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『Made by Hand』 [仕事の小ネタ]

Made by Hand ―ポンコツDIYで自分を取り戻す (Make: Japan Books)

Made by Hand ―ポンコツDIYで自分を取り戻す (Make: Japan Books)

  • 作者: Mark Frauenfelder
  • 出版社/メーカー: オライリージャパン
  • 発売日: 2011/06/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
内容紹介
「Makerムーブメント」を主導する雑誌「Make」の編集長、ブロガーとして知られる著者による、ビットの世界からアトムの世界への旅の記録。野菜作り、エスプレッソマシンの改造、シガーボックスギター作り、鶏小屋作りと養鶏など、さまざまなDIY体験を通じて、個人が物を作ることの意味を考える1冊です。「失敗とは恥ずかしいこと」、そして「自家製品は不完全なもの」という固定観念から抜け出して、身の回りの物理環境を創造、改良するという楽しみを、生活に取り入れていく過程をユーモアを交えて綴ります。自分にあったDIYをはじめてみたいと思っている方、Makerムーブメントの根底にある価値観を知りたいと考えている方におすすめです。

別に今住んでいるブータンが何もないから自分でものを作らないと生きていけないというつもりではないが、以前から気になっていた『Made by Hand-ポンコツDIYで自分を取り戻す』を読んでみることにした。先週後半から読み始め、週末にコツコツ読み進めて、今日早朝の読書で読み切った。翻訳が良くて読みやすかったが、上下二段組みになっているので、読み進めるにはある程度時間がかかったのだ。

芝生を枯らして家庭菜園にすること、エスプレッソマシンの改造、鶏小屋の整備と養鶏、お手製ギターの製作、紅茶キノコ(懐かしいでしょ?)の培養、養蜂と、DIY初心者の著者が、インターネットで調べたり、その道の有名人に教えを請うたりして、試行錯誤の末に徐々に成果を上げていく姿が微笑ましいし、羨ましい。

以前住んでいた別の南アジアの国で、僕は自宅の庭でニワトリを飼っていたことがある。本書の著者と同様、家の庭に前に住んでいた人が建てたと思われる小さな小屋があり、中をちょっと掃除すれば鶏小屋として使うことができた。いくらかの飼料は外で買ってきたが、日中は小屋の扉を開けてニワトリを庭に放ち、庭の雑草や虫を食べさせる。また、料理後の野菜くずや食べ残しも庭に撒けば、ニワトリがついばんでくれる。当然その間我が家の愛犬コテツ君は、鎖でつながれる。そうしないとコテツ君がニワトリを食べてしまうからだ。

ニワトリはやがて卵を産むようになる。何を食べさせたか把握しているから、卵は生でも食べられる。卵かけ御飯なんて我が家の定番だった。そして、卵を産まなくなってきたら、今度はニワトリ自身をいただく。唐揚げ等にして、食べ残った骨はコテツ君に食べてもらう。こうして我が家のゴミ排出量はかなり削減された。エコな生活だった。本書を読んでて、20年も前の養鶏経験を思い出した。

今は自宅の裏庭でそんなことをやれるようなスペースはない。サービスアパートメントでの一人暮らしである。でも、ベランダはあるから、その気になったら家庭菜園はできないことはない。ベランダ全然使ってないから、そういう使い方を考えてみても面白いかもしれない。「熟成と発酵」なんてのも面白そうだ。

ファブラボに置かれているデジタル工作機械などを前にすると、途方に暮れてしまう。一体、何を作ったらいいのかがわからない。そんな時、デジタル工作機械だけがものを作る手段じゃなく、日常生活を振り返ってみたら、結構自分自身で作ってしまえるようなものはいっぱいあるかもしれない。しかも、単純なものなら、カッターナイフで木を削るだけでもできてしまう。本書で出てくる木製のしゃもじなんて、まさにそのパターンである。そんなものでもいいというのなら、適用範囲はもっと広がるだろう。本書における著者の取組み事例は、どれも僕らの創作意欲をくすぐるものばかりだ。

今の僕なら、職場の自分の部屋の中をワガモノ顔でブンブン飛び回るでかくてウザいハエを、センサーで飛行方向予測して、ピンポイントで自動的にエアゾールを浴びせる機会なんて欲しいものである。殺生を嫌うブータンで、そんな装置を作っちゃったら、同僚のブータン人がどんな顔をするのかは不安だが。

