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『稼ぐまちが地方を変える』 [読書日記]

稼ぐまちが地方を変える―誰も言わなかった10の鉄則 (NHK出版新書 460)

稼ぐまちが地方を変える―誰も言わなかった10の鉄則 (NHK出版新書 460)

  • 作者: 木下 斉
  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2015/05/08
  • メディア: 新書
内容紹介
地方は消滅しない!縮小社会を生き延びる術、本気の人だけに教えます!人口減少社会でも、経営者視点でまちを見直せば地方は再生する! まちおこし業界の風雲児が、地域ビジネスで利益を生むための心構えから具体的な事業のつくりかた、回し方までを、これからの時代を生き抜く「10の鉄則」として初公開。自らまちを変えようとする仲間に向け、想いと知恵のすべてを吐露する。
今週月曜日、TBSラジオの夜の番組『荻上チキ・Session 22』で夏休みの荻上さんに代わって代役MCを務めた社会学者の新雅史先生が、オープニングトークで盛んに薦めていた1冊である。今まちづくりといったら木下斉さんが第一人者だと強調されていた。実はこの本自体は5月にどこかの新聞の書評で見かけ、早々に購入して積読にしておいたものだ。相当に売れている本らしく、普段はあまり本を買わない僕ですら購入に走ったぐらいだから、今店頭で売られている本は既に第六刷に達しているそうな。まあ、そんなに宣伝するなら読んでおこうかと思い、通勤途中の読書用の本として、今週はこれを常に携行して読み進めた。

タイトルに「稼ぐ」という表現を使っているのはよりドラマチックなメッセージにしたいからだと思うが、書かれていることは当たり前のことで、儲からないまちに魅力はなかなか感じない、まちづくりを進めたいなら事業(プロジェクト)として早期に利益を出せることを考えるべきだと主張されている。下手に補助金に頼ったりしてすると効率性がなかなか生まれなくて黒字転換も早期には実現できないという。その通りだと思う。

サブタイトルにある「10の鉄則」というのは次の通りだ。

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『捏造の科学者 STAP細胞事件』 [読書日記]

捏造の科学者 STAP細胞事件

捏造の科学者 STAP細胞事件

  • 作者: 須田 桃子
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2015/01/07
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
はじまりは、生命科学の権威、笹井氏からの一通のメールだった。ノーベル賞を受賞したiPS細胞を超える発見と喧伝する理研の記者会見に登壇したのは、若き女性科学者、小保方晴子。発見の興奮とフィーバーに酔っていた取材班に、疑問がひとつまたひとつ増えていく。「科学史に残るスキャンダルになる」STAP細胞報道をリードし続けた毎日新聞科学環境部。その中心となった女性科学記者が、書き下ろす。
発刊当時、話題になった本。STAP細胞に関する理化学研究所の自信満々の記者会見と小保方晴子さんフィーバーから1年。記者発表前から主要研究者との交流があった毎日新聞科学環境部の女性記者が、その取材記録を整理して本に纏めたものである。STAP細胞事件について書かれたルポとしてはおそらく最初のものであろう。

そもそも生化学に関する予備知識がほとんどない中で、これを読むのは大変だったが、何が問題だったのかある程度は理解できた気はする。小保方さんが研究者として未熟だったというのは確かにそうかもしれない。でも、そういう人がフリーパスで理研に採用され、プロジェクトリーダーになってしまうというのも、システムとしてどこかに問題があったのではないかと思わざるを得ない。だから、タイトルを『捏造の科学者』として、表紙に小保方、笹井、若山の三氏の写真を載せている時点で、どこか違うんじゃないかという気もしてしまう。少なくとも著者の書きぶりからして、笹井、若山の両氏については、多少の複雑な感情は残しつつも、でも研究者としての実績については肯定的に捉えている。それに、画像すり替えというのがこのSTAP細胞事件に限らず、調査委員会のメンバーの過去の研究論文でも行われていたことが明らかになり、理研では割と頻繁になされていたという点で、「捏造の科学者」とはこの三氏のことだけを言っているわけではないとますます思いたくなる。

