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『事典 絹と木綿の江戸時代』 [シルク・コットン]

事典 絹と木綿の江戸時代

事典 絹と木綿の江戸時代

  • 作者: 山脇 悌二郎
  • 出版社/メーカー: 吉川弘文館
  • 発売日: 2002/06
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
江戸時代、中国船やオランダ船により絹や木綿がもたらされ、多くの種類が流通した。縮緬、さらさなどの舶来の絹・木綿の語源、国産の絹・木綿の原系や染色などを解説する近世における織物の全容を解明した労作。

以前、『苧麻・絹・木綿の社会史』をご紹介する中でも触れた、山梨県立博物館の企画展「天の虫のおきみやげ~山梨の養蚕信仰」、展示は明日までということで、行けるとしたらこの日しかないと考え、早くから有給休暇の申請を出していた25日(木)だったが、前夜から次男が熱を出し、妻がその日に次男を病院に連れて行くことになり、休暇なのに山梨まで出かけるとはなにごとかと苦言を呈せられたこともあって、断念せざるを得なくなってしまった。それだったら、代わりに近場で少しぐらいはシルクのことを考える時間を作ろうと思い、市立図書館に2時間ほど立ち寄って、館内閲覧限定だった書籍を流し読みするのに充てた。

この本、既に絶版になっていて、売りに出ている中古本はなんと5500円もする。それだけ払っても購入する価値のある本かどうかはわからないので、先ずは近場で所蔵している図書館を探し、ざっと目を通してみて買うかどうするかを判断しようと思っていた。そう思ってから2年以上放置状態だったのだが、先月から継続中の、読書メーターで「読みたい本」リストに挙げていた本の圧縮作業の一環として、4月までに片づけてしまおうと思っていたことの1つであった。

まあ、事典ですので。さらっと流し読みして、おおまかにどんなことが書かれているかをチェックして取りあえずは良しということにさせて下さい。率直に言って、まえがきもなくいきなり本文に入ってしまうのに度肝を抜かれ、読んでてもああこれは事典なんだというのを再認識させられた。江戸時代に出回っていた糸と織物の種類を、輸入もの、国産とに分類し、その織り方、染め方等がざっと列挙されてる感じである。時おりエピソードが入っていたりもしないこともないが、はっきり言ってしまえばやっぱり事典だ。

ただ、絹と木綿の両方に言及があるのはありがたいことである。強いて1つだけ印象に残ったことを触れておくとすると、既に江戸時代にはインドから更紗(綿織物の1種)が輸入されていたとか、新たな発見だった。

必要があればその都度また図書館で閲覧して、記載内容を確認できればいいだろう。5500円も払う価値のある本だとは正直あまり思えなかった。同じ江戸時代の絹・木綿を扱っているという点では、前述の『苧麻・絹・木綿の社会史』の方がはるかに面白いし、その本は既に入手済みだ。

さて、こうして本書の内容確認をやってお茶を濁した25日であったが、肝心の次男の容態はというと、その日の朝には既に熱がある程度まで下がり、午後には起きて自宅でプラプラしていた。「こんなことなら山梨行ったら良かったのにね」とほざいた妻の首を絞めたくなった(苦笑)。

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『シビックエコノミー』 [持続可能な開発]

シビックエコノミー—世界に学ぶ小さな経済のつくり方

シビックエコノミー—世界に学ぶ小さな経済のつくり方

  • 作者: 00
  • 出版社/メーカー: フィルムアート社
  • 発売日: 2014/08/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容紹介
誰もが経済の中心を担う、市民起業家になれる。私たちはもっと、市民参加型社会を理解し、実行に移すことができる。世界の市民の、市民による、市民のためのイノベーション事例集&解説本!  本書は、名もなき市民1人1人の知恵を結集して起こした、海外の「地域イノベーション」の実例集です。日本国内のソーシャルデザイン本に不足していた、具体的な結果としての「数字」を25のすべての事例で明らかにし、コミュニティやプロジェクト成立の背景、問題解決までのストーリーを、年代ごとにポップなイラストで図説しています。その地域ならではの社会問題、イノベーションが周囲に与えた影響、他地域でも生かせるポイント、他国での類似事例、結論など、すべてをコンパクトに1事例=8ページで見事に整理し、完結して解説しています。また、最終章では成功や失敗を踏まえて「市民起業家に必要な行動ガイド」を8つに絞り込み提案。問題意識を持つ誰もがプロジェクトを立ち上げられる具体策が、丁寧に解かれています。市民としての意識が強い欧米圏で、市民参加型社会をつくるために、コミュニティを活性化するために、大きな社会問題も小さな取り組みから始めるために、日本には足りなかった巻き込み方、さまざまな参加の仕方、結果(数字)の作り方がよくわかる1冊です。

