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『ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学』 [仕事の小ネタ]

ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学

ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学

  • 作者: 入山 章栄
  • 出版社/メーカー: 日経BP社
  • 発売日: 2015/11/20
  • メディア: 単行本
内容紹介
ドラッカー、ポーターしか知らないあなたへ。
「ビジネススクールで学べる経営学は、最先端からかけ離れている!」
米国で10年にわたり経営学研究に携わってきた気鋭の日本人学者が、世界最先端の経営学から得られるビジネスの見方を、日本企業の事例も豊富にまじえながら圧倒的に分かりやすく紹介。世界の最先端の「知」こそが、現代のビジネス課題を鮮やかに解き明かす!

随分前にキンドルで購入していた本だが、今週になってようやく読む気になった。きっかけは今週出たある会議で、発言機会が得られれば自分の発言に箔を付けるのに「世界最先端の知見」というのから言えることを引用してやろうと考えていたことだった。

その会議は2日間行われたが、主催者にもいろいろな思惑があったのか、僕は円卓の最前列に座らせてもらえなかった。マイクがある最前列ならともかく、椅子しか置かれていない二列目には発言権はない。初日終了後に主催者に最前列に座らせて欲しいと訴えたけど、聞き入れてもらえなかった。僕はその会議に2日目、席を最前列にいただけることを期待して、おそらく1回しか回ってこないであろう発言機会を狙って、何を言うかをひと晩練り上げた。そのために参考にしたのが本書の第19章「日本の起業活性化に必要なこと(1)―簡単な『キャリア倒産』」第20章「日本の起業活性化に必要なこと(2)―サラリーマンの『副業天国』」第21章「成功した起業家に共通する「精神」とは」であった。非常に参考になった。

以前から度々指摘してきているが、起業して成功してやろうというギラギラ感をブータンの人々から感じることは多くない。なのに、昨年11月の世界企業家週間の一連のイベントでの議論を見ていると、融資へのアクセスが起業を妨げるボトルネックだとする意見一色の印象を受けた。ブータン人の若い人々の中には、いいアイデアを持っている人もいるが、いざそれを具体化させ、新規事業を立ち上げようとする段階で、腰が引けて煮え切らない態度を取る。そういう時はできない言い訳を並べ始める。

僕からすると、起業や新規事業立ち上げへの障害は、融資へのアクセス以外にもあるような気がしてならない。

本書で先ず最初に読んだ上記3章の中にはこんな知見が経営学にはあるとする。EO(Entrepreneurship Orientation)に関する先行研究では、成功する企業経営者に共通して見られる姿勢として、革新性、積極性、リスク志向性の3つが挙げられるのだという。ではブータンの若者や企業家はどうかというと、既述の通り、革新的な考え方を持つ人は多いと感じるが、前向きに事業を開拓する姿勢や、不確実性の高い事業に好んで投資していく姿勢を感じることは少ない。

どうしたら、もっと積極的(proactive)で、リスク志向性の高い企業家を輩出できるようになるのだろうか?

事業環境の不確実性を引き下げ、心理的な障害を軽減する方策として考えられることを幾つか挙げてみる。

第1に、企業家同士が相互に学び合える場(フォーラム)を作り、初期の成功者から追従者が学べる機会を設けること、できれば外国の企業家の成功例から学んだりする機会もあるといい。これは、上記で挙げた3章の中ではなく、第6章「なぜ大企業は革新的イノベーションについていけないのか」や第7章「『チャラ男』と『根回しオヤジ』こそが、最強のコンビである」、経営学ミニ解説3「知の探索」、経営学ミニ解説4「トランザクティブ・メモリー」あたりから示唆されることでもある。

第2に、失敗した時の事業のたたみやすさを改善すること。第19章から示唆されることであり、倒産の手続きスピードが早い国、手続きコストが安い国、経営者の金銭的負担が軽い国では、起業が活性化しやすいとの実証研究があるそうだ。単に法制度の整備に関してのみ言っているわけではない。ブータン人は失敗を極端に恐れて、そのために行動を起こさないケースが多いように思うが、なぜ失敗を恐れるかというと、1つ失敗してしまうとリカバリーにすごい時間がかかるというのも一要因である。

以前、プンツォリンの科学技術カレッジで卒業生の制作した社会革新に寄与する電子機器のプロトタイプというのを見せてもらったことがあるが、残念ながらすごくプリミティブな代物だった。なぜそうなるのかというと、一度トライしてみてうまくいかないと、改良に必要な部品を発注し、納品されるまでにとんでもなく時間がかかり、卒業制作の期間中にPDCAサイクルを何度か回すということが行えないようだった。だから、「失敗しても改良版の再製作に必要なパーツは在庫がちゃんとあります」という状態を作っておかないと、実用的な試行錯誤のプロセスを経験できないし、うまくいかない時のことを考えて安全運転の設計でお茶を濁すことになってしまう。そもそも電子機器製作に必要なパーツのほとんどが輸入だから、こういうことが起こってしまうのである。

第3に、いきなり大きな事業を立ち上げるのではなく、既にやっている事業や生計活動と並行して、新規事業や起業を小規模で始めてみるというアプローチを推進してはどうかと思う。これは、経営学ミニ解説2「リアル・オプション理論」や前述の第20章の記述からの援用である。樹来からの生計活動を続けながら、新しいことを小さく始めるという発想で、これは農村部でアグリビジネスのような大きなものを起業させるのではなく、農家の兼業化を可能にする環境づくりをもっと進めてはどうかという提言になっていく。通信インフラや道路インフラは徐々にではあるがブータンでも良くなってきている。これに流通網の整備だとか、プロトタイプ開発を可能にする小規模工房(ファブラボ)のようなものを作るとか、そういうものをもう少し整備していってはどうかと思う。

事業の不確実性を引き下げる以外にも、ブータンの若い人々のリスク選好性を高める方法はある。それは教育である。

単に教科書に書かれていることをそのまま教えるというだけではなく、チャレンジ精神、失敗にもめげない強い心を養う、大きな成功は多くの失敗の上に成り立つということを学ぶ機会を、初等・中等教育の中で設けていくことはかなり重要だと思う。しかも、今すぐ始めないといけない。こういう子どもたちがやがて就労可能年齢に突入していくのだから、民間セクター開発云々を強調するなら、先ず手を付けなければいけないのは教育だと思う。

第10章「『失敗は成功のもと』は、ビジネスでも言えるのか」はその点で示唆に富んでいる。「成功体験しかしてないと、『サーチ行動』をしなくなる」という記述の意味するところは重要だと思う。

組織は、失敗を経験すればするほど「これまで自分がしてきたことは、正しくないのではないか」と考えるので、新しい知見を求めてサーチ行動をするようになります。したがって長い目で見ると学習効果が増して、成功確率が上がってくるのです。逆に成功体験を重ねると、「自分のやっていることは正しい」と認識しますから、いつのまにかサーチ行動をとらなくなるのです。

とまあ、ざっとこんなことをまとめてコンパクトに発言しようと思っていたわけですが、肝心の発言機会が与えられなかったので、せっかくまとめておいたアイデアが宙に浮いた状態になった。それ以降の2日間、本書の残りの章も読み込み、他にも自分の組織マネジメントに参考になりそうな示唆も得られたが(新たに学んだというより、思い出させてくれたという方が近いが)、それはさておいても、本書を読み始めた最初の問題意識が「ブータンの民間セクター開発」にあったわけだから、それにストレートにつながる知見のみをまとめ、今回はご紹介することにした。

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