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『流れ星が消えないうちに』 [読書日記]

流れ星が消えないうちに (新潮文庫)

流れ星が消えないうちに (新潮文庫)

  • 作者: 橋本 紡
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2008/06/30
  • メディア: 文庫
内容紹介
忘れない、忘れられない。あの笑顔を。一緒に過ごした時間の輝きを。そして流れ星にかけた願いを――。高校で出会った、加地君と巧君と奈緒子。けれど突然の事故が、恋人同士だった奈緒子と加地君を、永遠に引き離した。加地君の思い出を抱きしめて話さない奈緒子に、巧君はそっと手をさしのべるが……。悲しみの果てで向かい合う心と心。せつなさあふれる、恋愛小説の新しい名作。

気付いたらこの作品は映画版が公開されていた。公私にわたって今の僕の置かれた状況からいうと、これから1、2週間の上映期間のうちに映画館に足を運ぶのはとてつもなく難しい。我慢しきれずに先に原作を読んでしまうことにした。今年初めに『アゲイン-28年目の甲子園』で犯した過ちを再び繰り返すリスクを多少気にしながら。『アゲイン~』の時は、原作を先に読んでから映画を観たら、映画が原作に忠実過ぎて映画の感動が薄れてしまったのだった。

『アゲイン~』の時にも告白した通り、僕は2年ぐらい前から髪型がショートカットの波瑠さんのファンであり、だから『アゲイン~』も映画館で観た。『流れ星が消えないうちに』の奈緒子役も、波瑠さんにはピッタリだと思う。そういう、ちょっとわけありでセリフの少なめのイメージの方が波瑠さんには強い。だから、今人気のNHK朝ドラ『あさが来た』で、おでこ丸出しにしてセリフも多いあさを見ている方が慣れるまでには時間がかかった。

映画の宣伝動画でもご覧下さい。三鷹・武蔵野でロケをやられているとの噂だったけど、この短い予告動画の中にも、三鷹駅西の跨線橋の上で明らかに撮影されているシーンがあり、ますます映画見たさが募った。
―――でも、目下の大事な仕事は、月末までに論文を書き上げることなのですが。



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タグ:三鷹 橋本紡
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『孤独の価値』 [読書日記]

孤独の価値 (幻冬舎新書)

孤独の価値 (幻冬舎新書)

  • 作者: 森 博嗣
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2014/11/27
  • メディア: 新書
内容紹介
人は、なぜ孤独を怖れるのか。多くは孤独が寂しいからだと言う。だが、寂しさはどんな嫌なことを貴方にもたらすだろう。それはマスコミがつくったステレオタイプの虚構の寂しさを、悪だと思わされているだけではないのか。現代人は〈絆〉を売り物にする商売にのせられ過剰に他者とつながりたがって〈絆の肥満〉状態だ。孤独とは、他者からの無視でも社会の拒絶でもない。社会と共生しながら、自分の思い描いた「自由」を生きることである。人間を苛む得体の知れない孤独感を、少しでも和らげるための画期的な人生論。

幻冬舎って、売れる本を企画して売れる著者に執筆依頼するタイプの本を得意としている出版社だと思っていた。本書も、著者によると出版社からの依頼に基づき書かれたようだが、だとするととんでもなく目算を誤ったんじゃないだろうか。

この本は正直言って面白くない。読み進めるのが苦痛で、半分も行かないうちにギブアップしてしまった。

わりと単純な主張を、ああでもないこうでもないと、こねくり回して論じている。著者もそれをわかっているからか所々で「私が言いたいのは~」的な結論要約を付けてはいるが、これだけ自分の思考の過程を自分勝手に書かれると、読み手の側がついていけない。新書はサクサク読みたい僕のような読者には何が何だかわからなくなる。単純なことを1冊の本にするのに、ページ数確保のためにいろいろ書いたという印象が拭えない。

この論点なら10年前に斎藤孝さんが『孤独のチカラ』で書かれている。しかも、斎藤さんの本の方が読みやすい。同じ論点なら齋藤さんの本をお薦めする。

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『イノベーションは新興国に学べ!』 [仕事の小ネタ]

イノベーションは新興国に学べ! ―カネをかけず、シンプルであるほど増大する破壊力

イノベーションは新興国に学べ! ―カネをかけず、シンプルであるほど増大する破壊力

  • 作者: ナヴィ・ラジュ、ジャイディープ・プラブ、シモーヌ・アフージャ
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
  • 発売日: 2013/08/23
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
なぜ先進国では実現できなかったのか? 電気を使わない冷蔵庫、野菜も洗える洗濯機、超低価格車…。常識にとらわれない独創的な発想を生み出す「ジュガード」6つの原則とは?