何かの拍子に、この本の存在を知った。多分、ものづくり市民工房の事例が本書にも紹介されていたからだろうと思うが、思いもかけぬタイミングで、市立図書館で順番が回ってきたものだ。ちょっと忙しかった時期なので、タイミングとしては最悪。幸い後ろに順番待ちの人がいなかったお陰で、貸出延長も含めてトータルで4週間かけ、なんとか最後まで目を通した。

市民が主体的に参加して立ち上げる地域経済の取組みを沢山集めた事例集である。そして、その多くは英国の事例だ。その1つ1つはなかなか革新的で興味深い取組みも多い。中にはファブラボ・マンチェスター等、聞いたことがある取組みもあることはあるが、ほとんどは僕のまったく知らなかったもので、目を開かせてくれるものだった。

個別の事例を列挙した後、そこからの含意と教訓を述べておられる。太字で書かれた箇所だけを拾ってみておく。

- シビックエコノミーは、社会、経済、環境の問題を前進させるための欠かせない力として、新しいかたちで
  再び台頭し始めている。


- 市民起業家は、人、地域、地域社会の強さ、繁栄、幸福を増すことに積極的に貢献することができる。

ー 地域――市町村や隣近所――が新しいシビックエコノミーの中心である。

- シビックエコノミーの成長には、公共、民間、第3セクターにわたって、さまざまな考え方ややり方が必要
 になる。


これに関してはちょっと補足しておくと、シビックエコノミーは極めて多様な主導者と参加者の目的と行動力によって牽引される経済なので、政府、地域の公共機関、民間、第3セクターのどの主体であっても、単独では市民起業家の成長のための材料を揃えることができないとも指摘し、その中での公共、民間、第3セクターの果たすべき役割を述べている。

公共部門の役割について、本書は「サーバントリーダーシップ」を提供することだとまとめている。基本になるのは、「時間を追って、地域で起こっていることの正確な把握、地域や組織内での下位者への権限移譲、実践コミュニティーの形成、そしてスチュワードシップ(管理責任)」(p.172)だという。それは容易なことではなく、「人や場所の隠れた機会や能力に気づくだけでなく、それらを組み合わせ直し、革新的な手法で、たとえば仲介、共創、資金調達、委託、成功の測定」(同上)等を行うことが求められるのだという。

- シビックエコノミーが成功するためには、巨大なものと極小のものの橋渡しが必要になる。

- 私たちは、シビックエコノミーをもっと理解し、そして実行に移さなければならない。

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『ロマンシエ』 [読書日記]

ロマンシエ

ロマンシエ

  • 作者: 原田 マハ
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2015/11/25
  • メディア: 単行本
内容紹介
乙女な心を持つ美術系男子のラブコメディ! 有名政治家を父に持つ遠明寺美智之輔(おんみょうじみちのすけ)は、子どもの頃から絵を描くことが好きな乙女な男の子。恋愛対象が同性の美智之輔は、同級生の高瀬君に憧れていたが、思いを告げることもないまま、日本の美大を卒業後、憧れのパリへ留学していた。ある日、アルバイト先のカフェで美智之輔は、ぼさぼさのおかっぱ髪でベース形の顔が目を惹く羽生光晴(はぶみはる)という女性と出会う。凄まじい勢いでパソコンのキーボードを打つ彼女は、偶然にも美智之輔が愛読している超人気ハードボイルド小説の作者。訳あって歴史あるリトグラフ工房idemに匿われているという。過去にはピカソなどの有名アーティストが作品を生み出してきたプレス機の並ぶその工房で、リトグラフの奥深さに感動した美智之輔は、光晴をサポートしつつ、リトグラフ制作を行うことになるが……。

今月初旬、職場の同僚からもらった招待券を2枚持って、東京ステーションギャラリーに出かけた。リトグラフというものにはそれほど興味があったわけではないけれど、せっかくなので妻と2人でデートする口実に使わせてもらった。