雑感はこれくらいにして、本書で「これは!」という記述を幾つかご紹介しよう―――。

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冬虫夏草は輸出産業になり得るか [ブータン]

ラヤの冬虫夏草、生育遅れる
Laya experiences low growth of cordyceps fungi
Kuensel、2016年6月23日、Dawa Gyelmoi記者
http://www.kuenselonline.com/laya-experiences-low-growth-of-cordyceps-fungi/

ラヤの人々は、1カ月間有効のの採集許可をかなり残した形で帰郷の途につきはじめている。今年は冬虫夏草の生育状況が良くないからである。ラヤ郡のキンレイ・ドルジ郡長によれば、気候条件により、冬虫夏草の採集は既に数週間遅れているという。前年と違い、今年の天候ははるかに冷涼であった。今年は、冬虫夏草の採集許可証を申請しに郡庁を訪れたのはわずかに383人で、昨年の580人と比べて著しい減少である。高地住民は菌類をしっかりウォッチして、生育状況の低下に気付いていたので、許可証交付を申請しなかったのだ。

すべての世帯は通常3つの異なる許可証の交付を受ける権利があるが、その多くは菌類収集の代わりに、他の業務に従事することにした。キンレイ郡長によれば、1カ月間の採集許可証の失効を待たずに何人かの最終者は既に帰省している。しかも、去年は1日20~30個は採れていたものが、今年は1日10個採集するのも難しい状況である。高地住民によると、冬虫夏草は2015年、質、量ともに不良だったが、5年毎に収穫高は良くなるだろうと期待されている。ラヤには冬虫夏草採集の指定地域が11カ所ある。

一方、ルナナ郡では、前年と比べて採集者数は横ばいだった。ギェンボ・ツェリン郡長によると、5月21日に300人に対して採集許可証を発給した。彼らは6月27日には戻る見込みである。この1カ月の中には、移動にかかる時間としての7日間も含まれる。数名を除き、多くは未だ採集作業の途中だという。前例のない冬虫夏草の低い生長率を経験した昨年と違い、今年の収穫は増えることが見込まれると郡長は言う。

ランテプの指定採集地域を分け合うカトード、カミ両村でも期待は高い。採集者は今年の生育状況に満足している。そう語るのはカトード村のペマ村長だ。昨年は15~20人による採集で、わずか700グラムしか採集できなかった。今年は、カトード村では昨年の15~20人と比べてはるかに多い、40人に採集許可証を交付した。カミ村では70~80人に許可証を交付したという。採集者は6月30日に許可証が失効する。

2016-6-23 Kuensel02.jpg

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ブータンの鉱物資源 [ブータン]

先週後半は新聞紙上で鉱業が取り上げられるケースが多かったので、まとめてご紹介したいと思う。ブータンで鉱物資源というと意外かもしれないが、鉱物資源は水力資源に次ぐブータンの外貨稼得源となっていて、現国王がおっしゃる「5つの宝石」の1つと位置付けてられている。

鉱業セクター、ガバナンスが課題――調査報告書明かす
Study finds mining sector suffers from weak governance
Kuensel、2016年6月23日、Tshering Palden記者
http://www.kuenselonline.com/study-finds-mining-sector-suffers-from-weak-governance/

1つめの記事は、22日(水)に公表された調査報告書の内容に関するもので、23日の第1面にでかでかと掲載されたもので、それなりの紙面を割いて、報告書の内容をかなり詳細の報じているものである。

調査はフランスの経営大学院のベルトラン・ヴェナール教授とブータンの反腐敗委員会(ACC)、王立経営大学、地質鉱山局(DGM)の四者により実施されたもので、DGMにはセクターのモニタリングを行うのに必要な予算や人材が十分配分されていないことや、データ整備が不十分である点などが、課題として挙げられている。

こうしたガバナンス(統治能力)の欠如により、本来国庫に入るべき収入が、2008年から2014年までの間に11億7,775万ニュルタムも失われていて、しかもその損失額は年々増加傾向にあると指摘している。鉱業セクターのGDPへの寄与は2.8%で、2013年の総産出高は40億ニュルタム、うち1億9,960万ニュルタムは鉱山使用料等からなる。

2016-6-23 Kuensel.jpg

その上で、報告書は鉱業セクターの改善に向けて、10項目の提言を行っている。鉱業戦略計画の策定、独立規制当局の設置、コミュニティの関与に関するガイドラインの強化、鉱山借用期間の延長、関係機関間のコーディネーションの強化、鉱業関連法制に関するアドボカシー等が含まれる。報告書はまた、鉱業セクターは汚職腐敗の巣窟になりやすく、22の鉱山会社のうち、31%は最低1回は過去に賄賂を要求されたことがあるという。

