった。さすがにあっという間に読了というわけにはいかないが、楽しいひと時を過ごさせてもらった。現実逃避とも言えるが(笑)。

実は読み始める直前、僕は10月1日(土)に当地で開かれる12kmのロードレースにエントリーした。普段の練習では5kmしか走っていない人間が、いきなりその倍以上の距離を走るというのだから大変だ。気持ちが焦る反面、ここ2日ほどあいにくの雨で朝方ジョギングにも出かけることができずに過ごしている。そういう時のための長編小説。イメージトレーニングをしつつ、気合を入れるには十分すぎる1冊だ。

埼玉県行田市が足袋製造の集積地として有名だというのは僕も知らなかった。割と近くに住んでいたことがあり、行ったこともあるけれど、国道17号線で通過しただけである。ただ、足袋製造のような伝統産業から、今の時代が求めるような新しい商品開発に向かっていく中小企業の姿を描くのに、行田という土地はなかなか立地も良い。

1つには、実業団の陸上選手を絡めたことにより、毎年元日に上州路を走る実業団日本一決定戦「ニューイヤー駅伝」を舞台として使いやすくなった気がする。だから、こはぜ屋のプロジェクトチームの面々は前橋まで応援に行きやすくなった。

もう1つは、これは意外なことに、新開発ソールの素材として繭に目をつけたという点。これまた上州のお話になってしまうが、元々は養蚕が非常に盛んだったこの土地も、今や養蚕農家は激減し、風前の灯となってしまっている。元々マラソンの方に興味があって読み始めた作品だったとはいえ、意外なところから養蚕の話が登場して、昔一時期猛烈に蚕糸業の勉強をしたことがある身としては、感激しないわけがなかった。

こういう形ででも、昔の産業が見直されるのは喜ばしいことである。こういう小説がきっかけとなって、繭の利用法の新たな展開が見られるようだととても嬉しい。

さらに付け加えれば、行田にはものつくり大学が立地している。おそらく池井戸さんも取材等で足を運んだことがある教育機関だったのではないかと思う。実業団陸上競技部の合宿も、高崎線沿線には多くあると聞く。

さて、本作品を読んでいくと、ニューバランスのシューズの出発点がケガの少ないシューズの製作というところにあったという一節が出てきて、妙に納得してしまった。日本に住んでいた頃、僕自身の愛用していたシューズもニューバランスだった。ソールが薄めでしかも傾斜があまりとられておらず、作品で出てくる「足の裏全体で着地」するのに近い感覚で走ることができるシューズだった。

一方で、僕は昔愛用していたのは、本作品の「アトランティス社」のモデルじゃないかと思われるA社のシューズだった。1990年代前半に僕がかなり走り込んでフルマラソンやトライアスロンにガンガン出ていた頃は、A社のシューズは本当に良くて、モデルチェンジされた後でも前のモデルがいいと思ったらディスカウントのシューズをわざわざ購入して、長く愛用するということもやっていた。その時の好感触が記憶にあったため、最近また走り始めた際にA社の当時のモデルの最新版を購入したのだが、1週間もしないうちに、自分の足に合わないと断じることになった。ジョギングしていて両足の親指の爪が死んでしまったのである。それもあってA社製シューズに不信感も持ち、ニューバランスのシューズを新調したのである。

それでもブータンにそのA社のシューズを持って来たのは、高地で走ることができるかどうか自信がなかったことと、仮に走れたとしてもそんなに距離は積めないだろうし、アップダウンもあるからソールが厚めのシューズの方がいいかもと判断したからだ。こちらで履き倒すつもりで持ってきたのである。来週末の12kmロードレースに向け、ジョギングを重ねていきたいところなのだが、このシューズを履いて走っていて、今度はかかと部分に靴擦れを二度にわたって起こした。このシューズとはつくづく相性が悪い。なんだか、A社のシューズって、昔の履き心地とはちょっと変わっちゃったなと思う。

別にアトランティス社が今のA社の内実だというつもりはないが、自分の足に本当に合ったシューズを探すには、ブランドから入っちゃダメだというのが僕の教訓である。

それにしても、この本のタイトル、陸上競技用足袋の新ブランドとして名付けたものだが、なんだかあの大学を連想してしまわないか? そういえば、池井戸さんも「陸の王者」出身だったなぁ(笑)。
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