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会場で配られていたチラシの裏面を見るだけでも、リトグラフというのがどういうものなのかはご想像いただけるだろう。驚いたのは、映画『エレファントマン』『ワイルドアットハート』、テレビドラマ『ツインピークス』等の監督を手がけたデヴィッド・リンチの作品まで展示されていたこと。この監督、めちゃマルチな才能なんだな。

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もしイノ [読書日記]

もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『イノベーションと企業家精神』を読んだら

もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『イノベーションと企業家精神』を読んだら

  • 作者: 岩崎 夏海
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2015/12/04
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容紹介
280万部のベストセラー『もしドラ』第2弾!! 勝つために必要なのは、全員の「居場所」だった――。主役はマネージャー。野球部はベンチャー企業、人を集め、育て、競争しないで勝てる組織にするには?
【あらすじ】
私立浅川学園に通う1年生の岡野夢は、ベストセラーとなった『もしドラ』と偶然出合います。野球ともマネージャーとも接点がない夢でしたが、友人の真実に誘われて、野球部のマネージャーになることを決心します。しかし、浅川学園には野球部がありませんでした。ゼロから野球部をつくる必要があったのです。そこで、夢と真実はドラッカーの『イノベーションと企業家精神』を読みながら、競争しなくても勝てる、まったく新しい野球部をつくろうとします。果たして2人は、最強チームをつくり上げ、甲子園に勝ち進むことができるのでしょうか?マネージャーたちによるイノベーションは成功するのでしょうか?過酷な競争社会が激化するなか、 「競争しないためのイノベーション」がますます必要になっています。本書は、ドラッカーのイノベーションの原理を丁寧に読み解きながら、メンバー全員に居場所がつくられ、組織が成長し、競争を勝ち抜いていく様子を描いた青春小説です。すべての組織で役に立つ1冊です。

ここ10日ほど、懸案だった英語論文と格闘していたので、専門書がなかなか読み進められないでいる。読書に充てられるのは通勤時間ぐらいだ。電車の中で専門書を読み始めるとすぐに眠くなってしまう。だから、流れるようにページをめくり続けられる小説のようなものでないと、通勤途上の読書にはなかなか向かない。

重松清『たんぽぽ団地』に続いて読んだのは、数年前に爆発的なベストセラーとなった『もしドラ』の続編。但し、僕は『もしドラ』の方は読んだことがないので、前作との比較はできません。

あらすじは上で紹介した通りだ。休部状態だった野球部が、マネージャーたちの手で活動を再開し、3年がかりで甲子園出場を果たしたという形。イノベーションの破壊力を象徴的に示そうとしているから、主人公の夢や真美が3年生を迎えた夏の西東京地区大会は、もう一方的な試合で破壊的に勝ち上がって、ネタ晴らしになってしまうけど、最後は優勝を遂げてしまう。相手チームが手の付けられないくらいの破壊力だ。池田高校の「やまびこ打線」を初めて甲子園で見た時の衝撃にも匹敵する経過だ。著者は金属バットの導入自体を高校野球における「変化」と捉えているから、池田高校がその変化に乗じて成し遂げた「破壊的イノベーション」が、ある程度は念頭にあってこの作品を描いているに違いない。

ドラッカーはこう言っているらしい。
この新しいものを生み出す機会となるものが変化である。イノベーションとは意識的かつ組織的に変化を探すことである。
さらに、この変化をドラッカーは7つの項目に類型化しているそうだ。それが本書の全体を通じてベースになっているコンセプトであり、マネージャーたちは度々自分たちの直面する状況をこの7つの変化のどれに該当するのかを確認しつつ、それによって起こしうるイノベーションが何なのかを考えている。

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『たんぽぽ団地』 [重松清]

たんぽぽ団地

たんぽぽ団地

  • 作者: 重松 清
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2015/12/22
  • メディア: 単行本
内容紹介
昭和の子どもたちの人生は、やり直せる。新たなるメッセージが溢れる最新長編。元子役の映画監督・小松亘氏は週刊誌のインタビューで、かつて主人公として出演したドラマのロケ地だった団地の取り壊しと、団地に最後の一花を咲かせるため「たんぽぽプロジェクト」が立ち上がったことを知る。その代表者は初恋の相手、成瀬由美子だった……。少年ドラマ、ガリ版、片思い―― あの頃を信じる思いが、奇跡を起こす。