情報アクセスも課題として指摘されており、鉱物資源のデータベースの欠如や既存データの未活用も問題視されている。ブータンの鉱物資源埋蔵量は、1990年代初頭にUNESCAPが実施した地質学調査に基づくもので、しかもその調査結果も十分活用されずに今日に至っている。

こうした課題に取り組んでいくためには、DGMの組織・制度強化は必須である。

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『定本 山村を歩く』 [読書日記]

定本 山村を歩く (ヤマケイ文庫)

定本 山村を歩く (ヤマケイ文庫)

  • 作者: 岡田 喜秋
  • 出版社/メーカー: 山と渓谷社
  • 発売日: 2016/04/22
  • メディア: 文庫
内容(「BOOK」データベースより)
都市近郊の低山から奥山の懐深くまで、ときに深い森をぬけ、ときに日本アルプスの高峰を仰ぎつつ、山とともに人々が暮らす風景を訪ねる…。旅行雑誌『旅』の名編集長として知られた著者が、歩いて旅した日本全国の山里のようすを精緻に記録した紀行文32編を収録。1974年に初版が刊行された際は大きな反響があった名作を復刻し、未来に伝えたい山村の風景を再現する。

このところマイブームになっていた日本の旅行記、取りあえずは本書の紹介でラストとなる。1974年といったら、僕は小学5年生。実際に著者が山村を歩いたのはもっと前だろう。1970年前後ということになるだろうか。「新幹線」や「高速道路」といった言葉がチラホラしている。目的地にはスピーディーに行きやすくなってきたけど、途中の景色を忘れがちになるという警告、ないしは愚痴めいたコメントも出てくる。

中身を具体的に紹介するよりも、本書で著者がどこを歩いたのか、一覧表を用意しておくとよいだろう。

【第1部 山村の組曲】
秩父、鳴子、飛鳥路、伊那街道、豊田村(長野県)、保福寺峠(長野県)、大湫(岐阜県)、阿武隈山地、
曽爾村(奈良県)、栗山郷(栃木県)、立山、西湖、朝日岳(山形県)、伯備線(鳥取県)、奥只見、
周山街道(京都府)

【第2部 アルプスの見える村】
木崎湖・中綱湖(長野県)、長坂(山梨県)、赤石岳(長野県)、高ボッチ高原(長野県)、野麦峠(岐阜・長野県境)、
裏穂高、清内路(長野県)、小谷(長野県)、泰阜村(長野県)、開田高原(長野県)、遠山郷(長野県)、
白馬山麓

【第3部 推理する山旅】
祖谷溪(徳島県)、柳久保(長野県)、秋葉街道(長野県)、白神山地(青森県)

著者ゆかりの長野県がどうしても多くなるのはしかたないけど、それでも読んでるととてつもなく面白い。著者の日本史に対する造詣、地質学に対する造詣、民俗学・民間伝承に対する造詣、どれも素晴らしく、単なる旅日記ではなく、読む側も随分といろいろなことが学べる。僕のくらしとは縁もゆかりもない地ばかりだが、挿入された地図を見ながら著者の足取りを追いかけるのはとても楽しいし、50年近く経ったその土地の今を訪ねて見てみたいと思わせられる。

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4カ国間車両相互乗り入れへ一歩前進 [ブータン]

国会、域内車両相互乗り入れ批准を承認
Assembly passes BBIN agreement amid resistance
Kuensel、2016年6月22日、MB Subba記者
http://www.kuenselonline.com/assembly-passes-bbin-agreement-amid-resistance/

ブータン、バングラデシュ、インド、ネパール4カ国間サブリージョナルイニシアチブ(BBIN)の車両の相互乗り入れを認める協定が、21日、国会を通過した。議員総数41名のうち、賛成は28名。この協定は2014年11月にカトマンズで合意され、他の3カ国は既に国内批准手続きを了しており、ブータンのみが批准未了となっていた。

これにより、ブータン入国に当たって他の3カ国のナンバーのトラックが積荷の積み換えを行わずに目的地まで輸送できるようになる。また、不定期運行の旅客用バスも最大30日間の入国が認められる。

