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インド物品サービス税の影響 [ブータン]

一昨日、事前連絡もなく突然日本から来られたお客様に、「最近のブータン情勢について話を聞かせろ」と要求されました。「最近のブータン情勢」って何から話せばいいのだろうか―――背景説明もなく、いきなりこう訊かれたら、すぐに想像するのは政治経済の話。だから僕は前回ブログでご紹介した来年の国政選挙の話から始めようと考えました。結果、怒られました。「お前じゃ話にならん」と言ってお帰りになりました。相手の方の背景だとか、関心事項とか、全くわからない中で、いきなり「最近のブータン情勢」と訊かれて皆さんなら何から話しますか? こう言われて5秒ぐらいの間に、僕の頭の中に浮かんだのは「選挙」、「ドクラム国境紛争」、そして「GST」でした。

GST――それは、インド政府が7月1日から施行開始したした全国統一の物品サービス税のことである。お隣りの大国が導入した新たな政策が小国ブータンに及ぼす影響は大きく、7月に入ってからのメディアでは、GSTのブータンへの影響に関する報道で賑わっている。そのいくつかを、今回は取り上げてみたいと思う。

2017-7-8 Kuensel02.jpg
《7月8日付クエンセルに載っていた、ひと目でわかる(?)GSTの図》

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GST、セメント輸出に打撃
GST hits cement export
Kuensel、2017年7月13日、Rajesh Rai記者 (プンツォリン)
http://www.kuenselonline.com/gst-hits-cement-export/

【ポイント】
GSTにおけるセメントへの適用税率は28%で、これをインドの購入者は負担せねばならない。これまでセメントには付加価値税、消費税、その他の税で30~33%の課税がなされてきたが、これが撤廃されてGSTになることで、インド産セメントは実質的には値下げとなる。これに対して、ブータン産セメントは、GST課税に加え、輸送コストも上乗せされるため、インド産セメントよりも高価格となってしまう。ブータン国内セメント大手は、生産されるセメントの6割を対印輸出に依存している。このため、値下げにより影響を吸収することを考えている企業もあるが、一方で、二国間の貿易の絆の強さを考えれば、両国間でブータン産セメントに対する特別免税措置の適用に合意できるのではと期待する声もある。

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GST、ブータン産業に打撃
GST hits Bhutanese industries
Kuensel、2017年7月14日、Rajesh Rai記者 (プンツォリン)
http://www.kuenselonline.com/gst-hits-bhutanese-industries/

【ポイント】
GSTが施行されて以降、ブータンの産業はインドへの輸出ができない状態が続いている。不透明な今後の方向性や、両国の政策当局者間での混乱が大きな理由である。パサカ工業団地の入居企業の1つは、7月に入って、まったく輸出を行っていない。地元と首都とで情報が錯綜しており、GSTの論理や実務上の含意を理解することができていないという。特に、国境の町プンツォリンでは、GSTの課税ポイントがどこかについての解釈で混乱を来している。インド側輸入業者は、税関においてブータン側輸出業者がGST支払いを行うことを求めているが、ブータン側では、実際に取引が行われたインド国内の場所での課税を求めている。

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政府、GSTの影響を見極め中
Govt. still studying the impacts of GST system
Kuensel、2017年7月14日、Tshering Dorji記者
http://www.kuenselonline.com/govt-still-studying-the-impacts-of-gst-system/

【ポイント】
既に国内産業への影響も明らかになり始めているが、政府はまだGSTの制度理解に時間を取られており、対策を講じるには至っていないのが現状。

一方、国内製造業者や貿易業者は、既にインド側のカウンターパートから、GSTによってブータンの輸入品の価格は上昇するとの通告を受けている。ブータン政府はインド政府に、対ブータン輸出品の取扱いについての方針明確化を求めている。GSTではインドからの輸出品は非課税になるが、これまでの税制度の下では、消費税が課税されていた。この消費税が撤廃されたことで、インドからの輸出品の価格は下落が見込まれる。例えば、インド製乗用車の価格は14%の下落となる。しかし、もしGSTが輸出車にも適用されるなら、税率は28%と、むしろブータン国内での販売価格が14%上昇することになる。このあたりの扱いの不透明さゆえに、国内ディーラーはインド製乗用車の追加発注は7月に入ってから行っていない。

一方、サービスに関しては、例えばインド人コンサルタントがブータンで仕事する場合、18%のGSTが課税される。ブータン政府よりインドに派遣された1回目の交渉団は、このサービス課税についての免税措置をインド政府側に求め、原則合意しているとのこと。交渉団は帰国後閣僚向け報告を行い、今後財務省で影響を最小化するための具体的措置を検討していくとのこと。2回目の交渉団は現在デリー訪問中。

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僕もちゃんと理解しているわけじゃないけれど、要するにインド産品の価格競争力がブータン産品にくらべて高くなるということで、インドからの輸入品は安くなり、インドへの輸出品は高くなっていく。さらに、この貿易の取扱いについては未だ曖昧な点も多く、急いで取引を進めて思わぬ影響をこうむらないよう、両国の業者が慎重になっており、貿易量そのものが落ち込んでいるという状況が生じているようだ。

ブータン政府交渉団の主張しているポイントは、輸出品についてはインド国内に持ち込まれた時点での課税ではなく、インド国内各地の引渡しポイントでの課税。これは従来から行われていたことだ。そして、輸入品については、ブータン国内業者が支払った税の還付が受けられた旧来の消費税制度では、この還付金がブータン政府の貴重な収入源となってきた。消費税撤廃とGSTへの移行により、税の還付が受けられなくなるのは政府にとっても痛手なので、ブータン向け輸出品は、インド国内の積載ポイントでGSTを賦課して、その還付金をインド政府がブータン政府に移転するという特別措置の導入らしい。

7月15日付タブロイド紙The Bhutaneseによると、インド政府側はブータン政府の要求に対し、2ヵ月の猶予が欲しいと求めているとのことである。先ずはインド国内でのGSTへの体制移行を完了し、GSTの国内経済へのインパクトを見極めた上ででないと、ブータン政府の求める特別措置の検討は難しいというのがその理由だ。


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