ただ、無断コピペはやっぱり問題。ましてやそういうコピペに対してより厳しい米国に留学経験がある小保方氏が、引用元を明らかにしないでコピペをやっていたとしたら、やっぱり悪意を感じてしまう。ましてや、20ページにもわたるコピペなど、非常識も甚だしく、単なる見落としではなく、それぐらいのボリュームでコピペをやっているから余計に引用元を明記しずらかったんだろうと思わざるを得ない。(昔、僕の部下にもネット上に掲載されている文章から出典明記せずにコピペをやって自分の執筆担当部分の原稿を書いた奴がいた。そこだけあまりにも彼の文章よりも詳しいので、この情報源を訊いてみて発覚したものだが、本人はネット上で公開されている情報は公共性が高いので、出典明記は不要だ、何が問題だというのかと首を傾げていた。だから、ネット上の情報の引用で出典明記が必要だと思っている人自体がまだまだ少ないのかもしれないという気もする。それでもねぇ…。)

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「ズルさ」のすすめ [読書日記]

「ズルさ」のすすめ (青春新書インテリジェンス)

「ズルさ」のすすめ (青春新書インテリジェンス)

  • 作者: 佐藤 優
  • 出版社/メーカー: 青春出版社
  • 発売日: 2014/12/02
  • メディア: 新書
内容紹介
厳しさを増すこの時代を生き抜くには、実直に頑張るだけでなく、ときには「ズルさ」を発揮することも必要だ──。社会全体が敵になるような大きな困難を乗り越えてきた著者が、「人と比べない」、「嫌われることを恐れない」、「問題から目をそむけない」など、誰でも直面する11のテーマを解き明かしていく。2014年上半期ベストセラー『人に強くなる極意』待望の第二弾。

息抜きで佐藤優さんの本を借りてみた。特に何か期待したわけでもなく。

強いて挙げるなら、本当は仕事をもうちょっとズルくやれたらなと思っているからかもしれない。「ズルく」と言っても、「狡賢い」、「小狡い」ぐらいの意味。反対語は「馬鹿正直」とでもしておこうか。僕は重要な仕事に参画させてもらえなければそれなりに不安を感じる小心者である。

ここ3ヵ月ほどの間、うちの職場では結構重要な会議の準備に一部のスタッフが忙殺されていた。が、僕は手伝わなかった。僕にはほとんど予備知識がなかったし、その会議に我が社がそこまで関わる必要があるのかと疑問だったからだ。でもそれがいつの間にやらすごく重要なイベントに位置づけられるようになり、僕の唯一の部下がそれに巻き込まれた。僕の上司から僕を飛び越えて僕の部下に話が向かった。その間「仁義」が切られることもなかった。部下が忙殺されているのを横目に、全くサポートしなかったわけではなく、多少は手伝った。それでも頑なに僕はその準備には首を突っ込まなかったし、上司からもっと関与しろとも言われなかった。全員が全員それに忙殺されたら他にやらなければいけない仕事が後回しになる。実際昨年度もそういう事態に陥って、本来ならその部下がやってなければいけなかったことができなかった。危機管理の点から言っても、2人で1つの仕事を片付けるだけでなく、時には分担というのも必要だと思う。

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『オープン・イノベーション』 [仕事の小ネタ]

OPEN INNOVATION―ハーバード流イノベーション戦略のすべて (Harvard business school press)

OPEN INNOVATION―ハーバード流イノベーション戦略のすべて (Harvard business school press)

  • 作者: ヘンリー チェスブロウ
  • 出版社/メーカー: 産能大出版部
  • 発売日: 2004/11/10
  • メディア: 単行本
内容(「MARC」データベースより)
ハーバード・ビジネス・スクールで研究されている最新のイノベーション理論手法の限界を認識し、新たなオープン・イノベーションについて執筆。著者自身の経験や著者の人的ネットワークを駆使した調査に基づく内容を紹介。
「オープン・イノベーションの社内勉強会をやらないか」――社内シンクタンクの代表を務める先輩から、声をかけていただいた。製造業におけるプロダクト・イノベーションだったらちょっと距離感があるけれど、ファブラボ(FabLab)に代表される「メイカー・ムーブメント」や、最近国際協力の分野では盛んに用いられる「南南協力・三角協力・知識共有」、一時やたらと関連書籍を読みまくっていた「スマートシティ」なんてのはまさにオープン・イノベーションを狙った動きなわけで、切り口がいろいろあって結構面白いかもと思い、即座に了承した。この夏はオープン・イノベーションのお勉強だ。とっかかりとして、この道の先駆者であるヘンリー・チェスブロウの最も古そうな著作から読み始めた。