海外赴任まで残り2カ月となり、赴任前に読んでおきたい本をできるだけ読み漁りたいと思っている中、意外にも早くチャンスが巡ってきたのが、未だ昨年末に出たばかりの重松清の新刊。購入しようかどうしようかと考えていたところ、偶然にもコミセン図書室の新着本コーナーで発見。直前に返却してくれた借出し第1号の方に感謝したい。

こうして幸運に恵まれて早めに読むことになった重松作品、団地が舞台ということで、どうしても『ゼツメツ少年』や『一人っ子同盟』との比較で書いてみたくなる。どちらも団地やニュータウンを舞台にした、最近の重松作品だ。

『たんぽぽ団地』は時空を飛び越えて過去と現在がつながるファンタジーだが、『ゼツメツ少年』は小説家の先生の物語の中に、現在を生きている子ども達を紛れ込ませるというものだ。現実の描写という手法はとらず、現在と過去、現実世界とフィクションの世界を行ったり来たりする話の展開になっている。正直言うと『ゼツメツ少年』は、各節の間で現実と虚構とのぶつ切りになっていたので話の展開がわかりにくかったが、『たんぽぽ団地』の方は、少なくとも展開自体は時系列順でつながっており、読みやすかった。

『ゼツメツ少年』はいじめや自殺という今の社会問題を正面から取り上げている。これに対して、『一人っ子同盟』と『たんぽぽ団地』は、そもそもが団地生活を取りあげている。『一人っ子同盟』は1970年代の話で、基本的にはその70年代の世界だけで話が展開する。成長した主人公が現在から70年代を振り返るシーンはないこともないけれど、現在と過去をつなげることはあまり意識されておらず、もっぱら70年代の団地のお話だ。

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『蚕の城』 [シルク・コットン]

蚕の城―明治近代産業の核

蚕の城―明治近代産業の核

  • 作者: 馬場 明子
  • 出版社/メーカー: 未知谷
  • 発売日: 2015/07
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
日本の遺伝学は蚕(絹織物産業)から始まった!明治日本の近代化の礎として世界遺産に登録された富岡製糸場と絹産業遺産群。その一つ、荒船風穴に代表される蚕の種(卵)を保存する技術は3・11以降、遺伝学研究にとって非常に重要なものとなっている。カイコをめぐって発達した産業と学問の、黎明期から現在まで明治以来、連綿と続く、カイコの遺伝学を中心に追う。

このところ、珍しくも「蚕(カイコ)」と名の付く新刊本が出てきている。富岡製糸場と上州の絹産業遺産群が世界遺産登録されたことが大きいのだと思う。放っておいたら忘れ去られてしまう日本の文化や産業の遺産にこうして光が当たるのは良いことだ。

僕も少し前にカイコのライフサイクルを勉強し、それを生かして産業として発展させた蚕糸業の歩み自体の理解も深めた。特に製糸の工程については、日本の近代化を支えた明治から昭和初期の群馬や岡谷の様子を調べ、勉強もしてきたつもりだ。ところが、理解困難でなかなか触れられなかった養蚕の一側面がある。それが系統保存と育種である。

そもそも遺伝学なんて中学生の頃にメンデルの法則を少しかじったぐらいだし、一時期わりとよく見ていた競馬でも、サラブレッドの血統について言われていることはよくわからなかった。近代産業としての養蚕が成立する以前なら、自家で掃き立てたカイコの中から形質の良さそうな繭を選んで成虫を羽化させ、交配して次の種を得るような自家再生産をやってたんだろうと漠然と思っていた。しかし、質が一定の繭を大量に生産する必要が生じた近代の蚕糸業はそんなわけにいかないから、品種の改良とか行いつつ、一定品質の種を大量生産する仕組みも整えられていったに違いない。

しかし、そんな掛け合わせの妙による育種や、その系統を長期間保存して絶滅しないよう備える技術など、特別な知識と技術が必要な世界で、僕らのにわか勉強ではとうてい太刀打ちできない話のように思えてならない。現に、この部分については一般読者向けにわかりやすく書かれた本というのが意外と少ない。カイコの飼育に関してはいっぱい本があるのに…。

ところが、そんなジャンルにあえて切り込んだルポライターがいた。

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『恋に焦がれて吉田の上京』 [読書日記]

恋に焦がれて吉田の上京 (新潮文庫)

恋に焦がれて吉田の上京 (新潮文庫)

