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『入門 犯罪心理学』 [仕事の小ネタ]

入門 犯罪心理学 (ちくま新書)

入門 犯罪心理学 (ちくま新書)

  • 作者: 原田 隆之
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2015/03/04
  • メディア: 新書
内容(「BOOK」データベースより)
近年、犯罪心理学は目覚ましい発展を遂げた。無批判に信奉されてきた精神分析をはじめ実証性を欠いた方法が淘汰され、過去の犯罪心理学と訣別した。科学的な方法論を適用し、ビッグデータにもとづくメタ分析を行い、認知行動療法等の知見を援用することによって、犯罪の防止や抑制に大きな効果を発揮する。本書は、これまで日本にはほとんど紹介されてこなかった「新しい犯罪心理学」の到達点を総覧する。東京拘置所や国連薬物犯罪事務所などで様々な犯罪者と濃密に関わった経験ももつ著者が、殺人、窈盗、薬物犯罪、性犯罪などが生じるメカニズムを解説し、犯罪者のこころの深奥にせまる。

またまた何の脈絡もないテーマ選択でごめんなさい。でも、本人はいたって真面目です。実は、この本のことを知ったのは、講談社現代ビジネスWeb版に掲載された8月9日付のルポ「薬物依存症患者と接するなかで学んだ、二つの大事なこと」を読んだからである。この記事を読んでいると、フィリピンの場合は多分覚せい剤なのだろうが、ブータンでの薬物依存症対策を考える上でも示唆がありそうな気がした。そして、そのルポの一番最後に載っていたのが、同じ筆者による著書『入門 犯罪心理学』だったというわけである。

ルポを読んだ時も、本書を読んだ時も同様に感じたのは、著者の文章が非常に読みやすいという点である。自分には不慣れなテーマだけに、正直言うと本書を読み始めるのにはそれなりに抵抗もあった。往々にして特殊な領域を扱った書籍では専門用語が頻出してそのたびに躓いてサクサク読めないということがありがちだが、この本にはそういうところが一切ない。

薬物依存症患者に関する記述は全体の5%もあるかないかといったところなので、あとの部分は完全に一般教養的な位置付けでの読書となったが、それでもいろいろ気付かされることが多かった。

以下マーカーで線を引っ張ったところを幾つか挙げてみたい―――。

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覚せい剤で逮捕される者の数が一向に減少しないこと、再犯率が高いことを考えれば、薬物犯罪に対しても刑罰だけで対処するには限界があり、依存症治療が必要なことは明らかである。

実際、先進国の中で、薬物使用によって刑務所に入る国は日本くらいのものである。なぜなら、ほとんどの国では、刑罰よりも治療が優先されるからである。

わが国では、薬物使用に対しては専ら刑罰によって対処しており、ほかの選択肢が一切ない。さらに、社会内で治療を受けたくても治療施設が皆無に近いという状況である。

実際のところ、これまでの犯罪心理学研究を見ると、薬物問題への対策として、刑罰には再犯抑止効果がなく、治療、それも社会内での治療が一番効果的であることがわかっている。

犯罪とは、かつて考えられていたほど単純なものではなく、実に多様な要因の影響を複雑に受けた事象であることが明らかになりつつある。

難しいのは、「何を目的とするか」で見方が変わってくることである。例えば、再犯抑止を目的とするのならば、厳罰化よりも治療などのヒューマン・サービスの充実を選択するべきであるし、応報を目的とするなら厳罰化という選択になる。しかし、実際は厳罰化の方向のみが顕著であり、しばしば感情論が先走りする傾向が見られる。

薬物依存症において難しいのは、薬をやめることではなく、やめた状態を継続すること

薬物使用を引き起こす先行刺激(引き金)の同定と、引き金に対処するための方法を学習するコーピングスキル訓練

ほぼ全員に共通する最も多い引き金は、薬物仲間と陰性感情である。薬物を使う仲間が周囲にいると、嫌でも薬物のことを思い出すし、「薬はやめた」と言っても、薬を使うように誘われる危険性は大きい。

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この本を読んだ後、日本の薬物依存症対策が専ら刑罰に頼っているという話をブータンの警察の方にしたところ、驚いておられた。ブータンにも主には大麻への依存症が見られる方が若者を中心に大勢いるというのが日本でも報じられているところであるが、日本での報道が日本国内の事情を棚に上げてブータンの薬物依存症をことさらにクローズアップしている背景には、日本で薬物依存症の人は檻の中にある意味「隔離」されていて、普段の僕たちが身近な問題として感じることがないようにしているからに過ぎないのではないだろうか。

再犯抑止という目的に対して、厳罰化が治療に比べて効果が薄いというのが過去の実証研究で明らかになっているというのは驚きであった。

では、ブータンが仮に再犯抑止を目的に掲げてヒューマン・サービスをそれなりに設けているとして、そのサービスの中身はどうかというと、考えさせられるところが多い。僕は薬物依存症患者の更生施設での活動内容を詳細に承知しているわけではないが、漏れ聞く話では、入居者は3カ月程度で入れ替わっていくらしいし、そこで行われている更生プログラムも、結構ゆるい感じがする(間違っていたらゴメンナサイ)。

いずれにしても、本書を読んだことで、薬物依存症対策を考える上での思考の枠組みのようなものができた気はしている。
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