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『世界一の馬をつくる』 [読書日記]


28日(土)夜、ドバイで行われた競馬の祭典ドバイWCでは、ドバイシーマクラシックに昨年の日本ダービー優勝馬ワンアンドオンリーも出走しましたが、残念ながら最後の叩き合いで敗れ、3着に終わったと報じられている。残念。

本日ご紹介する1冊は、まさにこのワンアンドオンリーのオーナー、前田幸治さんの著書である。

世界一の馬をつくる

世界一の馬をつくる

  • 作者: 前田幸治
  • 出版社/メーカー: 飛鳥新社
  • 発売日: 2014/11/26
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容(「BOOK」データベースより)
2013年キズナ、2014年ワンアンドオンリーでダービー連覇!素人がゼロから始めた牧場が、なぜこれほど強いのか。稀代のホースマンが初めて明かす、馬づくりと人生論のすべて!

一昨年、キズナがダービー優勝した時、武豊騎手も含めたチームの絆の勝利だとかなり騒がれたのを覚えておられる方も多いと思う。ちょうどこの週末は皐月賞トライアルの毎日杯が開催され、テレビ中継を見ていたら、2年前のキズナの毎日杯圧勝劇を再生してくれていた。相当強い馬で、皐月賞には結局間に合わなかったけれども、その後ダービーでも強い勝ち方をし、秋は凱旋門賞にも挑戦した名馬だ。

なぜチーム・キズナと騒がれたのか、本書を読んだらその意味がよくわかったような気がする。キズナのダービー制覇は、前田氏がサラブレッドのオーナーになった1983年、北海道新冠町に牧場を開いた84年から、実に30年が経過してのダービー初制覇だったのである。馬づくりは人づくりからということで、人材育成にも力を入れ、欧米から一流の専門家を招聘して、スタッフにも馬づくりを学ばせている。そうして作り上げたノースヒルズ牧場、大山ヒルズ牧場からの初めてのダービー馬輩出ということで、騒がれたのである。本書は、そこに至るまでのノースヒルズの取組が描かれている。そういえば、1998年にファレノプシスが桜花賞を制して、前田オーナーと同牧場に初のG1勝利をもたらした時も、同じような騒がれ方をしていたような気がする。そこからダービー優勝に至るまでさらに10年以上を要しているのだから、ノースヒルズ関係者の方々のご苦労がしのばれる。

ただ、僕が競馬に詳しくないからだと思うが、社台グループとノースヒルズの違いについてはイマイチよく理解できなかった。毎年ノースヒルズで種付けしている新馬の頭数が50頭程度と言う中での勝ち上がり馬の頭数の多さを前田氏は強調されているが、僕らからするとこういうビジネスができる人はもともと「持っている」人で、勿論そこからの企業努力はあったとは思うが、初期条件が僕ら庶民とは違いすぎて、取っつきにくい世界のようにも見えるのである。どれくらい投資してどれくら回収できているのか、採算がよくわからないから、ああそうなのという程度しか感じないのだ。

でも、世界一の馬をつくるために、世界一の牧場と人材育成をしてこられたオーナーだ。生産馬によるダービー連覇は実現し、国内的には1つの大きな目標は達成したところだと思うが、世界一を目指すなら、そこから先の海外挑戦も、積極的にやっていってもらいたいものだと思う。ワンアンドオンリーもドバイでは3着だったけれど、今後は英国キングジョージや仏凱旋門賞挑戦が日程に入っているということだから、引き続き要注目だ。

アドラー心理学入門書2冊 [読書日記]

今、本屋さんに行くと、トマ・ピケティの『21世紀の資本』に便乗した本が大流行りで、まとめて平積みにされているコーナーが目立つが、同じように最近やたらと目立つのが「アドラー心理学」に関する本である。何がきっかけだったのかはよくわからないので戸惑いもあるが、何も知らないのも悔しいので、ちょいとかじってみることにした。

アドラー心理学入門―よりよい人間関係のために (ベスト新書)

アドラー心理学入門―よりよい人間関係のために (ベスト新書)