一方で国内運輸・旅客業界からは強い懸念が指摘されてきた。政府側は、他国のトラックに対しては、国境でいったん止めて積荷検査を行う権利がブータンには認められていること、また他国から入国する車両は入国審査時に認められたルートだけを通ることとし、そこから外れることは認めないという点で、ブータンの国益は守られると強調している。

地方政府及び野党からも反対の声は根強い。市民への説明不足、外国からの観光客増加による交通渋滞や環境への悪影響、観光業界への影響、安全保障上の懸念等が指摘されている。

おそらくこれで想定されるのは、インドからの輸送貨物と旅行者だろう。もし国境で積荷の積み替えが行われないなら、ブータン国内のトラック業界には結構大きな影響を受けそうだ。一方で、旅行者はというと、そもそも陸路でインドから入国してくる人ってそんなに多いんだろうか。なんとなく、南アジア域内各国向けには別の航空料金を適用しているドルックエアーだったら、空路で入国するインド人旅行者は結構いそうな気がするが。そして、もし旅行者がバスを乗り換えずにそのままブータン国内に入ってきてしまうと、どのような思想の持ち主なのかがわからない中で、安全保障上の問題が起きないとは限らない。

そこまで大げさではなくとも、インド人旅行者って相当声が大きい。ホテルのロビーのソファーで大声でしゃべっているのはたいていインド人旅行者の集団であり、それはティンプーでもよく見かける。

逆にブータン登録の車両が国外に出ていくケースはというと、そういう輸出産品がなかなか思いつかない。人の移動もいわずもがなである。そうすると、この協定でブータンが得られるメリットって何なのか、にわかには想像つかない。だから、特別措置みないなものの適用がブータンに関しては云々されているのだろう。

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「県内総生産(GDDP)」導入? [ブータン]

上院、各県個別のGDP記録を提言
NC recommends dzongkhags record GDP individually
Kuensel、2016年6月17日、Tshering Dorji記者
http://www.kuenselonline.com/nc-recommends-dzongkhags-record-gdp-individually/

今回の記事もクエンセル紙掲載記事の全訳ではなく、要約でご紹介する。

国会上院では各県(Dzongkhag)において、県内の経済活動の結果を集計し、個別に県内総生産(Gross Domestic Product、GDP)を記録するよう提言している。この提言には上院議員の過半数が賛成しており、予算配分も、各県の郡レベルにおける貧困率に応じて行う方向になりそうだという。

一見すると、そんなの当たり前じゃないのかと思えなくもない。そもそもその国の1年間の経済活動の総和が国内総生産(GDP)なのだから、GDPをはじき出す際に各県の経済活動の集計はなされているだろうと思っていた。この記事で驚かされたのは、そうした県別のGDPの算出がなされていないことだ。ではどうやったら国全体のGDPは算出できたのだろうか…。

持続可能な開発目標(SDGs)では、「誰も取り残さない」という原則が掲げられているので、せめて県レベルでの地域間格差の計測ができないと、どの地域にテコ入れする必要があるのかがはっきりしない。ブータンの場合、感覚的には中部および東部、南部地域あたりがティンプー、パロを含めた東部地域と比べても開発が遅れていると考えられている。各県レベルで経済活動を集計してみると、結果として本当にその感覚が実態と合っているのかどうかが確認できるだろう。

しかし、ブータンの総人口は75万人(2013年)で、県は全国に20県あるので、単純に計算しても1県当たりの人口は37,000人である。これだけの小規模であると、経済活動の集計はかえってしやすいかもしれないが、費用対効果を考えると結構重たい作業のようにも思える。各県庁にそういう集計のできるスタッフはいるのだろうか。以前駐在していたインドでは、州別のGDP(Gross State Domestic Product, GSDP)及び州民1人当たり所得がちゃんと集計されていたが、インドは人口13億人であり、GDPを州別で捉える必要性はそれなりに高い。インドは州ごとに首相がいて、州政府がある。

こうした提言の背景には、2012年度以降、政府の歳入に大きな改善が見られない中で、政府としては地方政府に対してより大きな予算と権限を付与して、各県で独自の所得目標を設定し、農業や鉱工業における新しい経済機会を探るよう求めていく、大きな方針があるからである。県レベルで自立と持続可能な開発の実現に取り組むよう、首相も述べている。地方の経済振興と若年層雇用の促進は、大きな課題だ。

分権化はどのように進むのだろうか、要注目だ。
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越境ゾウに荒らされる農地 [ブータン]