  • 作者: 朝倉 かすみ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2015/09/27
  • メディア: 文庫
内容紹介
札幌に住む吉田苑美は、23歳にして人生初の恋をする。相手は四十路男のエノマタさん。不器用な乙女は「会いたい」と「知りたい」と「欲しい」の本能のまま、想い人を張り込んだ。だがある時彼の上京を知り、吉田は友人・前田の制止(「正気かい?」)を振り切り後を追う。まだ吉田の存在を知らぬ彼に、ちゃんと出会うために―――。初恋の全てがここにある! 『とうへんぼくで、ばかったれ』改題。

朝倉かすみ作品はこれまで2冊しか読んだことがないが、『田村はまだか』が結構当たりだったので、気が向いたらまた読もうと思っていたところ、昨年出た文庫版の内容紹介が面白そうだったので、読んでみることにした。著者自身が北海道のご出身だからだろうと思うが、今回の主人公も札幌在住の吉田。但し、ストーリーのほとんどは東京・池袋周辺で繰り広げられる。

上記の内容紹介である程度はご想像いただけると思う。短大卒23歳の契約社員の女性が、42歳の独身男性に一目ぼれして、ストーカーまがいの追っかけをするというシチュエーションは容易にはイメージできないけど、20近くも年下であっても一方的に惚れられる可能性があるというのはちょっと救われた気がする。アラフィフティーのおっさんが何言ってんだというご批判はあろうかと思いますが(笑)。

恋愛って、遠くの相手を羨望の眼差しで見守っている間がいちばんいいのかも。首尾よくお近づきになれたとしても、至近距離で相手を見ていると、見えなかったものも見えてくるだろう。憧れだけでは済まない現実も見えてきてしまったりして。基本的にこの作品は吉田の目線で描かれているから、そういう葛藤が積み重なって、結局はうまくはいかなくなる。吉田の目線からだとエノマタさんの良くないところばかりが増幅されていって、エノマタさんのダメっぷりばかりが批判の的になりかねない。

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『苧麻・絹・木綿の社会史』 [シルク・コットン]

苧麻・絹・木綿の社会史

苧麻・絹・木綿の社会史

  • 作者: 永原 慶二
  • 出版社/メーカー: 吉川弘文館
  • 発売日: 2004/11
  • メディア: 単行本
内容(「BOOK」データベースより)
前近代の日本人の三大衣料原料であった苧麻・絹・木綿。その生産はどのように行われ、民衆の暮らしとどう関わったのか。三本の糸を手繰りながら、これまで見えなかった民衆の生活史・社会史像を独創性豊かに織り出す。

少し前に別の記事で、「海外赴任する前に富岡製糸場は見ておきたい」という趣旨の発言をしたことがあった(こちらの記事参照)。その実現は3月以降のお楽しみということにして、今どうしても行きたいのは、実は山梨県立博物館の企画展『天の虫のおきみやげ-山梨の養蚕振興』だったりするわけだ。こちらは展示期間が今月いっぱいまでなので、平日に会社休んで早く行きたいと思っている。そうなると、懸案だった『富岡日記』は後回しで、その前に読んでおくべき積読の書を片付けることからスタートせねばなるまい。

日本の歴史学の泰斗ともいえる永原慶二の著したこの本は、購入してから積読状態での放置が1年以上に及んでいた。海外赴任の日までに積読状態の本をできるだけ減らすという至上命題のため、僕は山梨県立博物館行きを誓ってすぐに、この本を読むのに取りかかった。それでもなかなか読み進めることができず、この1週間でなんとか勢いをつけ、読み切ることができた。

購入した動機は、1冊の本の中で、絹と木綿が扱われてることに尽きる。これまで、絹は絹、木綿は木綿で、日本の歴史の中でどこからどのように登場し、普及していったのかを解説してくれる本は存在していた。どこのどのような本ではどのように描かれてるか、そうした相場観は何となく養成できたように思う。ところが、視点を変えてそこに暮らす人々の衣服として捉えた場合、それを絹、木綿と素材別で切り分けてしまっては、日本人の暮らしがどのように変わっていったのかをダイナミックに捉えることができない。