  • 作者: 岸見 一郎
  • 出版社/メーカー: ベストセラーズ
  • 発売日: 1999/09
  • メディア: 新書
内容(「BOOK」データベースより)
日本ではフロイトやユングの名前はよく知られていますが、同じ時代に生きたオーストリアの精神科医であるアルフレッド・アドラーの名前はあまり知られていません。本書ではアドラー心理学の見地から、どうすれば幸福に生きることができるかという古くからの問いにアドラーがどのように答えようとしているかを明らかにし、どのように生きていけばいいのかという指針を示しました。

最初に読んだのは、コミセンで最初に目にしたこの本。アドラーの『嫌われる勇気』の訳者だが、精神科医で実際にカウンセリングもなさっているので、著書の中でも著者が実際にクライアントと交わした会話とかが度々出てくる。これに加えて、著者が自身の子どもとの接し方のような個人的体験と、アドラーの逸話、そしてアドラーの弟子の逸話が次から次へと登場する。いろいろな例示をするのはいいが、あまりにごっちゃに出て来るので、今自分がどこにいるのかわからなくなり、正直読みづらさを感じた。

わかったようなわからなかったような入門書だった。こちらの「読む気」度が問われていたかも。ちゃんと理解しようと思って読みはじめたわけじゃないので、読み進めるのも難儀で、毎日少しずつしか読めないから、余計に「今どこだっけ?」ということになってしまうのだろう。

とはいえ、当たり前のことが言われているような印象が強い本だった。そこで、コミセン図書室で別のアドラー本を見かけたので、もう1冊読んでみることにした。今度はマンガ版だ。手っ取り早く読むにはちょうどいい。

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『グリーン・エコノミー』 [仕事の小ネタ]

グリーン・エコノミー - 脱原発と温暖化対策の経済学 (中公新書 2115)

グリーン・エコノミー - 脱原発と温暖化対策の経済学 (中公新書 2115)

  • 作者: 吉田 文和
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2011/06/24
  • メディア: 新書
内容(「BOOK」データベースより)
震災後のいま、原発依存からの脱却、経済の復興と発展、地球温暖化対策が大きな課題となっている。「自然エネルギーは原発の代替にならない」「これ以上の省エネの余地はない」「温暖化対策は経済発展をさまたげる」等の懐疑論もあるが、制約を転じて発展に変える発想が必要である。ドイツやデンマークなど諸外国や国内先進地である北海道の事例を紹介・検証しながら、理想と現実を繋ぐロードマップを提示する。

最近、JICA研究所がドイツ経済研究所(DIE)と共催したシンポジウムに出てみた。そのシンポジウムの話は既にJICA研究所のHPに掲載されているのでそちらをご覧いただければと思うが、その中で印象に残ったのは冒頭で行われたDIEのショルツ副所長の基調講演で、ドイツが持続可能な開発にドイツ国内で取り組む国家戦略を策定しているというお話だった。同じような国家戦略が日本にあるかといったら多分ない。「持続可能な開発」の定義がはっきりしていないこともあるけれど、もっと大きいのは、この言葉を用いて国際交渉の場に出ておられる政府関係者の暗黙の前提が「途上国の」持続可能な開発であって、そこで想定されるのは、途上国向けの開発協力だからではないかと思う。ドイツの国家戦略というのは、ドイツ国内での取組みも含めた持続可能な開発への貢献なので、途上国の持続可能な開発に協力するにしても、単に援助を行うというのだけではなくて、貿易とか投資とか、補助金の廃止とか、留学生や出稼ぎ労働者の受入れとか、さらには国内での温室効果ガス排出削減とかだったりとか、考えられる選択肢は多い。そしてそれらが持続可能な開発に向けて政策的に一環しているかが問われている。ひょっとしたら僕らの消費パターンが持続可能でなかったりしないか、プラゴミのリサイクルがちゃんと行われているのか、といったことまで問われているのかもしれない。安いからといって購入した製品を、途上国で組み立てている工場で児童労働を利用していたなんて事態もあるかもしれない。

このセミナーに出る少し前から、本日紹介する本は読みはじめていた。その中でもドイツについては紹介されていて、環境政策とエネルギー政策、経済成長促進策が連携した、一貫性のある政策体系になっていると評価されていた。それに比べて我が日本は・・・と思わなくもなかったけれど、そんなに詳しくないのでこれ以上は言えない。日本で同じことをやろうとしても、省庁間の縦割りだけでなく、環境とエネルギーと成長を並立しようというのが国民的議論になっていない難しさも痛感する。

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『世界一やせる走り方』 [読書日記]

世界一やせる走り方

世界一やせる走り方

  • 作者: 中野ジェームズ修一
  • 出版社/メーカー: サンマーク出版
  • 発売日: 2015/02/10
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容(「BOOK」データベースより)
体脂肪がみるみる落ちる29のコツ、教えます。一生、太らない体をつくる方法を、パーソナルトレーニングの第一人者がやさしく教える。あなたの体が変わる「やせスイッチ」を見つけよう!

