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『作ることで学ぶ』 [仕事の小ネタ]

作ることで学ぶ ―Makerを育てる新しい教育のメソッド (Make:Japan Books)

作ることで学ぶ ―Makerを育てる新しい教育のメソッド (Make:Japan Books)

  • 作者: Sylvia Libow Martinez、Gary Stager
  • 出版社/メーカー: オライリージャパン
  • 発売日: 2015/03/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容紹介
本書は、教育の新しい潮流として注目されている「STEM教育」や「プログラミング教育」に携わる教育者のための書籍です。まずは基礎編として、テクノロジーを活用した教育の歴史と「構築主義」などの教育理論、学習のためのデザインモデルを解説。その上で実践編として、Arduino、Raspberry Pi、3Dプリンター、Scratchなどのハードウェア、ソフトウェア双方の学習素材の紹介、授業を行うための環境の整備、カリキュラムの作成と評価の方法、生徒との関わり方などを詳しく解説し、新しい分野に取り組もうとする教育者をサポートします。企業内ラボ、Makerスペースの運営者にもおすすめです。日本語版では、監修の阿部和広氏による日本の“作ることで学ぶ”教育の歴史と現状についてのまとめと日本国内の情報源の追加を行いました。

年末年始のお休みも今日2日が最終日。幾つかの「持ち帰り残業」をカバンの中に入れて休暇入りしたが、結局のところその作業に十分な時間を割くこともなく、最終日の夜を迎えている。現実逃避したい気持ちもあり、それでもボーっとしているのはいけないと思い、数週前から読み始めて未だ90頁程度しか読めてなかった本書を、とっとと読み進めることにした。本来この休暇中に着手するつもりでいた論文執筆も、本書がその参考文献の1冊になり得るかも、という後から取って付けたような理由で、後回しにしてしまった次第。それでも、元々360頁以上あるA5判の分厚い本だから、結局読み切るまでに半日以上かかってしまった。

この本は、米国を舞台にして、小学校から中学、高校に至る過程で、学校において「ものづくり」を学ぶ意義と効果、それに学習促進のための手法について詳述されている1冊である。内容的には米国だけでなくどこの国にも当てはまる普遍性はあるように思えるが、こういうメイカースペースを学校に付設して地域コミュニティの中心に据えるという発想や、資機材の整備にあたって父兄や地域コミュニティからの寄付を募ったりしてしっかり資金動員が図れるという状況は、米国ならではであるような気がする。寄付文化が米国ほど根付いていない日本で同じことをやろうとしたら、政府からの助成金で賄わねばならない部分が相当多いような気がする。こういうのを「スーパーサイエンスハイスクール」指定校で導入しているところは、ひょっとしたらあるかもしれない。

同じことがブータンでできるかと考えると、同様に寄付文化がなく、しかも国家財政も外国からの援助に相当依存している中ではやっぱり難しいんじゃないかとも思える。勿論、僕らでも手が出せないような高価なランクルを購入して乗り回せる人がいるくらいだから、一部の公共心の強い高額所得者や開明的な私立学校の経営者当たりがこうした発想に興味を持ち、実現に向けて邁進してくれれば、1校ぐらいのモデル校は意外と早く表れるかもしれないという期待はある。あるいは、こういうアプローチのメリットを理解している外国の援助機関ないしはメイカースペース運営主体が、使途を紐づけして資金提供してくれたら、実現できるかもしれない。

ブータンの文脈において、本書の論点でよくわからなかったのは、それが小中高校へのメイカースペース付設という前提で書かれている点である。それが大学や職業訓練校に付設されていたらどうだろうかという考察が、本書にはあまりなく、訳者あとがきで日本では大学で同様の取組みがなされている点に少しだけ言及されている程度である。ブータンでは、そもそも高校卒業して大学や職業訓練校に進んだ生徒も、小中高校時代にものづくりの経験などしたことがない。日本でも、僕らが小中学生だった頃は技術家庭科ではんだごてや糸のこぎりを製作し、電動糸のこ盤を使ってベニヤ板やアクリル板を切ったり、ミシンを使って縫物をしたり、刺繍・裁縫をやったりと普通にしてきた。人によってはプラモデルで手作業に習熟するケースだって多かっただろう。今の日本では、少なくとも僕の子供たちを見ている限りでは昔ほど手を動かす作業を学校でやらなくなってきているように感じるが、それ以上に経験に乏しいのがブータンの子供たちである。

