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幼稚園で教える院卒教員? [ブータン]

教員は第12次五カ年計画期間中に修士号を取れ
Teachers will require master’s degree in the 12th Plan
Kuensel、2018年4月2日、Yangchen C Rinzin記者
http://www.kuenselonline.com/teachers-will-require-masters-degree-in-the-12th-plan/

【ポイント】
ノルブ・ワンチュク教育大臣によると、教育大学卒業生に教員免許を与えることよりも、教員のエンパワーメントの方が優先度が高く、7月から始まる第12次五カ年計画でも、教員の能力強化に重点が置かれているという。教員になる者は、全国に3校ある教員養成大学において修士課程を修了していることが求められる。

12次五カ年計画の2年次、すなわち2019年7月までには、クラス12(日本の高3に相当)卒業生の教員養成大学への入学は認められなくなる。教員資格は、学部卒の学生が2年間の修士課程を終えることで認められ、晴れて教員になることができる。現在、修士課程にはサムチ、パロ、ヨンフラの教員養成大学を合わせて約350人の履修生がいる。毎年これくらいの人数が修士課程に入ってくる計算である。

教育相によると、これまでは、学士資格(B.Ed)で教員になっている者は、その後修士課程に進むための留学機会に恵まれれば、学期途中でも授業を投げ出してとっとと離職することが多く、これが教員不足の原因になっている。こうした事態は、修士を終えてから教員にならせることで回避が可能だと述べる。

また、12次五カ年計画では、教員は年間80時間の専門技能研修を受講することができ、政府はこうした専門能力育成に5年間で4億ニュルタムの予算投入を行うことになっている。また、計画では、教員の80%以上が住める職員宿舎を学校構内に建設すること、教員1人につき1台のラップトップ支給、コンピュータ・ラボの各校への設置、インターネット接続その他ICT設備の拡充等も予定されているという。

◇◇◇◇

この件については、去年6月19日に国会内でトブゲイ首相が行った演説の中でも言及されており、小学校教員は最低でも修士号を取得せねばならないと明言された。この報道を最初に知った時、真っ先に思ったのは、「教育の質の担保のために修士課程を設けるのか」という疑問だった。

この疑問は、昨年6月22日付けのJICAブータン事務所Facebookでも、所長声明として掲載されている。以下、抄訳(但し意訳)をご紹介する。
6月19日、ツェリン・トブゲイ首相は、国会でのState of the Nation(国家の現状)演説の中で、すべての教員が最低限修士号を持っていなければならないとの政府の決定を発表しました。私は援助依存を減らすための大きな一歩として、この政府の決定を歓迎したいと思います。

ブータンの学校には、1988年から89名の青年海外協力隊員が派遣されてきました。今でも、体育、美術、障がい児教育の分野では、ハからタシガンに至るまで14の学校に協力隊員が派遣されています。私が皆さんに注目していただきたいのは、日本で教員になるためには、大学の学士課程の4年間のうちに教職課程を履修することで教員免許は取得できるということです。教育の質の保証は、むしろ学校の現職教員による授業研究のような現場の自助努力によって支えられているのです。

たとえブータン政府が依然として個々の学校で協力隊員をを受け入れたとしても、協力隊員が同僚教師と同等の学位を持っていない場合、それが理由で、修士号を持っているブータン人教員に見下されることはないでしょうか。両国の教育制度の違いに由来する今後のトラブルを避けるため、JICAは各学校への協力隊員派遣については今後の出口戦略を考えていきたいと強く感じています。

日本であれば、学部卒でも教職課程を取っていれば教員採用試験を受験できる筈であるが、実際のところ、新卒で未だ学校教員になっていない若い人が協力隊で教師として派遣されてきているケースが結構多い。そうすると、ブータン政府が教育の質的向上を修士課程創設によって実現しようとすることで、2つの国の教育制度の違いから、学校派遣の隊員の学歴がネックになって受入許可が下りなくなるとか、仮に受入れが認められたとしても、今度は配属になった学校で、修士を持っている同僚教員から見下されるとか、こき使われるとかいった事態が発生する可能性があると危惧されている。

JICAの所長はさらに、今年3月にパロ教育大学で行ったスピーチの中でも、「教育の質を高めていきたいというブータン政府の方向性については理解するので、今後は徐々に学校配属からフェーズアウトしていき、逆に大学での教員養成の方に協力の軸足を移していきたい」とも述べている。全国の教員総数を考えると、話は五カ年計画の計画期間中に全て終わるわけではないので、「周りはみんな修士持ち」みたいな完全アウェーな事態はすぐには起きないだろう。時間をかけてシフトしていくということか。

それにしてもこの報道。ブータンでは修士課程は就業前研修という位置付けで教育的要素が強いということを示唆している。僕らの修士課程に対するイメージは、研究をやりたい人が、研究テーマを持って入ってくるところなのだが、この国ではそうではないらしい。ただ、少なくとも僕が知っている多くの国では修士課程の位置付けはやっぱり研究活動にあるので、日本人であろうが他の外国人であろうが、修士課程の位置付けが教員の能力開発にあるという話には、「え?」という戸惑いは感じることになるだろう。修士持っている教員が、クラスPP(幼稚園年長組相当)を教えている姿って、なかなかイメージしにくい(苦笑)。また、修士持っている教員に、「修論のテーマ、何だったの?」と訊いたら、どんな反応が返ってくるのだろうか。

また、記事をよく読むと、教育大学で4年間の学士課程を終えても教員になれない、教員になりたければさらに修士課程も履修しろということになっている。それじゃ、何のための教員養成大学なんだろうか。4年過ごしても教員資格を取れないというのなら、そもそも教員養成大学に行こうという学生自体が頭打ちにならないだろうか。

今回のクエンセルの報道を見て、ああ政府は本気なんだというのだけはよくわかった。それが教育の質を高める上で最良の方法なのかどうかは、僕には納得がいかないが。

タグ:教育 大学院
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