今からちょうど3年前の11月、原書で読んだ『ジュガード・イノベーション(Jugaad Innovation)』の邦訳。原書で読んだ当時はまだインド駐在員生活への未練もあって、本書を読むにあたっても、「ジュガード」の本場インドでの農村向けBOPビジネスの事例を広く浅く知りたかったというのが動機としてはあった。それから3年経過するうちに僕自身の立ち位置が大きく変化し、むしろイノベーションが生まれるプロセスとか、インド以外の国での事例とかを知っておきたいと思って、邦訳版で読み直すことにした。

問題意識が違うと、同じ本を読み返しても、前回とは異なる発見があったりする。今回はフィリピンのサリサリストアとか、フェースブックの記述とか、いろいろ新たな発見もあった。2週間先にはフィリピンの地方部に行く機会があるので、サリサリストアなんて意識して見てみたいと思う。

インド、フィリピンに限らず、本書で取り上げられている事例は非常に豊富だ。そうした事例をもとに、「ジュガード・イノベーション」に向けた戦略策定・実施の原則というのを、著者は以下の6つに纏めている。

 原則➀: 逆境を利用する
 原則②: 少ないものでより多くを実現する
 原則③: 柔軟に考え、迅速に行動する
 原則④: シンプルにする
 原則⑤: 末端層を取り込む
 原則⑥: 自分の直感に従う

これらの原則は横並びで見てみると、相互に関連していてクリアに6分割することは難しい。自ずと、各原則に関する詳細健闘をしている章を読んでいると、他の原則とも関連する記述が頻繁に顔を出す。概念化における論点のくどさが目につく。それに、「末端層を取り込む」のが原則だというが、フェースブックは末端層を取り込んだビジネスモデルだと言えるのだろうか? また、訳しようがないからしょうがないけど、「ジュガード」という言葉をこれだけ一般化して使うのには違和感を感じる。ボリュームゾーンにアプローチすることが新興国では低中所得層へのアプローチ、即ちBOPビジネスへの指向が「ジュガード」という発想が必要だというのはわかるが、それでも「ジュガード」という言葉は一般には普及しておらず、むしろ「BOPビジネス」の方がはるかに知られている概念だ思う。

また、ミッティクールのような草の根発明の実用化とフェースブックやGEを同列で論じるのはちょっと乱暴な気もする。そこらあたりの一般化には本書はあまり成功しているとはいえない。

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『日本残酷物語』を読む [宮本常一]

『日本残酷物語』を読む (平凡社新書)

『日本残酷物語』を読む (平凡社新書)

  • 作者: 畑中 章宏
  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 2015/05/18
  • メディア: 新書
内容(「BOOK」データベースより)
高度成長の坂道を登りつつあった昭和30年代半ば、宮本常一、谷川健一らが中心となって平凡社から刊行された『日本残酷物語』。名もなき民衆の営みを「物語」として記録した、この叢書はその後の民衆史、生活史のみならず、記録文学などにも大きな影響を与えた。新たな民衆像を求めて描きだそうとしたのは、いかなる「日本」だったか。「最低辺に埋もれた」人びとの記録。

久しぶりに宮本常一絡みの本を読んでみようと思った。この新書は6月には既に購入し、息抜きがしたい時用に蔵書としてとっておいたものだが、今が読み頃かと思い、手に取った。1959年から61年にかけ、平凡社から全7巻が出版された『日本残酷物語』は、宮本常一、山本周五郎、楫西光速、山城巴の編著となっているが、実質的には宮本常一と平凡社編集長だった谷川健一の共同編集といってよい。

このシリーズが慣行に至った背景と、全7巻の概要を紹介したのが今回ご紹介する1冊である。『日本残酷物語』自体は各巻非常に分厚く、たとえその一部は宮本執筆で過去に僕が読んだ宮本の著作の中にも含まれていたものがあるとはいえ、全巻読破には相当時間がかかりそうだ。だから、実際に各巻を読み始める前に、全体像を把握しておくのはそれなりに時間の節約にもなる。逆にわかった気になってしまって実際に各巻を読もうという気持ちがなかなか起きなくなるのはリスクとは言えるだろう。