実はチェスブロウについて言及するのはこのブログでは二度目である。ジェフ・ジャービス著『パブリック』について紹介する記事を書いた際、その中でチェスブロウの「オープン・イノベーション」についてこう書いている。
カリフォルニア大学バークレー校で准教授を務めるヘンリー・チェスブロウ氏が唱える「オープン・イノベーション」の概念も注目を集めている。それは、これまでの企業が優秀なエンジニアを擁し、自社のみで研究開発を行っていたことに対し、今後、自社の知的財産を他社にオープンにすることで、新たなビジネスモデルや製品を開発し、革新を起こすというものだ。
僕は『パブリック』を読んだ後、チェスブロウの著作も読んでおきたいなと思っていたので、先輩からの勉強会のお誘いに対して、先ずやったのがチェスブロウに当たるという作業であった。

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『幻滅』 [読書日記]


このブログではあまり政治的なコメントはあまりしないようにしているのだけれど、我が家で妻や多少学校で学んで知恵をつけてきた子ども達ですら「それでいいのか」と憤慨しているのが国立競技場建設問題である。ネット上ではいろいろな形での直接間接の批判が繰り広げられているが、中でも衝撃的だったのは2004年アテネ五輪の会場跡地の惨状を伝える写真の数々だった。EU加盟が実現してギリシャがガンガン国債発行してインフラ整備を進めた結果がこれだということで、今のギリシャの債務危機問題のきっかけを作ったのは五輪だとの論調だ。ついでに言うと、2008年北京五輪の会場の写真も流布している。野球場やビーチバレー会場、そしてカヌー競技の会場等。

東京五輪開催後はこうなると言うつもりは必ずしもない。過去の開催地の惨状を見ていると、元々その国であまり盛んとはいえない種目の競技会場は、結局その後利用されないということが教訓として言える。幸いにして今の日本は弱いけどどの種目も一応競技者はいるので、五輪開催後に全く使用されないということはないとは思う。国立競技場だって、主だった競技では今までだって使用されてきたわけだし、コンサート会場として、或いは場合によってはだけどジャイアンツかスワローズの本拠地として野球の試合に使われることだってあるかもしれない。

それでも、今後少子化は一気に進む筈で、どの種目も競技者人口は減っていく。だから、どんな競技会場だって東京ならちゃんとその後も使い続けるとは必ずしも保証できないし、新国立競技場に至っては、毎年の維持費が馬鹿にならなくて目いっぱい使っても赤字になる予想と聞けば、そんなものをなんで作るんだろうかと首を傾げざるを得ない。別に新国立競技場など建設しなくても、埼玉スタジアムや味スタ、日産スタジアム等、FIFAワールドカップ用に整備された既存の施設をうまく活用すればいいじゃないのという気もするのだが。

余談が長くなった。新国立競技場建設問題だけではなく、最近メディアが盛んに取り上げている安全保障関連法案の問題も含めて、時々思うのは、こういうことを外国の知日派と言われる人々はどのように捉えているのだろうかということである。取り分け、長きにわたって日本ウォッチャーをされていたような人々が、今の日本をどう見ているんだろうかというのは興味あるところだ。今の日本の政治経済は米国を指向しているから、むしろ米国人でない日本ウォッチャーの言ってることを知りたい。

そんな折に出会ったのが、英国人社会学者のロナルド・ドーアの近著『幻滅』というタイトルの本だ。

幻滅 〔外国人社会学者が見た戦後日本70年〕

幻滅 〔外国人社会学者が見た戦後日本70年〕

  • 作者: ロナルド・ドーア
  • 出版社/メーカー: 藤原書店
  • 発売日: 2014/11/22
  • メディア: 単行本
内容紹介
「親日家」から「嫌日家」へ!? 依然としてどこよりも暮らしやすい国、しかし近隣諸国と軋轢を増す現在の政治、政策には違和感しか感じない国、日本。戦後まもなく来日、70年間の日本の変化をくまなく見てきた社会学者ドーア氏が、「親日家」から「嫌日家」へ!?

