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『あなたの人生、片づけます』 [読書日記]

あなたの人生、片づけます (双葉文庫)

あなたの人生、片づけます (双葉文庫)

  • 作者: 垣谷 美雨
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2016/11/10
  • メディア: 文庫

内容紹介
社内不倫に疲れた30代OL、妻に先立たれた老人、子供に見捨てられた資産家老女、ある一部屋だけを掃除する汚部屋主婦……。『部屋を片づけられない人間は、心に問題がある』と考えている片づけ屋・大庭十萬里は、原因を探りながら手助けをしていく。この本を読んだら、きっとあなたも断捨離したくなる!

多分一種の現実逃避だろうと思うが、多忙の1週間に突入しているにも関わらず、新たな本に手を出した。こういう文庫本は、何かの気分転換にとでも思って軽い気持ちで日本で買って持って来ているが、ほぼ間違いなく二度とは読まない。ブータンに日本語の本のBook Offなんてないから(日本の御本家の方も業績よろしくないらしいが)、僕より長くこちらに住まわれるであろう日本人の方の間での回し読みに付してもらうのが唯一の延命策になるだろう。そういう運命の本が僕のアパートの自室には数冊あるが、気付くと多分この本が最後の1冊。読み切ったらすぐに手放せるかと思ったら、矢も楯もたまらず、読書開始とあいなった。

どこで思考が狂ったのかよくわからないが、購入からここまで半年以上引っ張ったのは、この本が終活の本だと僕が勝手に勘違いしたことが理由である。この手の文庫本は裏表紙に本のあらすじが書かれているが、明らかに断捨離の本だ。それなのにどこかで意識がすり替わってしまった。

それほど多作でもない垣谷作品は今回が3冊目で、しかも前2作と違って、今回は中編小説が4編収録されている。いずれにも登場するのは片づけ屋・大庭十萬里。30分程度の空いている時間では文庫本で1編80~90頁はある中編小説は読み切れない。自ずと読んでいて切りが悪いところでいったん中止となるのがつらい。あるいは、1編を読み切るために、その後予定していた行事をすっ飛ばすということも実はあった。(ご迷惑をおかけしました。)垣谷作品として過去読んだ2作はいずれも長編で、序盤のグズグズした展開と後半の急展開のコントラストが大きく、序盤の読み込みに忍耐が求められる作家なのだが、これが中編になると最初から展開が面白くて、読み切らないと気分が悪いと思えるほどページをめくる速度が速くなった。

読まれた方と意見が分かれるところかもしれないが、僕は最も心に響いたのは最初の「社内不倫に疲れた30代OL」が主人公のお話だった。たとえがあまり良くないかもしれないが、今自炊生活をしている僕が、一食ごとに食器をきちんと片付けられるか、それとも流しに放置して2、3日、あるいはそれ以上の長期間ため込んでしまうかどうかは、結構紙一重だと常々感じている。同様に、衣類も、夜着ていたパジャマや1日を終えて帰宅して脱いだジャケット等を、きっちりたたむかハンガーにかけてクロゼットに仕舞うか、あるいはソファーやベッドの上に脱ぎ散らかしたり、キッチンの座椅子にかけたりしてやっつけるかは、結構紙一重のような気がする。元々面倒くさがりなところはあるが、時々スイッチが入ってしまうことがあるのである。

それが何かというのを探りあてることが、根本的かつ持続可能な解決策になるのは間違いない。部屋の中が「中村うさぎ」状態だったOLにとって、それはズルズルと5年も続いた不倫だったという次第。そして、それをOL本人に気付かせたのは大庭十萬里の対話型ファシリテーションの力ということになる。

以前、和田信明・中田豊一著『途上国の人々との話し方』という、対話型ファシリテーションのバイブル的本の中で、まさに机の上が整理できない女性の話がケースとして出てきたことがある。その時にファシリテーターが繰り出した質問の内容と結末はしっかり覚えていないが、事実を訊ねる質問をひたすら繰り出して、本人も気付いていない問題の本質を気付かせる、そしてやる気を引き出すというので劇的な意識変革・行動変革がもたらされるというようなことが書かれていたと思う。でも、どうやったら相手のセルフエスティーム(自尊心?)を損なわずに事実を訊ね続けることができるかというのには、「場数を踏め」としか言われていない。

例えば、明らかに家の中が汚い人に、「汚いですね」というひと言を発してしまえば一発アウト。本人も自覚していることを相手に言われてしまうと、「そんなことわかってるわよ!」と心を閉ざされてしまう。また、使う予定もないのに「もったいない」とものをため込んでしまう人に、「あなた間違ってますよ」と言ってしまっても一発アウトだ。本人も気付いていないことなので、こちらから答えを与えてしまうのではなく、本人に気付かせる仕掛けが必要になる。

大庭十萬里と住人が交わす会話は、和田・中田の言う対話型ファシリテーションの具体例を見せられているような感覚に襲われた。そういう意味でも、この小説は相当面白かった。この感覚で、自分の職場でも断捨離やってみたら、結構スリムですっきりした職場環境になるのではと思った。

「わかっちゃいるけどやめられない」―――意識変革・行動変革が難しいのは、家や職場の5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)だけではない。ダイエットや運動の習慣づけなどもそうだろう。と思っていたら、垣谷さん、本書の続編として『あなたのゼイ肉、落とします』という作品も書いておられた。電子書籍で読んでみようかな。

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