この本にはいろいろ読み方があると思う。僕の場合は、僕が生まれる以前に存在した、日本における最底辺の人々の姿を、一度コンパクトに学んでおきたいと思ったからである。

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『きみはサンダーバードを知っているか』 [読書日記]

きみはサンダーバードを知っているか―もう一つの地球のまもり方

きみはサンダーバードを知っているか―もう一つの地球のまもり方

  • 作者: サンダーバードと法を考える会編
  • 出版社/メーカー: 日本評論社
  • 発売日: 1992/11
  • メディア: ハードカバー
内容(「BOOK」データベースより)
平和とは、戦争がないことだけを意味するのではない。抑圧、貧困、飢餓、疾病、環境破壊、放射能汚染など。人間の存在をおびやかす「構造的暴力」があるかぎり真の平和はありえない。日本国憲法は「全世界の国民」に武力なき国際貢献の道を提示した。そして、いまこそその理念を具現化するときがきたのである。

今から20年以上前に出たこの本のことを知ったのは、10月25日付の東京新聞(中日新聞)の社説による。この社説がいつまでウェブ公開されているのか分からないので、全文をテキストで転載しておきたい。僕がこの社説を全面的に支持しているかどうかは別として、本書を読もうと思った動機はここにあるということでお許しを。

安保法を問う 甦れサンダーバード

 安全保障関連法の運用で自衛隊の「国際貢献」も一変しそうです。そもそも平和憲法にかなう国際貢献とは。伝説の“救助隊”に重ねて原点をたどります。
 待ちわびた往年のファンも多かったでしょう。今月からNHK総合テレビで始まった「サンダーバード ARE GO」(毎土曜日夕)は、不朽の人形劇版が英国で1965年(日本は66年)に初放送されて五十周年を記念した新シリーズです。時代設定は2060年の近未来。トレーシー一家五兄弟による「国際救助隊」の活躍が斬新なアニメ版で甦(よみがえ)りました。
 非軍事でいかなる国家にも属さず、支援も受けない。あらゆる難事も分け隔てなく地球を守るという究極の国際貢献。サンダーバードの衰えない人気の一因は、この誰にも分かりやすい政治的中立の精神にあるのかもしれません。
 今日、安保法が成立した日本では、自衛隊の活動範囲が海外派遣や武器使用において一気に広がります。安保法の源流をたどれば一つには、1992年、カンボジアの国連平和維持活動(PKO)で自衛隊の本格的な海外派遣に道を開いたPKO協力法に行き着くでしょう。冷戦後、日本の国際貢献の一翼を自衛隊が担うことになった大きな岐路でした。
 安保法と同様、「違憲」世論が渦巻く中、PKO協力法が成立した直後、協力法に反対する若手憲法学者らが出した本が当時、話題を呼びました。
 『きみはサンダーバードを知っているか-もう一つの地球のまもり方』
(サンダーバードと法を考える会編、日本評論社)

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『聞き書 緒方貞子回顧録』 [仕事の小ネタ]

聞き書 緒方貞子回顧録

聞き書 緒方貞子回顧録

  • 作者: 緒方 貞子
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2015/09/11
  • メディア: 単行本
内容紹介
日本外交史研究者として出発しながら、国連にかかわる仕事を続け、民族紛争が激化した1990年代に国連難民高等弁務官をつとめた緒方貞子。その後、「人間の安全保障」を提起し、日本の開発援助を主導していく。生い立ちから現在までの歩みを、詳細な聞き取りによってたどる。日本を代表する国際派知識人の決定版回顧録。
国際協力機構(JICA)の理事長を辞められてから4年近くが経つ。いずれ出るであろうと思っていた緒方貞子さんの回顧録が、お弟子さん2人による計10回のインタビューに答える形でとうとうまとまった。3000円近くする本を買って読むのは勇気が要ったので、先に購入した人から借りて読ませてもらった。

僕は学生時代緒方先生の講義を実際に受けて単位をいただいた。とてもわかりやすい講義をして下さる方で、ノートは取りやすく、90分の授業で眠くなることはほとんどなかった。昔は憧れていてああなりたいと思うところはあったし、そういう人についていけるよう自分も頑張らなきゃと思ったりもした。緒方先生は戦後の国際ロータリー奨学生第1号で米国留学した方で、僕もそのずっと後に同じ奨学金で1年間米国の大学に学部留学させてもらった。だから緒方先生のようにならなきゃとも考えていた。