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『森は知っている』 [吉田修一]

森は知っている

森は知っている

  • 作者: 吉田 修一
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2015/04/22
  • メディア: 単行本
内容紹介
自分以外の人間は誰も信じるな――子供の頃からそう言われ続けて育てられた。しかし、その言葉には、まだ逃げ道がある。たった一人、自分だけは信じていいのだ。
南の島の集落で、知子ばあさんと暮らす高校生の鷹野一彦。東京からの転校生・詩織の噂話に興じるような、一見のどかな田舎の高校生活だが、その裏では、ある組織の諜報活動訓練を受けている。ある日、同じ訓練生で親友の柳勇次が、一通の手紙を残して姿を消した。逃亡、裏切り、それとも? その行方を案じながらも、鷹野は訓練の最終テストとして初任務につくが――。
過酷な運命に翻弄されながらも、真っさらな白い地図を胸に抱き、大空へと飛翔した17歳の冒険が、いま始まる!
「ここよりももっと良い場所、あるよな?」「あるよ、いっぱい。私たちが知らないだけで」
ささやかでも確かな“希望”を明日へと繋ぐ傑作エンターテイメント!

久し振りに吉田修一作品を読んだ。僕の読書選択の珍しいパターンは毎週土曜日朝のTBSテレビ『王様のブランチ』なのだが、最近9時30分にすぐにTBSにチャンネルを合わせるのに反対する子ども達の抵抗が弱まり、『ブランチ』の最初のコーナーであっても見られるようになった。そこで少し前に紹介されたのが『森は知っている』だった。

吉田修一といったら出身が長崎だけに舞台が九州という作品が多い印象で、しかも日常普通に生活が営まれているところに、何かのきっかけて普通の人が事件や何らかの波乱に巻き込まれてしまうというストーリーが多いような気がする。『悪人』や『横道世之介』がそんなパターンだった。もう1つの傾向は、日常生活とは対照的な、世論を騒がせるような大きな事件をそれに絡ませるパターンだ。『横道~』に出てきたベトナム難民とか、『路』で出てきた台湾新幹線計画とか。あと、一見普通に見える人が持っている「影」の部分とか(『ひなた』)、淡い恋愛的要素を絡めておそらく2人の会話もそういう普通の2人の普通の会話を淡々と描いていてドラマチックな描写が少ない作家だという印象だ。

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タグ:鷹野一彦
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『楫取素彦と吉田松陰の妹・文』 [シルク・コットン]

楫取素彦と吉田松陰の妹・文 (新人物文庫)

楫取素彦と吉田松陰の妹・文 (新人物文庫)

  • 作者: 一坂 太郎
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/中経出版
  • 発売日: 2014/12/09
  • メディア: 文庫
内容紹介
2015年NHK大河ドラマ「花燃ゆ」の準主役、楫取素彦(小田村伊之助)のことが一番詳しくわかる決定版!!NHK大河ドラマ「花燃ゆ」のヒロイン・文の夫にして、吉田松陰の至誠を継いだ、知られざる偉人・楫取素彦(小田村伊之助)の人生に迫ります。天才で知られる吉田松陰の陰で、彼を生涯支え続け、松陰の死後もその志を継ぎました。幕末、長州藩主の側近として各地を飛び回り、坂本龍馬を桂小五郎に紹介して薩長同盟の端緒役となります。維新後は初代群馬県令として活躍し、富岡製糸場の危機を救い、のちに群馬の父と呼ばれました。こうした楫取の功績は驚くほど知られていません。本書は、楫取素彦と吉田松陰、その妹・文の生涯を丹念に描いた労作です。巻末には、坂本龍馬との出会いを語る楫取の回顧録「薩長連合の発端」と文(美和子)が、松陰がいた頃の杉家の話を語った「楫取美和子回顧録」を特別収録しており、必見です。

今年のNHK大河ドラマ『花燃ゆ』はご覧になっていますか? 僕は、去年の『軍師官兵衛』のように毎週かぶりつきで見るというようなことはないけれど、幕末の出来事を学ぶにはいいコンテンツだと思い、なるべく見るようにしている。井上真央さんがあまり好きじゃないというのもあるのだけど、まあそれは置いておく。むしろ、長年の大河ドラマフリークとしては、『花燃ゆ』というタイトルにも若干抵抗がある。『花神』、『草燃える』、『山河燃ゆ』、『炎立つ』等をガラポンしたらこんなん出ました的なタイトルだ。安易なネーミングだと最初から思っていた。