シプスの耕作放棄農家、今年も増加へ
More Sipsu farmers to quit this year
Kuensel、2016年6月18日、Rajesh Rai記者
http://www.kuenselonline.com/more-sipsu-farmers-to-quit-this-year/

今回の記事はクエンセル紙掲載記事の全訳ではなく、要約をご紹介する。

ブータン南西部、サムツェ県シプス郡では、毎年大勢の農家が所有する農地での耕作を放棄している。郡内の稲作用地は1,215エーカーあるが、うち50%以上が耕作放棄され、その面積はさらに拡大している。この地域はシプス川の流域であり、土地も肥沃で耕作には向いている。それなのに耕作放棄地の面積が年々増え、多くの農民が村を出て行ってしまうのには理由がある。野生のゾウが荒らすからである。

2016-6-18 Kuensel.jpg

野生のゾウはインド側から国境を越えてやってくる。インド側の経済開発が進み、ブータンでは許されていない武器や手段で追い回され、挙句生息地が限られてくると、ゾウは川を渡り、国境を越えてブータン側にやってきた。ブータン側にはジャングルを想起させる深い森が広がっていた。そうしたゾウに頻繁に農地を踏み荒らされる農家は、寝ずの番にも疲れ果て、やがて耕作放棄してたの土地に移って行ってしまう。今では若者はどんどん地域から流出し、域内の人口は高齢者が多くなってきているという。こうして耕作放棄地が増えると、なおのことゾウには住みやすい土地になっていく。

こうした、人間と野生動物との間の紛争がシプスで顕著になってきたのは、2000年代半ば以降のことだ。稲作用地だけではなく、郡内には400エーカーのトウモロコシ畑もあったが、現在ではピークから80%も減ったという。

各村からメンバーを集めて即時対応チームが編成され、松明やレインコート、レインブーツなどが支給された。しかし、電気柵が設置された地区はない。サイレン設置も検討されたが、効果は薄いとして導入は見送られている。

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僕の故郷でもシカやイノシシによって田畑を荒らされるという被害の声は、年を追うごとに大きくなってきているが、さすがに野生のゾウに荒らされるというのはスケールがでかい。しかも、これは国境をまたぐ問題でもある。インド側で行われている人間の活動が、ゾウをブータン側に追いやっているのだという。この話は相当深刻で、別の記事によると、国会での討議でも度々言及されているらしい。

以前、ブータン農林省の方にこの国の農業の直面する課題は何かを伺ったことがある。第1には、農業の機械化。農業を担える若者が農村に留まらなくなり、残された農民の平均年齢が上昇する一方、農業労働者の賃金も上昇しており、それを農業機械の導入によって補おうという政策が検討されているという。第2には、作物の多様化。野菜や果物等、換金作物のバラエティをさらに増やして、若者にとっても魅力ある農業にするんだという。
第3には、優良種子の生産。農業生産性を上げるためには、機械化に加えて、多収量の品種を開発して、F1種子の大量生産を図る必要がある。そして、第4には、人間生活と野生動物との対立(Human-Wildlife Conflict)の問題への取組みだとか。

初めて聞いた時には、野生のトラのことでも言われているのかと思っていたが、いやはやゾウだとは…。しかも、耕作放棄がさらにゾウに住みやすい環境を作ろうとしているというのだから、負のスパイラルだ。

6月16日付けのクエンセルには、同じシプスの野生ゾウによる被害について、結構生々しい記事が載っている。
http://www.kuenselonline.com/human-wildlife-conflict-takes-a-toll/
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『日本の分水嶺』 [読書日記]

日本の分水嶺 (ヤマケイ文庫)

日本の分水嶺 (ヤマケイ文庫)

  • 作者: 堀 公俊
  • 出版社/メーカー: 山と渓谷社
  • 発売日: 2011/08/19
  • メディア: 文庫
内容紹介
「日本の背骨」を地図で旅する列島縦断6000キロ。空から降り落ちた雨の行く先は太平洋か、それとも日本海か?その運命を決める一本の線=大分水嶺には、自然と人間にまつわる大いなるドラマが秘められていた。本書は分水嶺=日本の背骨にかかわる128の物語を紹介。分水嶺が作り出した興味深い話題や身近な疑問を取り上げ、肩の凝らない解説で読者を空想旅行へと誘います。長らく品切れが続いていた2001年刊行の『日本の分水嶺』がいよいよヤマケイ文庫になります。