しかし、今思うところは、この方、出発点が違いすぎで、雲の上の存在すぎるということだ。どんなに頑張っても緒方先生ほど英語が上手にはなれないし、世界中の影響力のある著名人との交流や大勢の場で英語でスピーチすることなんて、ビビりのおっさんにはとうていかなわない。組織のトップとして自ら率先して動きつつ、政治的な働きかけを繰り広げるなんて芸当も、僕にはとてもできない。JICAの理事長としても開発援助実施機関の職員の意識を変えるのは大変だったと本書の中で緒方先生は述懐なさっているが、自ら乞うて緒方先生を理事長に迎えたJICAの職員も、緒方先生の要求水準に、制度面でも知識面でもついていくのは大変だっただろうと想像する。

むしろ、運良く恵まれた環境に生まれ、早くからハイレベルな政治の世界を垣間見、早くから海外で教育を受け、大学院留学の機会も得られるとして、そうした、出発点で既に恵まれていた人が、その出発点のアドバンテージを活かし、生きている間に何をなすのか?というのを考えさせられた。

そう述べた上で、本書を読んでいて気になった述懐について、以下にメモっておく。長ったらしいのはお許しいただきたい。

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『昭和40年男 2015年12月号』 [読書日記]

昭和40年男 2015年12月号

昭和40年男 2015年12月号

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: クレタパブリッシング
  • 発売日: 2015/11/11
  • メディア: 雑誌

商品の説明
特集「俺たちポプコンエイジ。」
音楽の歓びは自分で創り、歌い、そして楽しむことにある―。この理念から生まれたアマチュアコンテストこそ、ポピュラーソングコンテストであった。 多くの昭和40年男たちにとっては、いわゆる歌謡曲とは違う音楽の世界があることを知るきっかけになったコンテストといえるだろう。 自分の言葉を自分の曲にのせ、演奏し、歌うシンガーソングライターたちを世に送り出したポプコンは、音楽が職業音楽家によるものと同義だった時代に、楽器を演奏することも歌をつくることも、決して特別なことではないということを広く認知させた。 長く時代の音楽を牽引し続けてきたポプコンが、我々の音楽観に与えた影響は非常に大きい。 今号では、特に昭和40年男が影響を受けた時代のポプコンについて、そこにあった想いや知られざる事実を明らかにしながら、あらためて堀り下げることで昭和40年男の音楽ルーツの一端を解き明かしていきたい。「CD付録」ポプコンを代表する大ヒット曲の貴重なライブ音源を4曲収録:小坂明子『あなた』/世良公則&ツイスト『あんたのバラード』/クリスタルキング『大都会』/雅夢『愛はかげろう』

酒を飲んで、酔っ払って帰ってきて、最寄り駅でおりて立ち寄ったコンビニで、たまたま見かけるのが隔月刊誌『昭和40年男』。いつもいつもではないのものの、ツボにはまった時にはついつい衝動買いしてしまう。そして、読み終わっても捨てられない。

今回の特集、表紙に若き日の世良公則の躍動感あふれるステージパフォーマンスをフィーチャーし、タイトルには「ポプコン」と来たもんだ。中身も見ずに買い物かごに入れた。帰宅してからはかぶりつきで読みふけった。

2年前に今の部署に異動で来た時は、周囲にカラオケ好きな同僚が沢山いて、飲みに出かけるとたいてい二次会はカラオケという展開で、僕らはそれに向けて、持ち歌の数を増やすのに余念がなかった。2年も経つとその当時の乗りの良かったメンバーは異動や退職でどんどんいなくなり、オジサンの僕との接し方で戸惑う若いスタッフが増えた。お陰でカラオケに行く頻度は落ちたので、以前ほど持ち歌探しには時間を取らなくてもよくなってしまった。悲しいかなそれが現実だ。多分僕自身の異動の日も近いだろう。

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『恋するソマリア』 [読書日記]