また、主人公をわざわざ吉田松陰の妹にしなくてもよかったんではないかという気もする。ドラマの視聴率が低迷しているので話題になっているが(僕はそんなに悪いドラマじゃないとも思うが)、夫・久坂玄瑞が蛤御門の変で自刃して長州藩が朝敵と見なされるというドラマのクライマックスが終わると、文が長州藩内外の情勢に絡むシーンが極端に減る筈なので、ドラマの脚本家としては相当頭が痛い時期を迎える。これからの方が視聴率確保が難しいんじゃないかと勝手に心配してしまうところもある。まさかと思うが、坂本龍馬とか西郷隆盛とか木戸孝允とか岩倉具視とかと文を絡ませるんだろうか。それじゃあ『利家とまつ』や『江』の二の舞だ。

なぜこんなことをグダグダ書くかといえば、松下村塾の関係者で吉田松陰と絡んでいた人で1年間という大河ドラマを持たせるとしたら、割と長生きした人――伊藤博文とか小田村伊之助とかを主人公に据えた方が、ドラマの脚本は書きやすかったんじゃないかと思うからだ。取り分け、小田村伊之助の最初の妻は松陰の妹・寿で、寿を亡くした後、松陰の母・滝の勧めもあって寿の妹である文と再婚している。「楫取素彦」に改名した小田村が、明治政府樹立後初代群馬県令になるまで結構な愛妻家だったらしいし、群馬県令を務めていた頃に寿を亡くし、喪が明けてすぐに文と再婚したのも、県令たる者が独り身でいるのも具合が悪かろうというぐらいの感じだったらしいから、楫取を中心に据える方が、多分人物としてもドラマとしても描きやすかったんじゃなかろうか。

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『インドクリスタル』 [読書日記]

インドクリスタル

インドクリスタル

  • 作者: 篠田 節子
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2014/12/20
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
人工水晶の製造開発会社の社長・藤岡は、惑星探査機用の人工水晶の核となるマザークリスタルを求め、インドの寒村に赴く。宿泊先で使用人兼売春婦として働いていた謎めいた少女ロサとの出会いを機に、インドの闇の奥へと足を踏み入れてゆく。商業倫理や契約概念のない部族相手のビジネスに悪戦苦闘しながら直面するのは、貧富の格差、男尊女卑、中央と地方の隔たり、資本と搾取の構造―まさに世界の縮図というべき過酷な現実だった。そして採掘に関わる人々に次々と災いが起こり始める。果たしてこれは現地民の言う通り、森の神の祟りなのか?古き因習と最先端ビジネスの狭間でうごめく巨大国家を、綿密な取材と圧倒的筆力で描きだした社会派エンタメ大作。構想10年、怒涛の1250枚!

篠田節子さんの作品といったら、このブログを始めるずっと前、1990年代末に『ゴサインタン』を読み、2011年1月に『絹の変容』を読んで以来である。正直、この2作品を読んだら篠田作品を次にまた読もうとするには相当な勇気が必要だった。後味が極めて悪く、『絹の変容』に至ってはその後しばらく夢の中にもカイコが出てきた(笑)。二度と読むかと思った篠田作品だったが、それでも再挑戦したのは、新作の舞台がインドだったからだ。

新聞の書評などを読んでいても、その舞台がどこなのかわからなかった。水晶が産出する地域というのは聞いたことがなかったので、きっと僕がまだ訪れたことがない北東部なんじゃないかと勝手に想像していたのだが、実際に本を手にとってみると、それがオリッサ州(オディシャ州)南部、アンドラプラデシュ州との州境に近い山間地であることがわかった。僕自身、以前インドに駐在していた頃にこの地域を訪れ、作品にも登場するような山岳先住民の村の生活を垣間見る機会もあった。そこで目にした風景、人々の身にまとった衣装、住居、食べていたもの、11歳の女の子が自分の赤ちゃんを抱いていた姿等を思い出しながら長丁場の作品を読み進めることができた。現地の知人の車で先住民の村まで行ったはいいものの、帰路では激しい夕立に遭遇し、落雷によってなぎ倒された木に道路が塞がれ、真っ暗な中で立ち往生した。蚊にたかられてマラリアやデング熱の心配をしながらどうしようかと悩んだが、知人が携帯でバイクタクシーを呼んでくれて、それに分乗してなんとか最寄りの町まで戻ることができた。首都に住んでいるだけではなかなか経験することのできない、貴重な経験だった。

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『イスラーム国の衝撃』 [読書日記]


