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インフラの持続可能性向上に向けて [ブータン]

眞子様がブータン御訪問中、ティンプーからパロに御移動された翌日、ティンプーでは農業省主催の花博覧会が一般公開されたが、もう一方で、公共事業省が5日から7日まで、「第8回エンジニア・建築士・計画官カンファレンス」というのが開催されていた。

公共事業省の各局の主だった幹部、100名以上が勢揃いし、現状の公共インフラ整備事業が抱える問題について話し合い、最終日までに21項目の提言書にまとめた。この提言書は公共事業大臣を通じて内閣に伝えられ、今後の法制化につなげられるのだという。

このカンファレンスの模様は、メディアでも連日取り上げられ、6日以降のクエンセルでは、1面を含めてこのカンファレンスの議論の内容を4回にもわたって紹介している。例によってクエンセルの記者はカンファレンスの全体日程に全て顔を出して記事を書いたとは思えないが、論点が垣間見えるので紹介しておく。


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調達プロセスは改善が必要
Procurement process needs improvement
Kuensel、2017年6月6日、Tashi Dema記者
http://www.kuenselonline.com/procurement-process-needs-improvement/

2017-6-7 Kuensel.jpg

【ポイント】
政府は現状その予算の60~70%を建設工事や財、サービスの調達に費やしているが、そのプロセスには落とし穴がある。契約履行率の低さ、費用と工期が当初予想を上回ってしまうこと、品質面での妥協、契約取り消し、公的資源の浪費等である。

過去の調達手続きからのコピペが横行し、時にはコピーした調達案件の件名が残った状態になっているケースも。入札図書作成時の真剣さの欠如によるもの。また、応札業者の事業提案書の評価項目にも問題があり、合格ラインの65点は、銀行融資の利用可能性(20点)と、人員配置(25点)、機材の利用可能性(25点)、これまでの実績の平均値(10点)等の項目で稼いでいる。しかし、機材の利用可能性も、応札業者がその機材を所有しているのか、外部から傭上予定なのかは問わない。逆に入札能力への配点は10点しかないが、カンファレンスではこれを30点に引き上げ、逆に銀行融資の利用可能性への配点は廃止にすることが提案された。

インフラはこの国の社会経済開発の中核を担う。全国一貫して居住とインフラ開発の持続可能性を高めるために、インフラ整備事業に関わる全てのステークホルダーが認識を共有することが必要だと、同席した公共事業大臣は述べた。

大臣によれば、第11次五カ年計画では予算総額の17%、330億ニュルタムが同省のインフラ整備事業に配分された。建設セクターは国内に3,866社の請負業者を抱え、GDPの16.86%、総労働力の3.2%を吸収している。インフラ整備事業に関わるコンサルティング会社は73社、建築士は148名が登録されている。

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第12次五カ年計画では既存道路の強化が課題
Consolidation of existing roads in the 12th Plan
Kuensel、2017年6月7日、Tashi Dema記者
http://www.kuenselonline.com/consolidation-of-existing-roads-in-the-12th-plan/

【ポイント】
ブータンは既に十分な道路網を持っている。そう延長距離は12,204kmにも及ぶ。この道路網を持続可能なものにするためには、道路建設から道路維持管理にシフトしていくべき時に来ている。しかし、公共事業省道路局のチーフエンジニアによると、道路維持管理は大きな課題となっている。それは、予算制約と道路局の能力による。交通量も増える中で、従来型の維持管理方法では持たなくなってきていて、新たな方法を模索する時期である。

チーフエンジニアは、提言として、現行の道路維持管理システムの強化と道路維持管理センターのパイロット導入、成果ベースまたはハイブリッド型の道路維持管理契約の導入等を挙げた。成果ベース型契約とは、請負業者が所定の成果を出しているかを評価して月次で報酬を支払うもので、ハイブリッド型は成果ベース型と従来の単価契約を組み合わせ、完了した請負業務の量に基づき支払いが行われるもの。いずれも、定期的なメンテナンスを行わないと、いったん補修が必要になった時の費用は非常に大きくなるとの考えに基づく。

道路局は通常、道路のメンテナンスを、労働者とハイブリッド型日常メンテナンス契約、地域住民とのメンテナンス契約とでやり繰りしてきた。チーフエンジニアは、150~200km毎に道路維持管理センターを新設し、ここに医療施設や学校、託児施設、スポーツ施設、雑貨販売店等を設けるべきだと提言する。メンテナンスに関わる多くの労働者が、基礎的なアメニティが全くないところに住まなければならないからだ。

ブータンの道路維持管理は不十分な予算措置に妨げられている。第10次五カ年計画期間中、道路局は既存道路100kmの再舗装せねばならなかったが、実現できたのはその半分に過ぎない。同様に、道路局は労働者不足にも直面する。日雇い仕事の報酬の方が高くて、道路維持管理に人が集まらない。このため、メンテナンスは女性や障害者に頼っているのが現状。

道路維持管理システムが確立していない点も課題。未だデータを集めている状態。公共事業省のプンツォ・ワンディ事務次官は、第12次五カ年計画では、道路網の拡張ではなく、今ある道路の強化に注力したいと述べた。道路のカテゴリー別データの収集を急ぎ、これをデジタル処理して、現在の道路状況の把握を年内で完了したいと提案した。

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建設セクターは汚職腐敗抜きでヨロシク:首相
Construction industry should be corruption free: PM
Kuensel、2017年6月8日、Tashi Dema記者
http://www.kuenselonline.com/construction-industry-should-be-corruption-free-pm/