恋するソマリア

恋するソマリア

  • 作者: 高野 秀行
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2015/01/26
  • メディア: 単行本
内容紹介
アフリカ大陸の東端に広がる“世界一危険な地"ソマリア。そこには、民主国家ソマリランドと海賊国家プントランド、内戦が続く南部ソマリアがひしめきあい、現代のテクノロジーと氏族社会の伝統が融合した摩訶不思議なソマリ社会が広がっていた。西欧民主主義国家とは全く異なる価値観で生きる世界最大の秘境民族=ソマリ人に夢中になった著者は、ベテランジャーナリストのワイヤッブやケーブルTV局の支局長を勤める剛腕美女ハムディらに導かれ、秘境のさらに奥深くへと足を踏み入れていく。ある時はソマリランド初の広告代理店開業を夢想。ある時は外国人男子にとって最大の秘境である一般家庭の台所へ潜入し、女子たちの家庭料理作りと美白トークに仲間入り。ある時は紛争地帯に迷い込み、銃撃戦に巻きこまれ……。もっと知りたい、近づきたい。その一心で台所から戦場まであらゆる場所に飛び込んだ、前人未到の片想い暴走ノンフィクション。
『謎の独立国家ソマリランド』に続く、高野さんのソマリアシリーズ第2弾。最近、『世界の辺境とハードボイルド室町時代』という対談録まで出版されていて、これが結構面白いとうちの妻ですら知っているくらいである。その近刊に行く前に、『恋するソマリア』は読んでおかねばと思った次第。(単に、図書室でうまい具合に借りられたからというのが実態だけど。)

前作同様、とにかく面白い。前作を読んでから1年半以上経過しているので、本書を読む際にはほとんど予備知識はゼロ状態で、新鮮な驚きと笑いがあった。さすがは紀行文にエンタメ性を加味する高野さんだ。

ただ、前作で著者が「超速」と形容したように現地のソマリ人の言葉や行動はとてつもなく速いだけでなく、前作以降の情勢の変化もまた急激である。今回ソマリランドとソマリアを訪ねるのに高野さんが頼ったつては現地のケーブルテレビ局のネットワークだが、ソマリランドにある本局で最も頼りにしていた盟友は本書がカバーしている期間中にテレビ局を辞めて日刊紙を新たに立ち上げてしまったし、ソマリアの首都モガディシオの支局のスタッフたちも、政府への批判的な報道姿勢があだになって常に銃撃を受ける危険にさらされており、本書の執筆期間中にも、1人は撃たれて重傷を負い、1人は偽造パスポートを手に国外脱出を企て、ノルウェーで難民認定を受ける展開にもなった。

情勢の変化は非常に速く、高野さんが現地で経験したこともあと5年もしたらまったく意味をなさなかったりするかもしれない。

石井光太さんの『幸せとまずしさの教室』を紹介した直後のブログで高野さんのエンターテインメント紀行というのは特に意図があるわけではないが、いずれも現地で住む人々の描き方には悲壮感というのはなく、むしろ与えられた状況の中で淡々と暮らしている様子が窺える。目つきが厳しい現地の人も多いけれど、穏やかな表情の人もけっこういて、ソマリアのように紛争状態で我々の渡航に制限が設けられているような国であっても、日々恐怖と常に背中合わせというわけでもないらしい。

日本に入って来るアフリカの情報といったら外国メディアによるスクリーニングもあって、ポジティブなニュース素材よりも凄惨さや悲惨さを煽って同情を呼ぼうとするニュースがどうしても多くなる。そこに高野さんのような肩の力の抜けたノンフィクションがあると、少しはホッとする。




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『幸せとまずしさの教室』 [仕事の小ネタ]

幸せとまずしさの教室: ~世界の子どものくらしから~ (ちしきのもり)

幸せとまずしさの教室: ~世界の子どものくらしから~ (ちしきのもり)

  • 作者: 石井 光太
  • 出版社/メーカー: 株式会社 少年写真新聞社
  • 発売日: 2015/08/28
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
知ってる? 世界の5700万人の子どもたちが小学校に通えていないことを。世界を旅した作家石井光太さんが伝える、路上に生きる世界の子どもたちのリアルなくらし、そして幸せ。

以前、同じ著者による『絶対貧困』という本を、単行本、文庫本の二度にわたってブログで紹介したことがある。途上国における貧困を、僕たちの住む先進国の貧困と比較しながら14回にわたる講義形式でまとめた労作であり、「絶対貧困」に対する「相対貧困」という概念を具体例も踏まえてよく理解できる良書だと紹介した。
*単行本:http://sanchai-documents.blog.so-net.ne.jp/2009-06-12
*文庫本:http://sanchai-documents.blog.so-net.ne.jp/2011-10-31

本日ご紹介する石井さんの新作は、この『絶対貧困』を小学生でもわかるように編集し直したような1冊である。『絶対貧困』には大人の話、性や暴力の話も多く、子どもは大人の元締めによってその日の売り上げのかなりの部分を巻き上げられてしまう搾取の対象として描かれている。『幸せとまずしさの教室』では、そうした大人に関連する記述を削ぎ落し、目線を子どものそれに合わせ、日本の小学生でも興味を持ちそうなテーマに絞っている。以下がその構成だ。

