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幼児教育の質が重要 [ブータン]

質の高い幼児期の過ごし方が重要、報告書が指摘
Quality early childhood matters, finds a study
BBS、2017年7月5日、Yeshi Gyaltshen記者
http://www.bbs.bt/news/?p=75458

2017-7-5 BBS.jpg

【ポイント】
幼児教育(ECCD)への投資は政府支出の投入先として費用対効果が高い―――これは教育省とユニセフが実施した調査の結論である。このレポートのローンチングが今日、ティンプーで開催された。調査は、ECCDになぜ投資すべきか、ブータンにおけるECCDの現状はどうなているのか、2030年までにブータンのECCD全国展開を完了するという国の公約の実現に向けて何をどうやっていったらいいのか等について考察している。

ローンチング式典の席上、公共事業大臣は、現在3歳から5歳の子供の18%がECCDを利用できているが、0歳から3歳児までに対象を拡げていくために多くの取組みがなされなければならないと指摘した。「子供にとって最初の場所は生まれ育った家です。私は家こそが第一の場所となるべきで、親や家族は子供にとって、幸福と平和につながる環境を作る上で頼ることのできる第一の人々であるべきです」――大臣はこう語った。

ユニセフの南アジア担当局長ジーン・ゴフ氏は、ドルジ・チョデン公共事業大臣とともにローンチングを行い、席上、ECCDへの投資が単に子供に対して恩恵をもたらすだけでなく、コミュニティ全体にも恩恵をもたらすものであると述べた。質の高いECCDの実現に向けた投資は、子供の健康状態の改善や認知力の発達を通じて持続性の高い中期的な成果をもたらすが、さらには長期的な恩恵もあるという。「長期的には経済へのインパクトも大きいものがあります。大人になってより収入を得る可能性が広がり、社会的不平等や犯罪の問題が軽減され、社会的包摂性の進展を促してコミュニティや社会への人々の積極参加を実現できます。」

ブータンのECCD事例分析は昨年半ばに開始されたもので、第12次五カ年計画に向けた教育省の方向性に示唆を与えるものと期待されている。「私たちはECCDを既に10年間にわたって実施してきており、この調査は非常に良い時期に行われ、重要性が高い。10年も実施してきても、私たちにはまだ、どのように投資を行えばいいのか、何をするのが最善なのかについて考える機会がなかった。このレポートは将来計画の策定に非常に有用だ」―――教育省ECCDプログラム担当官のカルマ・ゲレ氏はこう語った。

ブータンにおけるECCDセンター(幼稚園)は、2008年の10軒から、2016年には282軒に増加した。政府は、2030年までにECCDのカバレッジを全国に広げるべく、全てのチオッグに少なくとも1軒のECCDセンターを設置する計画を立てている。

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ECCDへの投資の費用対効果が高いという話は、持続可能な開発目標(SDGs)が策定される過程でよく聞かされていたもので、ECCDに取り組むというブータン教育省の姿勢は高く評価したいと思う。幼児期から正しい方向に子供たちを仕向けることができれば、初等、中等、高等教育、さらに卒業後の職場でのOJT等での人的資源投資の重複を回避することができる。自分で決めた約束を平気で守らない、時間に平気で遅れる、創造性が足らない、失敗を恐れて冒険しない、わからないことは自分でやらないでわかる人に丸投げする―――そんな大人をこれ以上生み出さないようにするには、大人になってからでは遅くて、もっと川上の早い段階から、教育でアプローチしていくことが重要だと思う。さすがに幼児ケア・幼児教育でそれをやれというのは違うかもしれないが、むしろそういうのを受け入れられるからだと心を作るためには、栄養や健康を含めた幼児への包括的なアプローチは必要だ。

また、ユニセフがこれを支援しているのも、組織が大きいわりに個々の専門機関が何をやっているのかがあまり見えない国連機関の中では特に目につくプログラムで、この点だけでも僕はユニセフはよくやっていると思っている。今から1年前、ユニセフの支援でティンプー市内の野菜市場(サブジ・バザール)にECCDセンターがオープンしたとの報道が出た時、いいポイントを突いてるなと思い、それ以降僕はユニセフのファンになった。各学校にジム用機材を供与したものの壊れて使われなくなってしまうというのに比べれば、ユニセフのECCD支援はよっぽど良い。