やせれているかどうかはさておき、僕は一応「市民ランナー」と自称できるぐらいには走っている。12月、1月に月間200kmの走り込みをやり、2月の青梅マラソン(30km)、3月1日の立川シティハーフマラソンを完走している。20年前に2週間に1回ペースでマラソン大会に出ていた頃の自己ベストにははるかに及ばないけれど、同年齢の中では平均的なレベルでは走れていると思う。いっとき離れていたランニングの世界に戻って来れたのは、駅伝のような、ちゃんと走らないと仲間に迷惑がかかるというプレッシャーの中に身を置きつつ、5~10kmぐらいの短い距離を走るというイベントに誘ってくれた職場の同僚のお陰だと思う。シリアスにフルマラソンやウルトラマラソンを狙って走り込むのとは違い、仲間と楽しく走って、走り終わってから宴会で盛り上がるという楽しみ方ができるからだろう。

機会あって昔所属していた走友会の仲間と駅伝を走ったりもするが、ランニング以外で共通の話題が少ないことから、自ずと話題がタイムのことになってしまい、やたらと人のタイムを気にする人もいるので、ちょっとついていけないと感じるところもある。職場のランニングクラブでは僕は最年長の部類だが、昔の走友会では昔から存じ上げている方は還暦を過ぎられており、僕などはまだまだ中堅どころということになる。職場のメンバーには女性も半数以上いて華やかなのに対して、走友会は男性中心である点も大きな違いだ。

さて、今シーズンの大きな目標だった青梅30kmをクリアして、目標達成感からその後ランニングを少し休んでいる。それまで走り込んだ貯金を使って立川のハーフも走ったけれど、それ以降2週間はまったく走らず、昨日は助っ人で参加する駅伝があったので、その前に一度だけ試走して、その上で駅伝は走った。それでも今月の累積走行距離は40km程度に過ぎない。仕事で大きなヤマ場が今月中旬にあったのも大きいし、今年はスギ花粉へのアレルギー反応がひどすぎ、ジョギングに出かけると後半くしゃみと鼻水で苦しい思いをする。10km程度の距離を走るのはリスクが大きいので、5km弱のジョギングをこまめに行うようなパターンに今後は切り替えていく方がいいなと思っている。

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《1区間7.2kmの駅伝でも、走り終えるとくしゃみが止まらなくなった…》


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『Makerムーブメント宣言』 [仕事の小ネタ]

Makerムーブメント宣言 ―草の根からイノベーションを生む9つのルール (Make: Japan Books)

Makerムーブメント宣言 ―草の根からイノベーションを生む9つのルール (Make: Japan Books)

  • 作者: Mark Hatch
  • 出版社/メーカー: オライリージャパン
  • 発売日: 2014/07/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容紹介
本書は、レーザーカッター、CNCミリングマシン、3Dプリンターなどの工作機械や、CADソフトウェアなどを備えた会員制工房(メイカースペース)として知られる「TechShop」のCEOによる書籍です。まったく製造業に関わりのなかった人々が、持って生まれた創造性と“民主化された"工具、無理なく自由にできる時間と資金を活用して、アイデアを形にし、ハードウェアスタートアップとして起業したり、余暇を活かしたビジネスを立ち上がるなどして、それぞれの望みに合った成功を手に入れる様子を紹介します。また、クラウドファウンディングや大企業とMakerの関わりなど、Makerムーブメントを支える環境についても解説し、この分野における米国の現状を理解するために役立ちます。

この本、近所の市立図書館で借りていたのだが、2週間で次の予約が入り、どうしても返却しなければいけなくなった。本来なら貸出期間の延長手続を取り、4週間かけてじっくり読みたかったのだがそういうわけにもいかず、仕事の方が忙しくてじっくり読んでいる時間もないまま、とにかく飛ばし読みを強いられた。

