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『アメリカは食べる。』 [読書日記]

アメリカは食べる。――アメリカ食文化の謎をめぐる旅

アメリカは食べる。――アメリカ食文化の謎をめぐる旅

  • 作者: 東 理夫
  • 出版社/メーカー: 作品社
  • 発売日: 2015/08/29
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
アメリカじゅうのどこの食堂でも朝食のメニューの中身がほとんど同じなのはなぜか? アメリカ料理に季節感や地方色が希薄なのはなぜか? アメリカに醗酵食品が少ないのはなぜか?…移民国家として独自の文化を築き上げたアメリカ合衆国の食にまつわる数々の謎を、アメリカ文化に精通した著者が、みずからの旅を通じて一つひとつ紐解いていく。食の百科全書!

今回の一時帰国の往路、最初の本を読み終わり、次に手を付けたのが本書である。736ページと大部な1冊を、そもそもなんで米国と縁もゆかりもない、国交すらないブータンに持って行っていたかというと、昨年4月の赴任の直前、義理の父から「読んだら」と餞別代りに手渡されたからであった。

なんで義父がこの本を僕に渡されたかというと、学生時代の僕の留学先がルイジアナ州であり、本書の中でも度々取り上げられる、ガンボーやジャンバラヤ、ボー・ボーイ、グリッツといった南部ならではの料理を、半ば日常的に食べていたことを、義父はご存知であったからだろうと思われる。僕がこのブログを始めたのは今からちょうど12年前であるが、ブログが急速に普及する以前、僕は米国に3年間駐在した経験があり、その時にも義父は僕らを訪ねて米国に来られ、その際にニューオリンズからミシシッピー・リバーロードのプランテーションを旅した。そうしたご記憶もあっての、本書の推薦だったことだろう。

もう1つ理由があるとすれば、義父が僕の愛読書をご存知であったのかどうかはわからないが、ロバート・B・パーカーの有名な「私立探偵スペンサー」のスピンオフで、早川書房が出した『スペンサーの料理』(馬場啓一との共著)というのがある。一時期まで僕は盲目的にスペンサーのシリーズを読んでおり、米国駐在時代に米国で飲めるビールを片っ端から飲んで寸評をウェブに書いていた際も、『スペンサーの料理』のお酒の章は参考にしていた。そのウェブサイトの読者でもあった義父が、東理夫をご記憶であったとしても、何ら不思議ではない。むしろありがたいお話である。

ありがたいことに、僕は縁あって米国では通算4年間生活し、その間に多くの土地を訪ねることができた。前述のケイジャン、クレオール料理に限らず、ステーキやクラムチャウダー、いろいろな土地のハンバーガー等を食べている。スーパーマーケットの惣菜コーナーでのサラダの量り売り、テキサス州南部のバス旅行中に味わったチリ・ビーンズ、ワシントン駐在開始後すぐに連れて行ってもらったムール貝のワイン蒸し等、その時その時の記憶が蘇ってきて、自分の米国生活を思い出しながら楽しく読んだ。直接的に食べ物の話題ではないが、風景として思い出したのが、ニューメキシコ州アルバカーキの夜景、バージニア州シャーロッツビルにあるジェファーソン大統領の邸宅モンティチェロ、そしてミシシッピー州ナッチェスのプランテーション、それにアーミッシュの人々が古くからの暮らしを今も守り続けているペンシルベニア州ランカスターの田園風景等であった。

僕の知人で、今もワシントンに住み、米国のおいしい料理についてブログで情報発信を続けている方がいらっしゃるが、この本はそういう方にはおススメだ。700ページ以上あると、通読で読んでも、結局覚えきれなくて、後で何かの機会にもう一度該当箇所だけ読み直して、自分の体験を裏付けてみたり、或いは、それをこれから体験する場合には蘊蓄を語ってみたりするのにはいいだろう。そういう読み方に向いている本だと思う。

通読に向かないと思った理由は、本書が何かの連載だったのか、何の脈絡もなく話が飛ぶケースが相当多かったことにもよる。立ち止まって今どこにいるのかを確認するのも大変だったが、そればかりじゃなくて、突然紀行文になったり、かと思うと突然歴史解説になったり、著者の動き方が激しい。それに、700ページもあるからやむを得ないと思うが、校閲が不十分で誤植が目立つ。その辺は大目に見てねということなのかもしれないが。

僕にとっては今住んでいる狭小な山国ブータンの全土踏破すら達成するのが怪しいのに、この著者のすごさといったら、あれだけ広大な米国を、やたらと旅しておられる、しかも、何らかのテーマを持った車の旅を頻繁にしておられる点にある。羨ましいったらありゃしない。でも、僕が著者と同様に時間を十分与えられていたとしても、こういう旅はそうそうできなかっただろうし、行く先々で目的地を決め、それに関連する情報を地元のお店のレジまわりのタウン誌や地元の公立図書館で調べるという徹底した姿勢は、見習おうにもなかなかできることではないと思う。

僕も今では50代も半ばに近づき、これからどう考えたって米国を長期旅行するような機会は訪れない、むしろ僕の子どもたちにその夢を託さねばならないような時期を迎えていると思う。僕が学生時代にお世話になった方々は次々と鬼籍に入られ、留学先で今でも訪ねていける知人は2人しかいない。30年前に旅先のフレンチクォーターでたまたま相席した、アイオワから来られていた若いご夫婦は、今では孫に恵まれたおじいちゃんおばあちゃんである。

ただ、悲しいのは、トランプ氏を大統領に選んでしまった今の米国だ。本書を読むと、そもそもが米国の料理は、最初、欧州から新天地を求めて渡ってきた移民が、祖国でふだん食べていた料理を、新世界で入手可能な食材を使って作ろうと試みたところから始まっているケースが多く、移民のバラエティとともに食の多様性も形成されてきたとある。そういう歴史的経緯をさて置いて、人の移動に制限を設けようとする今の政権、それをある程度受容してしまっている社会が悲しい。

最後に、東理夫の著書を調べていたら、『スペンサーの料理』以外にも、僕は1990年代に2冊読んでいることを確認した。いずれも紀行文兼エッセイという趣だったと記憶しているが、自宅の蔵書の山の中に紛れていると思うので、機会があれば読んで紹介してみたい。

スペンサーの料理

スペンサーの料理

  • 作者: 東 理夫
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 1985/08
  • メディア: 単行本

ケンタッキー・バーボン紀行

ケンタッキー・バーボン紀行

  • 作者: 東 理夫
  • 出版社/メーカー: 東京書籍
  • 発売日: 1997/07
  • メディア: 単行本

ルート66―アメリカ・マザーロードの歴史と旅 (丸善ライブラリー)

ルート66―アメリカ・マザーロードの歴史と旅 (丸善ライブラリー)

  • 作者: 東 理夫
  • 出版社/メーカー: 丸善
  • 発売日: 1997/11
  • メディア: 新書


タグ:米国 東理夫
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