今から1年ぐらい前が「イスラーム国」という言葉を聞いた最初だった。ちょっと前だったら中東で国をまたにかけてテロ活動を展開しているといったらアル・カーイダだったと思うが、「イスラーム国」というのが急に登場し、またたく間にイラク・シリア国境地帯で勢力を拡大した。まさに突然という言葉がピッタリだったのだが、この既存の国家の国境線におかまいなしに勢力を拡大し続けるその姿を見ていると、世界史で習った7世紀のイスラム帝国を想起させる。ウマイヤ朝の時代には、西欧のスペインや中央アジア、パキスタンあたりまで勢力下に置かれた。

「イスラーム国」に対する僕の理解は、正直メディアで報道する範囲に限られている。日本人人質事件が起き、メディアで取り上げられるようになった今年の年明け、新聞紙上の書評欄でも「イスラーム国をどう理解すればいいか」というので幾つかの本が紹介されていた。東大の池内恵先生が書かれた『イスラーム国の衝撃』もその中の1冊で、発刊時期が日本人人質事件が大詰めを迎えていた時期でもあったので、この本はかなり売れた。

イスラーム国の衝撃 (文春新書)

イスラーム国の衝撃 (文春新書)

  • 作者: 池内 恵
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2015/01/20
  • メディア: 単行本

内容(「BOOK」データベースより)
既存の国境を越えて活動し、住民から徴税し、「国家樹立」をも宣言した「イスラーム国」―なぜ不気味なのか?どこが新しいのか?組織原理、根本思想、資金源、メディア戦略、誕生の背景から、その実態を明らかにする。

便乗本だと思われるかもしれないが、著者自身がこの本をまとめようと思ったのはむしろイスラーム国が国際舞台に登場した頃だと思うので、発刊時期が日本人人質事件と重なったからと言ってそんじょそこらの便乗商法とはわけが違う。著者はアジア経済研究所の研究員もされていたということだから、中東のいずれかの国に長期滞在して地域研究の基盤となる情報収集と人的ネットワークの構築をしておられた筈である。本書で開陳されているのもその一部でしかない。読んでいて、著者ももっと書きたいことがあったんだろうなと思うところもしばしばだ。新書のボリューム上の制約で、書ききれなかったことも多いかもしれない。

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タグ:中東 池内恵
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『データでわかる2030年の日本』 [仕事の小ネタ]

データでわかる2030年の日本

データでわかる2030年の日本

  • 作者: 三浦 展
  • 出版社/メーカー: 洋泉社
  • 発売日: 2013/05/10
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容(「BOOK」データベースより)
日本の人口はどこまで減る?
高齢化はどこまで進む?
未婚化は止まるか?
都市、郊外、地方はどうなる?
雇用や所得は増えるのか?
世界に先駆けて激変する日本で生きるために知らないとまずい衝撃の予測。これがニッポンの新常識。
僕は三浦展さんの著書のうち、次の3冊をこれまでにブログで紹介している。
 『下流社会』(2006年6月紹介)
 『団塊世代の戦後史』(2008年6月紹介)
 『東京は郊外から消えていく』(2012年10月紹介)
そのいずれでも指摘している通り、データの羅列が多くて総ページ数の3割から4割が図表で占められており、早く読み終われるけどあとで記憶に残らない、コスパが悪くてわざわざ金を払って読む気にならない、などと辛辣なコメントを残してきた。同じ感想は多くの読者の方が持たれるに違いない。

ただ、元々この著者は時代や社会や市場の将来予測をするのに基本的なデータを日頃から使っている人なので、忘れた頃にたまに著書を読んで情報の更新に努めておくとよい。

著者は序文の中で、次のような問題意識を開陳している。
 今、日本は大変な転換期にあります。人口が減り、高齢者が増え、働き手である若い世代が減っていく。社会保障費は拡大し、消費税をはじめとした税金もおそらく上がっていくでしょう。高度経済成長期につくった道路などのインフラも老朽化していきます。2030年、あるいはさらに2050年、2060年といった将来に、いったい日本がどうなっているのか、とても心配です。(中略)私は毎月何度も講演をして、日本の将来の人口や消費についても毎回話していますが、日本の人口が今後どれくらい減るか、どれくらい高齢者が増えるかといった、ごく基本的なことですら、よく知らない人が多いなと感じています。ビジネスパーソンですら、そういうことを知らない人がいる。
 日本の社会が高齢化していることは誰でも知っている。でも、どれくらい高齢化しているかを、きちんと数字でわかっている人はいない。ただ、なんとなく、ぼやーっと、高齢化しているんだと思っているだけです。(pp.4-5)
これが本書を書く問題意識だったということだ。

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