永原氏の著書の1つに『新・木綿以前のこと』(中公新書、1990年)がある。柳田國男の『木綿以前のこと』になぞらえてこんなタイトルになったのだろう。でも、この本に関するアマゾンのレビュー欄を読むと、この本に書かれているのは主に「木綿以後のこと」だとの批判がある。「木綿以前のこと」にはあまり触れられていない。著者もこの題は気が進まなかったが、編集者に強引に言われてこうなったのだという。著者の心の中にはずっとそんなわだかまりがあったのだろう。晩年になると、「木綿以前こと」と「木綿以後のこと」を統合して、日本の社会の変遷を、衣料の素材の変遷から、捉えようという試みに着手し、本書の二校まで進んだ段階で、他界されるに至ったのだそうだ。

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『経済は「予想外のつながり」で動く』 [読書日記]

経済は「予想外のつながり」で動く――「ネットワーク理論」で読みとく予測不可能な世界のしくみ

経済は「予想外のつながり」で動く――「ネットワーク理論」で読みとく予測不可能な世界のしくみ

  • 作者: ポール・オームロッド
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2015/09/04
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容(「BOOK」データベースより)
時にあっけにとられるほど弱々しく崩れさり、時に信じられないくらい逞しく危機を乗り越える。予測不可能に陥った経済をもう一度理解するため、異端のエコノミストが新しいモデル「ポジティブ・リンキング」を提唱する。

今からちょうど1年前、小学生の子ども達の間で、お笑い芸人8.6秒バズーカーの「ラッスンゴレライ」が突然大ヒットした。「ラッスンゴレライ」という、わけのわからぬ言葉が子ども達の笑いの琴線に触れたのかもしれないが、その面白さに最初に気付いたクラスの誰かが、学校の教室で「これ面白いぞ」と話題を提供し、それを子ども達が自宅のPCでYouTubeでキーワード検索してみて、その面白さを確認した。そしてそれをさらに各々の両親にも話題提供し、それがさらに広まっていったらしい。同じようなパターンで、去年はエグスプロージョンの「本能寺の変」も突然大ブレークした。

ここでのポイントは、1つは学校の教室というある種クローズドなネットワークの中で最初は広まったこと、もう1つはそれを各自がインターネットで確認して、なるほど面白いと思って今度はその家族に広めたことだろう。要するに、学校の教室というネットワークと、家族というネットワークがそれぞれ別々に存在していたのを、子どもがつなぐ役割を果たしたといういうことだろう。これによって、8.6秒バズーカーにしても、エグスプロージョンにしても、かなり突発的にブームになった印象が強い。

本書を読み始めて真っ先に思い浮かんだのは、このお笑い芸人の一発屋たちのことであった。

さて、本書の紹介に話を戻すと、この本は、僕たちがミクロ経済学を習った時に教わった筈の、「合理的経済人」という前提を突き崩す、ユニークな議論を展開している1冊である。「合理的経済人」の考え方は、人は一人ひとりが他人に左右されることなく常に独立して最も合理的な選択をするというものだ。ところが著者によると、人と人がネットワークとしてつながっていると、人はもう独自に行動しなくなり、社会的集団の構成要素として行動するようになる。模倣、つまり周りの人の行動を見て判断し、真似するようになる。

人間はネットワークでつながった仲間を「合理的に模倣している」と考える方が現実をうまく説明できる、という主張だ。人がブームに流されるケース、暴動や衆愚が生まれるケースというのは、僕達の日常生活を見ていればいくつも挙げられる。なぜそうなるのかを説明しているという点で、本書は面白いと思う。このメカニズムをうまく利用できれば、自分が売りたいものや思想を、効率的に短期間で広めることができる、かもしれない。

惜しむらくはこの本、図書館で借りたもので読了の前に返却期限が来てしまい、後ろに順番待ちの人がいたために、未了の状態で返却を余儀なくされたことだ。幸いKindle版もあるようだから、次の海外駐在生活が落ち着き、もし気が向いたら、もう一度読み直してみたいと思う。

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王室に跡継ぎ誕生 [ブータン]


おめでとうございます!
最近、日本国内だけでなく、世界中で聞こえてくるニュースで明るいものがない中で、幸福の国ブータンの国王夫妻に跡継ぎの王子様が誕生したとの報道は、一服の清涼感を僕たちに与えてくれるものだと思います。

AFPが使っているこのワンチュク国王夫妻の写真、すごく好きです。ブータン国民に対してだけでなく、全世界に向けたメッセージを発しているようにも見えます。

ブータンはある意味「持続可能な開発」への取組みでは世界の先進国の1つです。この国の取組みを、世界にどしどし発信していって欲しいと思います。

王子様の健やかな成長を祈念いたします。

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