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労働市場の大きな課題 [ブータン]

15日から22日まで一時帰国しておりました。スマホの操作を誤り、その間ネットにほとんどつながらず、限られた滞在期間の中で目いっぱいの予定を入れていたので、自宅でPCの前に座ることもほとんどありませんでした。当然、その間にブータンで起こった出来事についても全くフォローしていません。本も読んでないので、とにかくブログ更新するネタもなく、また更新している時間もありませんでした。今、再び単身赴任生活に戻り、1週間分の新聞のまとめ読みを始めたところです。気になった記事は少しずつご紹介していきたいと思いますが、これから12月初旬まではいろいろ行事も立て込んでいるので、かなりゆっくりしたブログ更新になっていくかもしれません。

民間セクターの未発展が課題:世銀報告書
Bhutan’s private sector underdeveloped: WB
Kuensel、2016年11月17日、Younten Tshedup記者
http://www.kuenselonline.com/bhutans-private-sector-underdeveloped-wb/

【ポイント】
世界銀行は16日、ティンプー市内で『ブータンの労働市場:全ての人が裨益する質の高い雇用の創出に向けて』と題した報告書を発表した。報告書は公的セクターの仕事が全体の20%を占め、非農業部門での雇用機会(労働者数の43%)のほぼ半数を占めるという現状を明らかにし、こうした状況は、公的セクターでの就業機会に過度に依存する求職者の需要と選好にもよるものだと指摘、この傾向は特に若者と高学歴者に強く、結果として彼らの高い失業率を招いている。

公的セクターでの就業は、比較的安定していて給与水準も高く、さらなる教育機会や社会保障プログラムへのアクセスにも恵まれている。このため、就業者の年齢層は比較的若く、高学歴で、生活水準も高く、都市部に住む人々の就業機会を提供している。公的セクターの被用者の48.3%は15歳から34歳までの年齢層に属する。55歳以上の被用者は5.5%。また、大卒の被用者の66%は公的セクターで就業機会を得ている。非農業民間セクターの雇用の52.4%、民間セクター(註:ママ。農業セクターの間違い?)の98.4%は地方での雇用だが、公的セクターでの就業機会の3分の2(67.4%)は都市部であった。

世界的に見れば、民間セクターこそが雇用創出のエンジンとなるべきであり、新規雇用の9割は民間で創出されている。世銀報告書は非農業民間セクターの発展こそが成長、開発、雇用創出の重要なエンジンであり、それによって企業の生産性向上や被用者の生活水準の向上、被用者の保護の進展にもつながると主張。

報告書は、ブータンの労働市場を3つのセクターに分けて分析。①公的セクター、②非農業民間セクター、③農業セクター。

農業セクターは、そのウェートが低下しつつあるとはいえ、依然として大きく、今後も雇用吸収力のあるセクターとして君臨する。2014年時点で、57%の労働者が農業セクターで就業。

非農業民間セクターは、他の2つのセクターの狭間で苦戦。高学歴労働者を巡っての公的セクターとの競争にさらされる一方、費用ベースが高いわりに生産性が高くないという状況に苦しんでいる。現状ブータンの雇用の4分の1程度しか吸収できていない。

報告書は、公的セクターの規模が大きすぎることは、ブータンのような内陸の小国で、民間セクターの発展が比較的遅れている国では特に大きな問題であると指摘。セクター間のバランスの包括的な再構築の努力が必要だと述べる。これは公的セクターの機能を縮小するのではなく、民間セクターの発展を促進する取組みによって進められることが必要だとする。

ブータン労働人材省が行った第13回全国労働力調査によると、ブータンの2015年の失業率は2.5%だが、若年労働層の失業率は10.7%と高い。世銀報告書はこのため、メンテナンスやITサービスといったノンコアな政府活動のアウトソーシングを進めることを提言、これは民間セクターでの雇用創出のみならず、政府支出の効率化にもつながると推奨する。

