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『江戸を造った男』 [伊東潤]

江戸を造った男

江戸を造った男

  • 作者: 伊東潤
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2016/09/07
  • メディア: 単行本
内容紹介
伊勢の貧農に生まれた七兵衛(後の河村瑞賢)は江戸に出て、苦労の末に材木屋を営むようになり、明暦3(1657)年、明暦の大火の折に材木を買い占めて莫大な利益を得る。やがて幕府老中の知遇をえて幕府の公共事業に関わっていく。日本列島の東廻航路・西廻航路の整備や全国各地で治水・灌漑・鉱山採掘などの事業を成功させた。新井白石をして、「天下に並ぶ者がない富商」と賞賛された男の波乱万丈の一代記。作家生活10周年記念作品。

最近、小費を惜しまず大計を論じる典型的な人に会った。日本人である。世のため人のためを考える、マズローの欲求5段階説の実は6段階目に相当する「自己超越」欲――すなわち、「見返りも求めずエゴもなく、自我を忘れてただ目的のみに没頭し、何かの課題や使命、職業や大切な仕事に貢献している状態」というのにある人であった。僕のように、家族を大切にとか、自分もやりたいことがあるとか、第2段階から第5段階までを行ったり来たりしている人間には容赦なく、「それじゃダメだ」と否定される人であった。みんながそんな境地になれるなら世の中はもっと良くなっていると思うと失笑もするが、すごい人だと率直に思った。その人にご家族があるのかどうかは聞かなかったが、いるとしたらご家族の寛容ぶりもすごいと思う。

本書の主人公の河村瑞賢って、そんな人だったようだ。多分にフィクションは入っているかもしれないが、何せ自分がやってきた土木工事、航路開拓、治山治水事業、鉱山事業等の知見を、第三者に話して記録に残させた人である。その中には自身もその場に居合わせていた新井白石等もいて、それなりに信憑性の高い伝記が今に残っている。こういう17世紀の公共事業の記録が文書として残っているというのが日本のすごいところだと思う。ただ、それ以前の土木工事の記録を残していたという点では、中国もすごいと思うが。その中国の知見を参考にしつつ、自国での特定の事業の文脈に落とし込んで新たなイノベーションを起こしていったところに、河村瑞賢のすごさもある。

500頁を超える大作だが、読んでただただ感銘を受ける。82歳まで生きた人だ。当時の平均寿命を考えれば大変な長生きだった人で、それだけに残した功績も1つや2つではない。江戸幕府もよくこれだけ次から次へと難題を与えるものだと思うし、それを次から次へと河村瑞賢も片付けていったものだなと思う。この人が長生きして様々な功績を残していったことが江戸幕府にとっても、同じ時代を生きた多くの人にとっても幸せなことだったに違いない。

一方で、読みながら、この本、誰か英訳してくれないかなとも思った。

「何か新しいことをやろうとすれば、問題が次々と出てくるのは当然である。それを地道に片付けていく根気があるかどうかが、成功者と失敗者を分ける」、「いかなる難題も知恵を絞れば解決できる」なんて、ブータン人に対するいいメッセージになる。よく言われることとして、ブータン人は新しいもの好きだが、問題があると諦めるのも早い。手足を動かして泥臭い仕事をやるのを厭う。問題解決において、自分たちにはカネがないこと、知識がないことを解決できない理由にしたがり、外国の知見や技術をそのまま受け入れたがる。自分で調べて、自分で試行錯誤する、自分でPDCAサイクルを回せないといったことがある。

外国の技術に全幅の信頼を置き過ぎていて、本来なら自分たちでやらねばならないことをやらずに放置してしまう。壊れれば再び外国の援助に期待を寄せるというところもある。瑞賢の功績として知られる河内平野の治水工事だって、瑞賢ははっきりと治水事業における補修・維持管理の必要性を認識し、それを大坂城代に書き残しているが、結局治水補修細目に基づく維持管理がなされたなかったために、再び河内平野を水害の危険に晒すことになってしまう。

こういう漢が既に17世紀にいたことが、日本の経験してきたことなのである。そして、当然ながらその漢の忠告を聞かずに放置することで失敗を招いたことも、日本の経験である。こういうのを知ってもらうのも、なまじ外国人コンサルタントがこれからやるべきことをいろいろレポートに書いて残していくよりも、よっぽど本質的に大事なことを伝えられるような気がするのである。「人に「働け」と命じても、人は動かない。心地よく働ける仕組みや状況を作ってやれば、人は自ずと働く」とか、「人と人が力を合わせれば、どんな仕事でもできる。それぞれの力を存分に発揮させることが、わいの仕事だ」なども、組織を預かる立場になったら、常に肝に銘じておかなければならない格言であるように思う。

ホント、これ英訳できないですかね?

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