だから、いきなり小中高校への導入という発想よりも、ひょっとしたら先ずはそうした小中高校生が卒業して向かう先にメイカースペースを設置する方が先決かもしれないという気がする。デスクトップ工作機械を操作してものを作る経験を積むことで得られる、著者が言うところの「エンパワーメント」は、もし職業訓練校の生徒でも味わうことができれば、長年にわたって職業訓練教育の課題と言われてきた「生徒の劣等感(スティグマ)」のブレークスルーにもつながる可能性がある。勿論、大学生だってデスクトップ工作機械とは無縁だったわけで、両者は同じ土俵の上に立てるだろう。そこから何を作り出すのかという点で違いはあるのかもしれないが。

要すれば、本書に記載された内容を、大学や職業訓練校に置き換えて考えてみても、やはりかなりの部分は適用可能だと思う。原書では252頁ほどだが、それに監修者が日本の読者用に追記した参考資料リスト等も加わっているので相当重い本になっている。でも、そうした編集のお陰で、この本は実際に教育機関でのものづくりを考える上で、今参考となる情報がかなり網羅的に盛り込まれており、後から何度でも必要な該当箇所を読み直すという形で活用可能だろうと思う。

一方で、いくつかの重要な気付きもあったので最後に付記しておきたい。

第1に、どこの教育機関にメイカースペースを設置するにしても、生徒のものづくりへの没入を授業時間の枠内に押しとどめるのは不可能であり、そのためにも、メイカースペースはいつでも利用可能な形でオープンにしておく必要があるという点。休み時間や放課後であっても施設の利用が可能どいう形での措置が必要で、本書の中には図書館への併設等にも言及されている。この点は、今ブータンで有志が作ろうとしている「ファブラボ・ブータン」1号施設の課題でもある。ファブラボ・ブータンは労働人材省認可を受けた教育機関として立ち上げが模索されているが、手数料を取って限られた時間のみアクセス可とする職業教育だと、その時間内で完成できなかったものをどうするのか、他の職業訓練科目との兼ね合いや、誰でも利用可能なオープンな時間帯の設定の仕方、立地条件など、いろいろ考えなければならない点が出てくる。

第2に、教える側が身構えて、自分が工作機械などの操作法を習熟するまでは導入できないとする発想自体が違う、自分も生徒と一緒に考えるような立場に身を置き、生徒たちに任せておけば、できるようになった生徒ができない生徒にアドバイスするというようなピアの学習が自然発生すると描かれている。

僕は先月3Dプリンターを購入し、2017年の達成目標の1つに「3Dプリンターの操作方法のマスター」というのを掲げている。未だ購入したばかりで、今はようやく組立てを終えて、自分のPCに必要なソフトをインストールしたばかりの段階だが、既に僕のまわりに「使わせてくれ」と言ってる奴が数名おり、その前に僕自身が操作方法をマスターしないといけないとかなり焦っているところだった。そんな中で本書を読み、得た大きな学びは、取りあえず1つオブジェクトを作れるよう操作法を学べたら、次のステップはこの3Dプリンターを関心ある人々に開放し、一緒にワイワイがやがややりながら考えていろいろなものを作っていく、その過程でさらに操作方法に習熟していくというプロセスであってもいいのかなという気がした。

2016-12-31 3DPrinter.jpg
《これを仲間と共用してともに学んでいくのが今年の課題》

第3に、本書を読んでいたら超小型PC「Ruspberry Pi(ラズベリーパイ)」を買ってみたくなった。30ドル程度だというし。今予定している2月の帰国は、日本での滞在期間が3週間もあり、1つの大きなチャンスかもしれない。ラズパイをブータンに持ち込み、その辺にあるキーボードやディスプレイをつなぎ、ラズパイを格納できるボックスを手持ちの3Dプリンターで作り、「ハイ、PC一丁上がり!」となったら、どんな化学反応がブータン人の間で起きるか、考えただけでもワクワクしてきた。

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