加えて報告書は、非農業民間セクターは、より予測可能性が高くてシステマチックな外国人労働力へのアクセスの保証も必要だと指摘している。

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要約といいつつ、長い文章でごめんなさい。

この報告書は、今年6月にドラフト段階のものを一度読んだことがあるので、世銀の報告書ローンチングについては、新聞記事でしかフォローしていません。というか、そもそも一時帰国中でいなかったわけですが。

世銀やアジア開発銀行といった国際機関が強いなぁといつも感じるのは、こういう報告書を作って文章で説得できることである。実施するには多くの費用がかかるだろうが、ブータンは易々とはお金を借りてくれない国なので、国際開発銀行としてはなかなか貸付を通じた事業規模の拡大は難しい。その代りに、こういった調査報告書を時々公表することで、その国の実態を明らかにして、政策につなげていくという、ある意味では費用対効果の高い活動をされていると思う。僕らが普段感じていることであっても、こうしてデータとして示されると改めてわかりやすいし、説得力もある。日本も地道に協力していれば評価をされる部分もあるが、こんなに大規模なレポートでなくてもいいので、長年ブータンに対して協力してきた経験から得られる示唆をまとめてポリシーブリーフのようなものを出せたらいいのではないかと改めて思う。

世銀報告書で指摘されている内容は、ブータンをよくご存じの読者の方々なら、普段ブータンと接していての肌感覚と非常に合う内容で、それほど違和感はないだろう。若者が都会に出てきて、すぐに公的セクターでの職にありつけなくても、クエンセルの求人欄を見てせっせと応募書類を出し続ける、村に帰ってきつい農業をやるよりも、郷里出身の知り合いを頼って都会に出て、ひたすら政府での雇用機会を待ち続ける方がまだまし―――というのは周りにもいそうな話である。

一時帰国する前に、僕はプンツォリンの科学技術単科大学を訪ねる機会があったが、その際、ここで学んだことを生かして民間企業で就職するか、起業を考えるかよりも、学んだことが直接生きなくてもいいから、政府で働きたいという学生の考え方を聞いて、大きな衝撃を受けた。ブータンの工学教育を担うこの大学にしてこんなマインドセットの学生を輩出しているというのだから…。

だから、世銀報告書で書かれている提言は、その通りかもしれないのだけれど、サプライサイドから民間セクター開発を進めるだけではなく、若者のマインドセットをどう変えて行ったらいいのかについても考えるべきだと思いながら、新聞記事は読んだ。体を動かすような仕事がクールじゃないと思っている若者の意識の変革は、容易なことではないと思う。

一方で、記事の最後に示されている、外国人労働力の雇用の柔軟化は、一見すると「???」で、そこまでの論調とはちょっと脈絡にも欠けているようにも思うので、少しだけ補足しておくが、2015年12月に改定されたブータン政府の入国管理政策では、外国人の就労許可は最大3年までしか出ない。その後最低でも6カ月国外に出ないと、再入国を認めてもらえないことになっている。これは結構厳しい制度であり、これじゃこの国で会社設立などして長期にわたってビジネスを展開しようという外国企業はなかなか出てこないだろうし、クーリングオフ期間が過ぎれば戻って来れるじゃないかと言われても、それが6カ月もあったら、その人個人で見ても、その人の雇用者の立場で見ても、6カ月を越えたより長期の人材活用策を考え、ブータンには戻って来れなくもなるだろう。

様々な助成制度や優遇措置で、民間企業の投資環境を整えました、起業しやすい環境を整えました、というのは1つの政策だが、こうして見ていくと、大学を含めた教育政策や、入国管理政策等との連携も考えておかなければならない課題のようにも思えてくる。問題の所在を理解するにはこの報告書は有用だが、報告書の提言を越えた具体的な取組みは多方面に及ぶものなのだろうなというのが今思うところだ。

*この世銀報告書については、世銀HP上でも紹介されているので、ご興味ある方は本文も読んでみて下さい。
http://www.worldbank.org/en/news/press-release/2016/11/17/addressing-labor-market-challenges-unlocking-private-sector-growth#
タグ:雇用 失業 世銀
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