2017-6-8 Kuensel.jpg

【ポイント】
3日間のカンファレンスの締めくくりとして、閉会式で壇上に立ったトブゲイ首相は、インフラ整備の計画、事業実施、維持管理がブータンの発展に必要不可欠だとして、そのセクターでの汚職腐敗は許し難く、そうした慣行は根絶して、責任感と説明責任、効率性に対する意識を高めるべきだと述べた。「正しい制度が構築できれば、質の高いインフラが整備でき、維持管理も適切に行われる。」

首相はまた、建設業は専門化を進める時期だと強調。重機も保有し、建設請負能力もある業者が既にいるのに、ブータン人労働者を動員して橋梁を建設できる請負業者はCDCL1社しかないというのは残念なことだと指摘した。

カンファレンスでまとまった21項目の提言の中には、既存の調達制度の見直しや、専門化促進のための環境整備、エンジニア・建築士の評議会の新設と専門性認証制度の新設、公共事業省と各市役所との人事交流制度の導入等が含まれる。

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建設事業は開発規制を順守していない
Constructions not complying with development regulations
Kuensel、2017年6月10日、Karma Cheki記者
http://www.kuenselonline.com/constructions-not-complying-with-development-regulations/

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【ポイント】
カンファレンスの中で、ブータンの建設現場が、開発規制(DCR)を順守していない現状が指摘された。DCRとは建設に許可を与えるための基本仕様や従うべきルールを定めたもので、ブータン建設規則、道路建設法規制、都市道路基準、伝統建築ガイドライン、ブータン建築ガイドライン、建物カラー規範等がある。

土地利用や電気設備安全基準、傾斜地での建築基準、道路優先通行権等、DCRに従わないケースがブータンでは横行している。建築ガイドラインからの逸脱や、建物カラー規範の無視、不十分な段形後退や地上危険担保、不十分な駐車スペース確保、無許可での建物拡張等も頻繁に見られる。

DCRを順守しないということは、十分な換気のない家、日当たりの悪い家、プライバシーや安全への侵害といった形で住民の健康や生活に影響を及ぼす。公共事業大臣は、開発計画立案者もエンジニアも、DCRを十分理解し、どの場合は建設が認められ、どの場合は認められないのかをはっきり説明できるようになることが重要だと述べた。

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4件もの記事をまとめてブログで紹介するのはかなりしんどいが、これら報じられている内容を見ると、方向性としては正しいし、こういう認識を政府関係者自身が持っているというのは歓迎すべきことだと思う。公共事業省と各市役所との人事交流なんて、とてもいい提言だと思う。カンファレンスが行われた3日間、公共事業大臣と事務次官はほぼ全プログラムに同席して議論に参加したというし、最終日のトブゲイ首相の基調演説の際には、記事では報じられていないが、下院議長や情報通信大臣、労働大臣、経済大臣らも同席、それなりに現政権の力の入れ方が伝わってくる。

2018-6-7 MOWHS.jpg
《首相の公式Facebookから拝借した集合写真》

ただ、各論でいくと、公共事業省の関係者だけで議論しているから、内輪のロジックで終わってしまっているところが目立つし、記事の内容が各セッションの発表者や「声の大きい」エライ人の発言ばかりを取り上げていることからも、カンファレンスの様子が想像できてしまう。エライ人がいるところで、ボトムアップの提言など出てこない。自ずと、各セッションでの発表者が挙げた提言項目を、フロアからの活発な発言もないまま是認する形で進んだのではないかと想像する。

例えば、「道路維持管理センター」なんて、事務次官がいろいろなところで発言されていたものをこの場で支持した形になっているが、道路作業員向けのアメニティ施設を整備するにしても、教員や医療スタッフの確保で教育省や保健省との調整はできているのか不明だし、そもそもメンテナンスに従事する労働者の賃金が安いという問題への取組みにも言及がない。記事を読むだけでは、なんで「道路維持管理センター」が道路維持管理の問題解決の有効打なのかがよくわからない。

入札図書作成時のコピペの横行とか、DCR不順守とか、なぜ起きるかといえば、突き詰めれば公共事業省の職員の能力と意識の欠如によるところが大きいと思う。労働者だけじゃなくて、職員の給料も安いので、条件が良ければすぐに民間に転出したり、箔をつけるために海外留学機会を常に狙っている。中堅の技術者がそうして省庁からいなくなり、その補充は大卒1年目の若手で補充される。頭数を揃えたから問題ないと言うけれど、大学新卒採用者がいくら優秀でも、入省1年目から即戦力として見られるのでは大変だ。自ずと前例を盲目的に踏襲することになるし、順守せねばならないDCRの見落としという事態も容易に起こる。

僕が「内輪のロジック」と言ったのは、こうした、インフラ整備に関わる部局の職員の能力強化というところが抜け落ちていて、この業界に人材を輩出する大学とか職業訓練教育との連携の視点が提言内容に全く見られないからだ。現場を知らない教員が学生に教えているんだから、当然現場を知らない学生しか輩出されない。8日の記事では引用されていないが、トブゲイ首相はその基調演説の中で、同じ日に行われた王立ブータン大学傘下のカレッジ10校の合同卒業式を引き合いに出し、この3000人余りの新卒者がやりがいを持って働く機会を作るのも建設業界の責務だとかなり強めに発言されている。その視点が欠けているということを暗に言いたかったのかもしれない。

あえて個人的な意見を言わせてもらうとすれば、予算が配分されないから計画の半分しか達成できないというのであれば、配分された予算でできる範囲のことをやればよくて、そもそも計画段階から背伸びをし過ぎているのではないかと思う。

冗長な駄文に最後までお付き合い下さり、ありがとうございました。
タグ:公共事業省
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