実は僕はこのローンチングの会場にいた。ローンチングというからにはレポートが配布されないかなと期待して、この2時間ほどのイベントに出ていたのだけれど、残念ながら貰えなかった。ECCDセンターのスタッフのことを「ECCDファシリテーター」と言うんだという発見も、会場にいたからこそ知ることができた。要は日本の「保母さん」のようなものなのだろう。

いずれレポートを入手して中身を見てみないとわからないが、話を聞きながら気になった点を幾つか挙げてみたいと思う。

第1に、このレポートの執筆者が誰かという点。実は2週間ほど前、WHOと保健省が「ブータン保健医療制度モニター」という別のレポートのローンチングを同じ会場で行った。このレポートの売りは、執筆者が全員ブータン人で、にもかかわらず国際的な査読者がレビューコメントを付け、それによって国際比較が可能な統一フォーマットで、高い品質を確保できたレポートに仕上がったと言われている。では、今回のECCDレポートはどうだろうか。保健制度レポートは査読対応を含めてもわずか1年でローンチングまで持って行ったと言われているが、ECCDレポートの方がスケジュール的にはきつかった筈で、それをどうこなしたのかは興味津々。会場での教育省高官の発言を聴いている限りでは、どうも彼ら自身が執筆したのではなく、ユニセフの雇った国際コンサルタントが書いたのではないかと思われる。そして、教育省はそういうのにすぐに飛びつく。

第2に、1チオッグに最低1カ所のECCDセンターって本当に必要なのか、イマイチ納得いかなかった。都市部で女性の経済活動への参加を促すためには託児施設が必要だというのならわかるのだが、農村部で託児施設って必要なのだろうか。日本でも昔は女性が田畑に出るために、近隣の農家と話し合って自主的に託児サービスを行う仕組みを作っていった時代があったと聞くし、本来それがボトルネックだと言うなら地域の住民間で話し合ってボトムアップで決めていく話だと思うが、それを教育省は「ワン・チオッグ・ワン・ECCDセンター」のような形で政策に組み込んでしまっている。これでは、ECCDセンターは政府が与えてくれるものとして、住民の政府依存体質を助長してしまうのではないかと気になる。人口構成からいってECCDセンターの需要がないチオッグだってあるかもしれないし、さらに言えば、ブータンの農村って家屋の密集度が低くて分散しているから、ECCDセンターに子供を連れて行くのも大変なのではないか、作っても使われなかったりしないのかという疑問も湧いてくる。ECCDセンターの発想に、ユーザー側の視点が欠けているような気がしたのは、気のせいだろうか。

第3に、箱を作れば幼児教育の質が確保できると教育関係者が単純に考えているのではないかというのも気になったポイントだ。先般、ブータン政府は学校教育の質を高めるために、全ての学校教員には最低修士号取得を義務付けるという、前代未聞の政策を打ち出した。大学院で修士取らせれば、教員の質は上がって、生徒に恩恵がもたらされると考えられているようであるが、今の大学教育の実態を見れば、ことはそれほど単純ではない筈だ。これと同様で、現場のECCDファシリテーターの質を上げる仕組みはどうやって作るのだろうか。幼児教育・幼児ケアの質を高める取組みについては、ローンチングの会場で誰も言ってなかったので、そこがどうなっているのかは要注意だと思う。

幼児期への包括的なアプローチという考え方には賛同する。でも、要はやり方をどうするかが問題。たとえ外部者が書いたレポートであったとしても、それを鵜呑みにせずに自国の文脈に落としてどうやって政策を展開していくのかを熟慮するのは教育行政関係者の仕事だろう。そこをちゃんとやれるかどうかがECCD投資の費用対効果を最大化できるかどうかのカギとなってくるだろう。

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