本書は実は二度目の挑戦だった。最初に読んだ時は、何が書いてあるのかさっぱりわからず、返却期限が到来してしまったので挫折して返却した。二度目となった今回は、前回に比べれば読みやすさは感じたけれど、「ものづくりの復権」だの「第三次産業革命」だのと喧伝されるメイカーズ・ムーブメントの本なのに、作られた「もの」に関する口絵がまったくない。書かれた文章だけで理解しろというのはなかなか困難で、あまり読者にやさしい本だとは言えない。その点で、日本の情報科学芸術大学院大学(IAMAS)の小林茂先生の書かれた解説は写真も添えられていてわかりやすい。

解説がわかりやすく感じるもう1つの理由は、本書は米国の文脈で書かれているのに対し、解説は日本の文脈で書かれているからだと思う。米国のテックショップは、ものづくりで起業しようと考えているような人が結構集まって来ているような印象で、テックショップができたことでわざわざその近所に遠方から引っ越してくるような人までいるらしい。そういう一攫千金狙いの起業家が集まってくることで、コラボやイノベーションの機会も生まれ、テックショップを中心とした産業集積も生まれてくるのかもしれない。そこで必要とされるのは、プロトタイプが出来上がったとしてそれを量産化したり営業したりするのに必要な資金で、そういうのに資金提供してくれるエンジェル投資家やベンチャーキャピタルが育ってないといけない。

日本の場合はどうだろうか。クラウドファンディングは随分と盛んになったように思えるけど、そういうのに資金を出してくれるような出し手の規模は決して大きくないような気がする。それに、そもそも日本でテックショップやファブラボといった市民向け工房を利用している人って、自分にとってのオンリーワンのグッズの製作のようなカスタマイズにデジタル工作機械を使うことが多く、なかなかそれをもとに起業というところにはつながっていないのではないかという気がする。

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『パブリック』 [仕事の小ネタ]

パブリック―開かれたネットの価値を最大化せよ

パブリック―開かれたネットの価値を最大化せよ

  • 作者: ジェフ・ジャービス
  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2011/11/23
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
これまでのプライバシー/パブリックの境界を越えて今、人々が自分をオープンにさらし、シェアしはじめている。それは、“パブリックであることが価値を生みだす”ことに、ますます多くの人が気づいてきたからだ。それは個人にとどまらない。企業は、透明性とコラボレーションによるイノベーションの可能性に気づき、政府や自治体は莫大な保有データを公開することで新たな価値を生みだしはじめた。ネットを介して生まれつつある“パブリック”―それは、ソーシャルメディア革命と3.11を経て見えてきた、大公開時代の新しいフロンティアだ。

ビッグデータについて勉強していると、必ず突き当たるのがプライバシーの問題である。これまでに読んだ書籍の中では、プライバシー云々を言うよりもデータ活用によりもたらされる便益が大きければビッグデータの活用は進められるべきなのではないかという意見が大勢だったような気がする。プライバシー云々での実害が具体的にあるのかというと報告されるケースは意外と少なく、プライバシー問題というのは多分に感覚的な「気持ち悪さ」というレベルのものに過ぎないのではないか等等。そうかもなという気がしないでもない。

プライバシーというのを僕達が考える機会といったら、ソーシャルメディアにどれくらい個人の特定できる情報を出すかという問題がすぐに思いつく。僕はこのブログでは家族の写真は載せないようにと妻から釘を刺されており、Facebookでもそれが徹底させられている。Facebookで家族の写真を掲載するのは、公開範囲を極めて限定して、実家の両親に孫の近況を知らせることだけを目的として掲載するケースに絞られている。そこまでやるかという気がしなくもないが、これも当の家族ひとりひとりの気持ちの問題のような気がするので、そのルールは守っているところだ。

