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ブータン人研究者が見た日本の農村過疎化 [ブータン]

日本の農村の人口減少からブータンが学ぶ教訓
Rural Japan depopulation: A lesson for Bhutan
The Bhutanese、2017年3月11日、Bimal K. Chhetri
*記事URLはウェブ掲載された加筆します。

【ポイント】
基礎的な設備がないことや、道路交通網の未整備、野生動物の侵入、限定的な就業機会、市場へのアクセスの悪さ―――これらは農村の人口過疎化の共通した理由と考えられてきた。こうした要因は、ブータンにおける農村から都市への人口移動を論じる際に必ず言及されてきたことでもある。

しかし、日本の農村ではどうも状況が違うようである。こうした基礎的な設備が全て揃っていても、日本の農村地域社会は前例のない規模での農村過疎化に直面している。

このことは、我々に、ブータンの農村・都市間人口移動の問題に取り組む現在のアプローチを、批判的に再考する機会をあたえてくれる。基礎的な施設を全て揃えるので十分なのか? 単にインフラ開発を進めること以上の何かがあるのだろうか?

短期的な経済成長を実現するために考えられた政策は、長期的な持続可能性に対して深刻な結果を及ぼすことがある。例えば、日本では50年前、急速な経済成長に伴う旺盛な国内需要に応じるために稲田を潰して杉を植える政策がとられた。今ではこれらの杉も出荷に適した時期を迎えているが、杉材に対する国内需要は低迷し、杉林からまき散らされる花粉により、地域の人々は花粉症の弊害に苦しめられている。

自分が訪れた佐々里村(多分、京都府)は、地域福祉サービスの推進や、地元産品の販売所設置、観光振興等、積極的な取組みを進めている。それでも、農村過疎化は進む一方である。

では、農村からの人口流出を抑制して農村社会を維持するには、何が必要なのか?―――私は国民総幸福(GNH)の価値がそこにあると考える。GNHを構成する9つの領域(domain)のうち、人間同士の関係性や人と自然との関係性を示す5つの領域が、課題解決の鍵になるのではないか。これらは「共生(co-existence)」のために必要不可欠である。

経済発展に加えて、個々人の心理的幸福感や健康、地域社会の活力、時間の配分、伝統文化の促進等を改善していくための政策を取ることが、ブータンの農村過疎化の問題の解決につながる最も賢明なアプローチなのだ。

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今日は珍しく、3月10日付週刊誌The Bhutaneseに掲載された読者投稿を紹介したい。書かれたのは、東部タシガン県のシェルブツェ大学環境ライフサイエンス学部の講師である。シェルブツェ大学は京都大学と提携しているので、文中出てくる「佐々里」という村も、調べてみると京都府内にある山村であろう。この先生も、京大との関係もあって日本にいらしたことがあるに違いない。

日本を訪れたことがあるブータン人に、日本の印象を訊くと、判を押したように同じ答えが返ってくる。「勤勉」「時間を守る」「テクノロジーが進んでいる」「景観が美しい」等々。それを学んできたのにブータンでの実生活にそれをあまり生かしていないところが泣ける。1人だけで見に行って感銘は受けたが、自分の職場の現実の中に戻ってくると、折角のモチベーションが急降下してしまうことはあるかもしれない。何人かで一緒に日本を訪れた方が、相互に連携・牽制し合って何かしらの変化をもたらしてくれることはあるかもしれない。

ただ、そうした日本の印象が半ばステレオタイプ化している一方で、日本の農村の人口減少を将来のブータンの姿とダブらせて危機感を抱くところまで行くコメントをしてくれる人は意外と少ない。今、ちょうどJICAのセミナーで日本を訪問されているダショー・カルマ・ウラはそんな中の1人である。

そして、本日ご紹介したビマル・チェトリさんも同様である。1年近くこちらのメディアにおける日本の見られ方をずっとウォッチしてきて、この問題を取り上げてくれた記事や論説はこれが初めてだ。日本の経験からブータンは何を学ぶべきか、そしてブータンでこれまでに醸成されてきた内発的な価値観を、課題解決に向けたアプローチにどう付加できるかを、それなりに考えて持論を展開されている。

個人的には、都市から農村に移り住んできた人々が、都市よりも農村に感じた魅力とは何だったのか、基礎的施設がそれでも十分でない農村部で、それをどう乗り越えて生計を立てようとしているのかといった、過去の日本の経験ではなくまさに今日本が経験していることにも少しスポットを当てていたら、筆者のいうGNHに示された経済以外の領域の価値というものが、もう少しリアルに説得力を増したのではないかという気がする。

東京では明日(15日)、JICAが主催する「『国民総幸福量にかかる情報収集・確認調査』成果発表セミナー -「幸福度」と国・社会のあり方-」と題したセミナーで、ダショー・カルマ・ウラが登壇される。日本の農村過疎化をダショーがどうご覧になり、それを解決するには日本はどうしたらいいのか、また何十年か遅れで同じ問題に直面しているブータンはこれからどうしていったらいいのか、GNH概念形成の泰斗でもあるダショーのお話が聞ける、またとない機会になるだろう。

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