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『地方からの国づくり』 [仕事の小ネタ]

地方からの国づくり

地方からの国づくり

  • 作者: 平山修一・永井史男・木全洋一郎
  • 出版社/メーカー: 佐伯印刷
  • 発売日: 2016/03/05
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
アジア通貨経済危機以降、民主化とともに地方分権への動きを強めるタイ。日本は世界でも有数の地方自治先進国である。そのノウハウを援助リソースとして、タイの地方自治を支援することはできないだろうか―。“ガバナンス支援”という新たな途上国支援の道を拓くため、学識者と日本の地方自治のエキスパートたちはタイへ飛び立った。

一時帰国も終盤にさしかかってきて、再渡航の際に携行する物資の買い出しに追われる一方、絶対にブータンに持って行かないとわかっている本の読み込みとブログへの感想アップも、時間を見つけてはシコシコやっている今日この頃である。

今日ご紹介する本も、発刊直後に入手はしたが、読んでいる時間が現地で作れず、未読のままに本に持ち帰ったもの。読了すればブータンに再度持って行くような愚行は避けたいので、2日で読み切った。

読みやすい本だった。日本だったら当たり前のように行われている自治体間協力が、タイをはじめとした開発途上国では当たり前ではないらしいというのに気付かされた。小さな自治体が単独で保有すると稼働率が低いような公共サービスは、広域で実施する方が望ましい。とはいえ、それをどこの自治体が所管するのか利害調整するのもまた大変そうだ。これを15年がかりでタイに定着させ、自立発展させたストーリーで、幾つかの特筆すべき物語が列挙されている。

協力期間も最初の頃は日本人の登場人物が結構多いが、協力が展開を見せるにつれて、日本人専門家よりもローカルの地方自治・地方行政関係者の登場頻度が高くなっていくのに気付かされる。多分後半部分では日本人専門家の活動をあえて抑え気味に描いたのだろうと想像するが、それを可能としたのは、協力期間後半に関わっておられた平山さんが、自身の功名心を抑え、プロジェクトのあるべき姿を冷静に捉えておられたからだろうと思う。

平山さん、次は『現代ブータンを知るための60章』の改訂作業をお願いします。そう、平山さんは、元々はブータンの青年海外協力隊の出身なのである。

一方で、数々の成功物語がどのように生まれていったのか、もう少し詳述しても良かったのではないかと思うし、そこでの平山専門家の関わり方、日常の専門家活動の姿について描かれていないところは、ちょっと物足りない部分でもあった。成功物語は一夜にしてできたわけではなく、その過程での試行錯誤が幾つもあったのではないかと思う。さらっと書かれた部分に、本当のドラマがあったのではないかと想像するし、そういうのを見せて行かないと、ボタンを押せば同じような成功が簡単に得られると読者に思わせてしまうのではないかと気になった。

著者が強調されている通り、ガバナンス分野の協力は、成果が目に見えるものの変化で示されないために、なかなか関心が持たれないだろう。それが書籍化する際のネックにもなった可能性がある。特に、日本人の僕らにとっては当たり前のことなので、余計に途上国に出向いても僕らの目を引くことが少ない。それぞれの成功物語の背後に隠れたドラマを表出させれば必ず魅力あるストーリーにはなるネタは多いが、そうしたネタを提供する機会を確保するのがどれだけ大変なことだったか、この書籍の刊行に向けた関係者の努力には敬意を表したい。

本書がきっかけとなって、ガバナンスのような地味な分野での協力にスポットがもっと当たっていけばと願ってやまない。

このシリーズは好きで既刊はほとんど読んでいるが、ちょっと「惜しい」とも感じるのがタイトリングのセンスの悪さだ。「地方からの国づくり」と聞いて、それがタイの話だと想像できる人がどれだけいるだろうか。この本を読む人は開発課題から入るのではなく、国名から入る方が圧倒的に多い筈であり、タイトルから国名が想像できない場合、手に取ることが難しい。この手の本が最寄り駅の書店の店頭に平積みされることはあり得ず、あっても書棚に格納される。そして、書店を訪れた客は、背表紙のタイトルだけを見て、手に取るかどうするかを判断する。

背表紙からタイの話だとわからない本を、書店を訪れた客が手に取るだろうか。そこの部分で、貴重な購読者の目に触れる貴重なチャンスを逸している。タイトリングの責任者はこの点をもう少しちゃんと考えるべきではないだろうか。「ぼくらの村からポリオが消えた」、「森は消えてしまうのか?」、「地方からの国づくり」、「未来をひらく道」―――これらのタイトルを見て、それぞれ中国、エチオピア、タイ、ネパールの話だと想像できる人がどれだけいるというのだろうか。

サブタイトルに国名入れているじゃないかという反論もあるだろうが、背表紙にサブタイトルまでは記載されていない。
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