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『国土計画の変遷』 [持続可能な開発]

国土計画の変遷―効率と衡平の計画思想

国土計画の変遷―効率と衡平の計画思想

  • 作者: 川上 征雄
  • 出版社/メーカー: 鹿島出版会
  • 発売日: 2008/04
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
国土計画の新たな根拠法である国形法が施行され、新しい国土計画の枠組みができた。人口減少・高齢化社会を迎えるに際して、わが国の国土計画の経緯を回顧し、その中に見られる計画思想の変動について論じている。

知人から薦められていながら長らく読めなかった本である。著者は日本の全総策定を、国土庁、国土交通省の中から見て来られた方であり、中から見られていることもあってか、その時々の政策に関する重要な意思決定の節目で誰がどんな発言をしたのか、書かれていたりもする。

本書の内容だが、はっきり言ってしまえばサブタイトルが全てである。歴代の国土計画が効率性重視と衡平性重視との間で交互に繰り返されてきたという点が明らかにされている。また、国土の開発への重点から、国土の有効利用というところに重点が移ってきているという点も指摘されている。

以前、本間義人『国土計画を考える』をご紹介した時にも書いたが、日本の国土計画には負の側面も相当大きい。本間氏の著書が1999年発刊で既にこれだけの批判が出ていたのに、さすがに国土計画策定の当事者側に近い川上氏の著書では、発刊が2008年と比較的最近ではあるものの、批判的というトーンはさほど強くはなく、全総も回を重ねるにつれそれ以前の全総で出てきた課題に対処するための新たな方策を盛り込んできたという形で書かれている。それが結果的に経済成長重視と衡平性重視との間を行ったり来たりする結果になっているようにも見えるのだけれど。

さて、前述の本間氏の著書を紹介した際にも少し触れたが、ここブータンでも国土計画を策定する動きがあり、これをJICAが支援しようとしている。当然失敗も含めた日本の経験を踏まえた計画策定支援になってくるのだと思うが、これについて、2月4日付けのクエンセルで記事が出ていたのでご紹介する。引用しておく。

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全国総合開発計画策定プロジェクト
Project to formulate comprehensive national development plan
Kuensel、2017年2月4日、Tempa Wangdii記者
http://www.kuenselonline.com/project-to-formulate-comprehensive-national-development-plan/

2017-2-4 Kuensel.jpg

2月4日のクエンセルは、王子様の1歳の誕生日を翌日に控え、祝賀ムード一色の紙面構成となっていた。各省庁や企業が誕生日をお祝いする広告を載せまくり、さらには十数ページはありそうな写真集まで付録で付けている。大盤振る舞いである。

そんな中で、このプロジェクトの第1回ステアリングコミティの記事は1ページ丸々使って大きく取り上げられている。このステアリングコミティは、議長がGNH委員会の事務次官で、ブータン政府側のメンバーも、公共事業省事務次官、国土地理委員会長官、国家環境委員会長官、農業省事務次官、経済省事務次官等が名を連ねる。これだけの高官を一堂に集めるのは大変で、都合がつかずに代理を立てた方もいらっしゃったようだが、それでも十分ハイレベルだ。

ブータンは森林面積が国土の72%を占め、森林限界よりも標高の高い地域もあることから、実際に土地利用を考えることができる面積は10%もないらしい。それを、農地だ宅地だ工業用地だと、各省庁の縦割りの施策で奪い合っている。省庁間の横の連携はまだまだ少ない。だから、これらの利害を調整して1つの計画の下で整理しようというのが今回の全国総合開発計画ということになる。

日本の全総は1962年にスタートした。これは、所得倍増計画(1960年)実現のための具体的手段と見られており、全総をベースにして、全国でも地域開発計画が策定され、多くの国土開発のベースとなった。こうした全総については、多くの日本人が知っており、僕らは少なくとも高校時代、政治経済の授業で習っている。それくらい、全総は教育カリキュラムの中にもビルトインされて、僕らは知っているのである。

こうした日本の経験は、ブータンにも多くの示唆を与えると思う。

第1に、五ヵ年計画との整合性である。今回の全国総合計画の策定は、同時に進行している第12次五カ年計画の策定プロセスを横目に見ながらの作業となるが、五ヵ年計画が5年間という、比較的短い期間での目標達成を目指すものであるのに対し、全総は15年間での目標達成を目指すものだ。従って、目標達成期間に大きなミスマッチも存在する五ヵ年計画の枠組みを超えて、長期的にこの国をどういう姿にするのが望ましいのか、ビジョンが問われる。

第2に、全ての開発事業がここから始まるということは、国際援助による開発事業の将来案件も、ここから生まれてくるということである。

第3に、多くの人々がこの計画にオーナーシップを持ち、計画を知る必要がある。通常の日本の協力では、調査チームが最終報告書を作成し、ブータン政府側に提出して作業が終わりとなるが、この計画はむしろブータン政府側がどう使うかが非常に重要となる。どうやって一般市民にも周知するのか、それをちゃんと政府関係者がオーナーシップを持って語ってくれるのか、それが問題となる。

日本の経験といっても、既述のように、全総には批判も多い。地域格差が拡大し、東京への一極集中を進める一方で、農村部では過疎や限界集落の問題を起こした。1970年代には狂乱物価や環境破壊を誘発し、1980年代後半にはバブル経済を引き起こした。そうした負の経験も、ブータン政府は知る必要があると思う。

でも、このブータン政府がやろうとしている全総には大きな可能性もあると思う。それは、2016年から目標達成期間が始まっているSDGsとほぼ重なる形での国土計画の策定であるからだ。SDGsとほぼ同期間であるということは、この全総にはSDGsが持っている基本理念や具体的な達成目標との整合性が当然求められる。それは、①格差を抑制し、誰も取り残さないこと、②持続可能性の3つの要素(経済、社会、環境)のバランス、③目標間の相互連関性を踏まえ、省庁の垣根を越えた多面的なインパクト、④所得に代わる新たな成果計測の枠組みとしてのGNH等を考慮するということである。

それらを踏まえた国土計画が策定されれば、「持続可能な開発」の時代に、世界に範を示すグッドプラクティスとなり得ると思う。それぐらいの気概を持って、この開発計画は策定されなければいけない。

タグ:ブータン JICA
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