 1時間目「住まい」:スラムって何?/スラムができる場所/バラックの中
 2時間目「生活の方法」:水とともに/水の危険/病気
 3時間目「学校と仕事」:学校に行ける子ども、行けない子ども/児童労働の種類
             /戦争によって学校に行けない子ども
 給食
 4時間目「ストリートチルドレン」:ストリートチルドレンとは/家と仕事/遊び

主には途上国の貧しい子ども達の様子を描いた内容だが、実はこの授業の前と後に「朝の会」と「帰りの会」というのがあって、朝の会では途上国の貧困が描かれる一方、帰りの会では「幸せってなんだろうか?」という問いを小学生に投げかけ、途上国の子ども達って、貧しいからといって幸せではないのかというのを改めて問うている。

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『ゲリラと森を行く』 [インド]

Touch the GOND 巡回展【東京・表参道】
 ゴンド画(GOND ART)は、インド中央部マディヤ・プラデーシュ州の先住民族によって描かれる伝統的な民族画です。元々は家の外壁に描かれていた絵ですが、ここ数十年の間に紙やキャンバスの上で表現されるようになりました。
 ゴンド画の特徴は民族に伝わる神話や寓話、森の動植物をかたどったユニークなモチーフと、その中に敷き詰められる繊細なパターン模様。
 伝統的な絵画でありながらモダンでポップなゴンド画は、昨今ヨーロッパを中心に現代アートとしても紹介されてきました。世界的に有名なシルクスクリーンの絵本「The night life of trees」(Tara Books/邦訳「夜の木」)など、ゴンド画を挿絵にした絵本も数多く出版されています。
 Touch the GOND3度目となる本個展では、東京・表参道、京都・祇園の2ヶ所で開催いたします。国内外で活躍する約20名のゴンド画家達による原画、絵本・グッズを展示販売する予定です。
tumblr_nwb5pwn8pQ1tdm7mso1_250.jpg この機会に、ぜひお立ち寄りください。
 皆様のお越しを心よりお待ち申し上げております。

【東京・表参道】
◆日時:2015年11月14日(土)~11月19日(木) 
   12:00-21:00(最終日は19:00まで)
◆ギャラリー:Haden Books
◆住所:東京都港区南青山4-25-10南青山グリーンランドビル
◆アクセス: 表参道駅A4出口より徒歩5分
Touch the GOND URL: http://www.gondart-india.com/

インド駐在時代の知人から紹介され、表参道で開催される絵画展に行ってみることにしている。マディア・プラデシュ州の東部山間地の先住民がこうした民族がを描いているというのは全然知らなかったので、実際に見るのが楽しみだ。こういう伝統的な文化は、他の社会との交流が始まると、なかなか継承されにくい。近代化の大波の中で駆逐され、文化の多様性も失われて行ってしまうのは残念なことだ。

さて、そのゴンド族をはじめとするインド先住民族であるが、インドの本がこれだけいろいろと出ているのに、先住民族について紹介されている本は日本では少ない。さらに、この先住民族が住むインド東部の山岳地帯を拠点にゲリラ活動を続けている反政府勢力について書かれた本も、実は日本では少ない。国土が広いだけに、邦人があまり住んでいないこの地域について触れた本が少ないのは致し方ないところかもしれないが、それも知らないでインド通とはなかなか認めにくい。

そんな中で、英ブッカー賞を受賞した小説家で市民活動家でもあるアルンダティ・ロイの著書で、最も最近日本語訳が出版されたのが、2013年5月の『ゲリラと森を行く』である。原作は2011年6月に出たエッセイ集『Broken Republic』だ。


ゲリラと森を行く

ゲリラと森を行く

  • 作者: アルンダティ・ロイ
  • 出版社/メーカー: 以文社
  • 発売日: 2013/05/23
  • メディア: 単行本

内容(「BOOK」データベースより)
グローバル資本の最大の犠牲者=抵抗者。経済発展を謳歌するインドで、掃討すべき「脅威」と名指させる「毛派」とはどんな人びとなのか。インドの世界的女性作家が、生きのびるために銃をとった子どもたち、女性たちと寝食、行軍をともにし、かれらが守り守られる森のなかに、グローバル資本から逃れ出る未来を構想する。

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