ソーシャルメディアにおけるもう1つの機会は、僕自身の素性をどこまで明かすかという永遠の課題もある。後で上げ足取られるのはかなわないので、僕は自分の会社や業界に対する批判的な記事はこのブログでは書かないようにしている。たまに納得いかない仕事で長時間の残業を強いられたりする時にその事実を淡々と書いているケースはあるし、記事の内容を読んでいればわかる人にはわかってしまうだろうとは思う。会社に関して言えば、どこまでを情報公開するか、透明性強化の議論が業界内にある中で、我が社としてどこまでその流れに応えるのかという喫緊の課題がある。僕はどんどんやったらいいと思っているけれど、どうやるかという技術的なところがわかる人が実は社内に少ないのではないかというのが気になっている。

「パブリック」と「プライベート」というのを考えるにあたって、考えられる論点はかなり幅広い。このことが結果的には本書を読みにくいものにしているような気がする。人によってこの本から得たいと思うアイデアや情報が相当異なるため、それらを各章で網羅していくと、結局何が書いてあるのかが分かりにくくなってしまうようだ。おそらく「パブリック」と「プライベート」の境界線というのは文脈に依存するところが大きく、国によっても時代によっても異なる、特に現代はパブリックにする領域がかなり広がってきているという趨勢にある。多分そんなことを著者は言いたかったのだろう。

自分はこの本から何を知りたいのかを予め明確にして、その部分に絞って読んでいくことを勧める。では僕がどこに付箋を付けたかというと、以下の通りである。

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『なぜデザインが必要なのか』 [読書日記]

なぜデザインが必要なのか――世界を変えるイノベーションの最前線

なぜデザインが必要なのか――世界を変えるイノベーションの最前線

  • 作者: エレン ラプトン
  • 出版社/メーカー: 英治出版
  • 発売日: 2012/01/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容(「BOOK」データベースより)
コミュニティを生み出す劇場、泥をエネルギー源とするランプ、落ち葉と水だけで作られる食器、赤ちゃんの命を守るモニター、携帯電話を使った遠隔医療、空気をきれいにする建築資材…世界をより良いものにするための「デザイン」の数々。2010年ニューヨークで開催された大好評デザイン展 “Why Design Now?” のすべてを収録。

この本は図鑑である。Cooper Hewitt National Design Museumで3年に1回開催されている"National Design Triennial"というイベントで、本書に収録されているのは2010年に開催された第4回の出展作品である。第4回のデザイン展のタイトルが、『なぜ今、デザインなのか?"WHY DESIGN NOW?"』だったらしい。

「エネルギー」「モビリティ」「コミュニティ」「素材」「豊かさ」「健康」「コミュニケーション」「シンプリシティ」の8つのテーマで、203項目が紹介されている。21世紀も15年が経過し、これから2050年に向けては、単に経済的な発展だけではなく、同時に社会や環境の持続性にも目を向けていくことが求められるようになりつつある。貧困や格差、気候変動や環境破壊など、社会問題、環境問題に対して、肩ひじ張って真面目に取り組むのは勿論大事だが、そこにデザインという要素を加えることで、さりげなく自然体で問題解決に取り組んでいるように見せることができるようになるかもしれない。問題だ、問題だなどと大上段に訴えかけられたらドン引きする人であっても、少々の遊び心があって楽しく取り組めるようなら、参加するのに心理的なハードルはさほど高くはないだろう。

そういうさりげなく問題解決に取り組んでいる姿を見せるのがデザイナーのセンスだと思う。僕たち人類と地球の生態系の間に生じている不調和を軽減させようと、世界中のデザイナーたちが試行錯誤を重ねた末に生んだ作品の数々である。作品の多くは画期的で、まだまだ試作品のものも多い。

ここのところ自分の制御できないところで仕事がどんどん降ってきて柄にもなくパニック状態になっていた。実は体調もあまり芳しくなく、疲れを引きずりながら翌朝を迎えることが多かった。週末もまともに休めたことが少なく、休日出勤するか、そうでなければ自宅にいても、家族の寝ている早朝に起き出してひと仕事終えるとか、夜夕食の後片付けが終わったところで再び外出して喫茶店で仕事の資料の読み込みをしたりもしていた。そうやって仕事に投入できるだけの時間を投入したものの、それでも自己制御できる仕事量ではなかった。

そんな中でこの本は、毎朝出勤前にコツコツ読んだ。写真を眺めているだけでも元気が出てくるので、こういう本に目を通して、少しでも気合いを入れて毎日出勤した。そんな3月前半であった。

