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『角川インターネット講座(10)』 [仕事の小ネタ]

角川インターネット講座 (10) 第三の産業革命経済と労働の変化

角川インターネット講座 (10) 第三の産業革命経済と労働の変化

  • 監修: 山形浩生
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川学芸出版
  • 発売日: 2015/02/24
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
蒸気、電気に続く産業革命は情報技術によって起こった。しかし社会は本当に豊かになったのか? 3Dプリンターの普及、ビットコインの衝撃、そして終焉を迎えるホワイトカラー。インターネットがもたらす変化の本質を、世界のエキスパートたちが解き明かす。トマ・ピケティ『21世紀の資本』の翻訳者が提唱する新時代の経済論!

実は、明日から日本に帰ります。1週間だけ。仕事でブータンに来てから4月末でまる1年になり、前向き度で言えばこの3カ月がいちばん底だった。幸せの国にいて言うセリフじゃないけれど、この数カ月ちょっと無理していたので、大仕事が終わるたびに体調を崩し、なかなか立ち直れない状態が続いている。ここいらで家族の顔でも見てひと息入れたいと考えた。

その休暇に携行したくなかったので、序章、第1章だけ読んで放置した状態だった本書も、エンジンかけて読んでしまうことにした。週末からとりかかり、木曜日にようやく読み切った。全章同じ深さでは当然読めていない。実際流し読みしていてはメッセージが入って来にくい難解な章もあったので。

元々本書を買ってまでこちらに持って来たのは、僕の知人が1章書いておられるからだ。本書は、「情報革命の全貌をとらえる」ことを目的として出版された「角川インターネット講座」のシリーズ第10巻だが、その知人の書いた章は、「メイカー運動とファブ社会」を取り上げている。これはこれでとても示唆があった。なぜなら、長らくやきもきさせられ、僕のイライラの遠因ともなってきたブータンのファブラボが、どうやら今月20日にオープンするところまで漕ぎつけたからだ。

開所式で何か気の利いたことでも言えたらと思ったので、この章だけはじっくり読んでみたが、第3の産業革命はモノづくりの革命ではない。むしろ革命が起こるのは僕たちの認識である「モノという概念そのもの」が変わるという革命なのである。「モノまで含んだ情報革命」と読んだ方が、まだ事態を正確に捉えられる(p.145)という論旨には、頷かされるところが大きかった。

但し、これがブータンで根付くには制約もある。
モノづくりにはどうしても、部品の調達が必要になる。通販で注文して、どんなに早くても1、2日は待たなければならない。しかし、コンピューターのソフトウェア開発に慣れた身体には、それではもう「一歩遅い」のである。頭で考えたことがその場で瞬間的に試せてこそ、リズム感のある開発作業となる。部品が届くまでに1、2日もかかること自体が苦痛すぎて、もどかしさに耐えられないのだ。(p.131)
ファブラボがブータンにできて、最大の課題はここにあるような気がする。内陸国だということもあるが、部品は簡単に手に入らない、通販でも1、2日どころか、2、3カ月かかってしまうので、ラボのユーザーが瞬間的に「これを作ってしまいたい」と思っていても、そうすることができない。ブータン人が起業精神に乏しいのは、単に彼ら自身の問題というよりも、そういう環境が作れていないことが多分にある。部品のストックを切らさないよう、早め早めに調達をかけるようなシステムを作らないといけないだろう。また、部品をバルクで注文して、税関で止められた時に、ちゃんと関税を支払えるのかどうかも課題だろうな。

この第5章を読んだら目的達成感もあったのだが、その後続けて読んでみて、あと2つ、自分の仕事とも関連してきそうで面白かった章があったので書き留めておく。

第7章「情報による新しい労働形態」―――ここで「クラウドソーシング」という人材マッチングサービスの話が出てくるが、これは「おっ?」と思った。以前、リンダ・グラットン著『ワーク・シフト』を読んだ時にも同じような概念が出てきていたのを思い出した。その時は自分がインターネットを通じて仕事を受注する姿を思い描きながら読んでいたが、逆に発注する側で見た時、今僕が仕事上抱えている制約を、こういう形でアウトソーシングできれば、かなりクイックに解決して、自分の理想に近いマネジメントができるような気がした。部下に頼もうにもそれに秀でた人材が手元にいない、だったら自分でやろうかと考えるが自分の時間も限られている、だったら必要な人材を必要な期間だけ確保できたらいい――なんて頭の中で考えを巡らせながら読んだ。

第8章「インターネットと都市」―――インターネットによる通信コストの削減が、都市に有利になるのか、地方に有利に働くのか、大企業に有利なのか、独立事業者・中小企業に有利なのかを、集中・独占と分散・分権という対比軸としてまとめていて、今後さらにインターネットが普及してくるであろうブータンで、都市と地方とで起こる事象を予測するうえで参考になりそうな示唆を与えてくれている。通信コストの低下による生産者と消費者の直結、これ自体が今後のブータンの課題となってきそうな気がするが、これがあれば、地域創生、地域振興への効果が期待できる。著者が言う「地域づくりの3法則」―――①地方の生産者から都会の消費者へ直接つながる手段としてICTという飛び道具を活用する(地域づくり第1法則)、②逆に都会の消費者に来てもらう「観光戦略」や地元の「直販所」戦略も併せて進める(地域づくり第2法則)、③この動きが国内だけにとどまらず、外国の消費者を巻き込んだ国際展開が進む(地域づくり第3法則)―――は、なかなか勉強になる。③国際化については、本章ではあまり詳述されていないけど。

都市というところでも、第8章の著者は、ニューヨークやサンフランシスコのケースを例に挙げ、「倉庫のまち」→「産業空洞化」→「アート系の進出」→「ICT産業との融合」という変遷が普遍的に見られると指摘していて面白い。これも以前読んだリチャード・フロリダ著『クリエイティブ都市論』を想起させてくれる内容だ。ティンプーで産業空洞化がどうこうという状態はないものの、アート系とICT産業との融合は、頭の片隅に置いておいてもいいかなという気がした。

最後に、ずっと僕自身頭がこんがらがっていた、「第三の産業革命」と「第四次産業革命」の違いについて、備忘録的に整理しておきたい。本書は「第三」を採用していて、ちょっと前に読んだクラウス・シュワブ著『第四次産業革命』は当然後者を採用している。
【第三の産業革命】
第1:農耕開始
第2:産業革命
第3:情報革命による脱工業化社会の到来
*アルビン・トフラー著『第三の波』に準拠

【第四次産業革命】
第1次(1760年代~1840年代):蒸気機関の発明と鉄道建設による機械による生産の到来
第2次(19世紀後半~20世紀初頭):電気と流れ作業の登場による大量生産
第3次(1960年代~):半導体、メインフレームコンピューター(1960年代)、
          PC(1970~80年代)、
          インターネット(1990年代)を通じたコンピュータ革命、デジタル革命
第4次(21世紀):偏在化しモバイル化したインターネット、小型化し強力になったセンサーの
         低価格化、AI、機械学習
*農耕開始による農業革命は含まれない。「産業革命」の中身の進化だけを見ている。
―――これで少し頭がすっきりした!?

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