『大村智 2億人を病魔から守った化学者』 [読書日記]

大村智 - 2億人を病魔から守った化学者

大村智 - 2億人を病魔から守った化学者

  • 作者: 馬場 錬成
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2012/02/09
  • メディア: 単行本

今日は、日本の天然物有機化学者で元北里研究所の所長である大村智博士の伝記を紹介する。何の脈絡もなくこんな本を読んだのは、この本は大村博士の弟さんから寄贈されたものであるからだ。寄贈されてから半年近くも経つのに、いまだに読んでいないのは申し訳ないと思い、今月に入ってから急遽読みはじめた。読書メーター上で「積読」状態になっている本がかなり増えてきたので、それを少しでも捌いていこうと思ったのである。

ここで、大村博士の業績をウィキペディアから拾ってみる。

45年余に亘り独創的な探索系を構築し微生物の生産する有用な天然有機化合物の探索研究を続け、これまでに類のない450種を超える新規化合物を発見した。一方、それらに関する基礎から応用にわたる幅広い分野の研究を推進した。遺伝子操作による初めての新規化合物の創製、マクロライドを中心とした一連の生物有機化学的研究と有用化合物の創製、工業的にも重要な抗寄生虫抗生物質イベルメクチン生産菌の遺伝子解析など、いずれも世界に先駆けた研究であり、新しい研究領域を切り開いてきた。

大村博士が発見した化合物のうち25種が医薬、動物薬、農薬、および生命現象を解明するための研究用試薬として世界中で使われており、人類の健康と福祉の向上に寄与している。加えて100を超える化合物が有機合成化学のターゲットとなり、医学、生物学、化学をはじめ生命科学の広い分野の発展に多大な貢献をしている。 その中の抗寄生虫薬イベルメクチンは、熱帯地方の風土病オンコセルカ症(河川盲目症)およびリンパ系フィラリア症に極めて優れた効果を示し、中南米およびアフリカにおいて毎年約2億人余りの人々に投与され、これら感染症の撲滅に貢献している。さらにイベルメクチンは世界中で年間3億人以上の人々が感染していたが、これまで治療薬のなかった疥癬症および沖縄地方や東南アジアの風土病である糞線虫症の治療薬としても威力を発揮している。

その他、生命現象の解明に多大な寄与をしているプロテインキナーゼの特異的阻害剤スタウロスポリン、プロテアソーム阻害剤ラクタシスチン、脂肪酸生合成阻害剤セルレニンなどを発見した。 また、同博士が発見した特異な構造と生物活性を有する化合物は創薬研究のリード化合物としても注目されており、新規抗がん剤などが創製されている。

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『時の罠』 [読書日記]

時の罠 (文春文庫)

時の罠 (文春文庫)

  • 作者: 辻村深月・万城目学・米澤穂信・湊かなえ
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2014/07/10
  • メディア: 文庫
内容(「BOOK」データベースより)
辻村深月、万城目学、湊かなえ、米澤穂信―綺羅、星のごとく輝く人気作家たちによる、“時”をテーマにしたアンソロジー。小学校時代に埋めたタイムカプセルがほどくこじれた関係、配置換えになった「縁結び」の神様の新たな仕事、人類には想像もつかない悠久なる物語…。“時間”が築いたきらびやかな迷宮へ、ようこそ―。

これはアンソロジーを読んだ時に毎回述べていることなのだが、新しい作家の作品を読もうとする時、単行本に手を出すと期待に反して外れた時のショックが大きいので、その作家の短編が収録されているアンソロジーを読んでみることで軽く品定めをすることができるという点で、アンソロジーにはメリットがあると思う。また、あまり作風が理解できず意味がわからなくて長編を読むのがつらい作家の場合も、短編ぐらいなら許せるという点で、アンソロジーにはメリットがある。長編を書いても短編であっても、その作家の作風は書かれる文章にはっきりと出る。要するに、がっかりさせられたり、負担を強いられたりするリスクをある程度軽減するために、アンソロジーは向いていると思う。

そうした意味で、今回の4人の作家によるアンソロジーを読むにあたり、気になっていたのは辻村深月さんと米澤穂信さん。まあ、辻村さんの作品はどちらかというとティーンズ向けだから、僕が今後読むことはないと思っているけれども、米澤さんに関しては岐阜県出身の作家さんだし、応援も兼ねていずれは作品に挑戦してみたいとは思っていた。(それにしても、男性作家には岐阜県出身の方が多いですね。朝井リョウ、中村航、奥田英朗、冲方丁、米澤穂信…。)

一方、万城目さんの作品はなんだかよくわからないところがあって、長編を読むにはそれなりの覚悟が要るので、最近読んでなかった。短編ぐらいで慣らしてみようかと思ったが、やっぱりよくわからなかった。いかにも万城目さんだという作風だった。脱力感が半端ない(笑)。

4作品を通じてのテーマは時空を超えたミステリーというところにあるのかなと思う。そうした意味でも扱いやすいのが小学生時代に埋めた「タイムカプセル」。辻村さんと湊さんは、これを用いた作品を描いている。どちらも良かった。お薦めできる作品だと思う。僕らの世代が小学生だった頃は、毎年卒業する六年生がクラスでタイムカプセルを埋めることを決め、思い出の品々をそこにしまい込むことが当たり前のように行われていた。

多分学校の至るところにそれらしいお宝が埋められたと思うのだけれど、2作品でも言及されている通り、地中に埋めておくと雨水が侵入して中が大変なことになったり、校舎の建て替えなどのために学校の敷地が掘り返されたりする可能性が高いので、これからやろうと思っている小学生と担任の先生は気を付けた方がよい。どうせなら、地中に埋めるのではなく、誰かクラスの代表者が預かり、自宅の屋根裏あたりに保管しておくという方が保管状況は絶対良い。

米澤作品に関しては、評価が分かれそう。僕自身はというと、これを読んだからといって米澤作品に本格挑戦とはならなかった。この構想はもうしばらく寝かせておこうと思う。

『決戦!関ヶ原』 [読書日記]

決戦!関ヶ原

決戦!関ヶ原

  • 作者: 葉室麟他
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/11/19
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容紹介
慶長5年9月15日(1600年10月21日)。天下分け目の大戦――関ヶ原の戦いが勃発。
――なぜ、勝てたのか――
【東軍】徳川家康(伊東潤)、織田有楽斎(天野純希)、可児才蔵(吉川永青)
――負ける戦だったのか――
【西軍】石田三成(葉室麟)、宇喜多秀家(上田秀人)、島津義弘(矢野隆)
――そして、両軍の運命を握る男――
【西軍?】小早川秀秋(冲方丁)
当代の人気作家7人が参陣。日本史上最大の決戦を、男たちが熱く描いた「競作長編」。

連作短編を書く時、主題の割り振りはどのようにして決めるのだろうか。「~をテーマにして、あとは自由に描いて下さい」と言われれば、各々の作家は比較的自由にストーリーを描けるだろうが、今回のように、関ヶ原の合戦に参戦した各々の武将の思惑と各々か徳川家康、石田三成、小早川秀秋、豊臣秀頼らをどのように見ていたのかを描く場合は、どの作家がどの武将を描くのかを先ず決める必要がある。くじ引きだろうか。それとも編集側がある程度割り振りを決めて、各作家さんにアプローチをするのだろうか。あるいは、編集側で作家を7人に絞り込んだ上で、あとは7人の話し合いで誰がどれを取るかを決めたりするのだろうか。

伊東潤が徳川家康を描いているところを見ると、少なくともくじ引きで決めたというわけでもないような気がする。あとの6人は戦国ものを描いたことが今まであったのかどうかがわからないので、間違った想像かもしれないが、予め編集側で候補となる武将のリストを提示し、「お前〇〇やるの?じゃあ俺は△△をやるかな」なんて決めていったのかもしれない。

いずれにせよ、僕の故郷にほど近い関ヶ原で起きた合戦をいろいろな武将の視点から描いたこの連作、最も興味あったのは伊東潤の家康ものが掲載されていたからである。家康が登場する作品は元々多い作家で、家康が一人称で登場する作品として『天地雷動』と『峠越え』もあるが、本能寺の変直後の家康一行の畿内脱出行を描いた『峠越え』以降の家康が描かれた作品がないため、いきなり関ヶ原とはいえ、伊東が「その後の家康」をどう見ていたのかというのには興味があった。その欲求はある程度は満たされたと思う。

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