少し前にご紹介した『定本 日本の秘境』を読了した際、ヤマケイ文庫の電子書籍版をなんとなく見ていて、面白そうだなと思い、注文してしまった1冊である。理由は割と単純で、僕の生まれ故郷からほど近い奥揖斐の、三周ヶ岳~夜叉ヶ池~三国岳あたりが明らかに分水嶺だったからである。

これが立ち読みできるものなら、中身をチェックしたうえで買う買わないを決めることができるのだが、電子書籍版はそういうわけにいかない。それで購入して読み始めた感想としては、この書籍、日本の分水嶺を網羅しているだけあって、一つ一つの区間の記述はそれほど深いものじゃないというのがわかる。僕自身が分水嶺を経験したのは、岐阜・福井国境のエリアだけのことだから、そこだけ読んじゃったら後はさほど興味がわかない。挿入されている写真や地図を楽しみながら、パラパラとページをめくっていくしかない。

とはいえ、発見も幾つかあった。1つは、岐阜や長野といった、南北に長い内陸県の場合、分水嶺は県内を横切る形で存在しているということ。岐阜県西部地方では、福井県との県境が分水嶺となっているが、高山は日本海側に流れ込む川の流域ということになる。よくよく考えたら、長野県も、伊那地方を流れる天竜川は太平洋に流れ込むが、北部を流れる信濃川は日本海側に流れ込んでいる。

もう1つは、夜叉ヶ池の伝説は、僕らのような揖斐川流域で少年時代を過ごした者にとっては当たり前のように聞かされたお話で、それは西美濃の有名な伝承の1つだと胸を張ってきたが、実は夜叉ヶ池の福井側の下流域にも同じような伝承があるという話は知らなかった。加えて、こうした龍神伝説は他の地方でも似たような話があるらしく、熊本県の九重山系・黒岳の麓にある男池湧水群でも夜叉姫と同じような伝承があるらしい。

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ブータンの空に飛ぶかドローン [ブータン]

ドローン、トンネルプロジェクトで活用へ
Drone to be used for Thimphu-Wangdue tunnel project
Kuensel、2016年6月14日、Younten Tshedup記者
http://www.kuenselonline.com/drone-to-be-used-for-thimphu-wangdue-tunnel-project/

この国の地理条件が突き付ける大きな課題の克服に対して、その答えの1つはドローンかもしれない。ドローンは建設や地図作製といった様々な目的に活用可能だ。こうした理解に立ち、地質鉱山局では、ティンプー-ウォンデュ間トンネルの入り口エリアの地図作成のために、明日、ドローンを使用する予定だ。

地質鉱山局は、ノルウェーの地盤工学研究所(NGI)とともに、昨日、ティンプー市内の経済省敷地内において、ドローン技術のデモンストレーションを行った。ドローンは、敷地内の画像を上空から撮影し、そのデータを加工し、数時間以内に敷地内の3D地図が完成した。このデモンストレーションは、2日間の予定で同局で開催された研修プログラムの一環で、研修はインフラ開発に向けた迅速かつ効果的な地形把握のための新技術を紹介するというものである。

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地質鉱山局の地震学者であるダウチュ・ドゥクパ主任によれば、ドローンは幾つかの目的を達成するのに利用可能であり、地図作製に向けた非常に有効な手段だという。「手始めに、私たちはこの技術を、ティンプー-ウォンデュ間トンネルの入り口エリアで使用してみることにしています。このトンネルについては、かなり詳細な活動が既に終わっています。ドローンを使用することで、私たちの努力を補完することができ、これまで私たちが行ってきた活動に付加価値をもたらしてくれることが期待されます。」

NGIの地域担当マネージャーであるラジンダー・クマール・バシン博士によれば、ブータンの地形図は粗く、地質工学的調査を行うためのアクセスが不可能な地域が多いという。「ブータンで計画されるプロジェクトでは、開始当初に想定されていた費用を上回ってしまうことが多くあります。これは主に、プロジェクト開始当初に詳細な地質工学的調査が行われていないことによって生じています。ドローンは、これまでアクセスが不可能だったプロジェクトの対象地域で事業の実現可能性を調べ、ひいてはプロジェクトの費用を引き下げるのにも役立ちます。」

NGIのHelge Smebye上級エンジニアによれば、ドローンは高分解度の画像を作ることができ、そうした画像が加工・分析されて、対象地域の3D地図の作成につながるのだという。アグリソフト社のソフトウェアを搭載した高性能計算機が作成には用いられる。3D地図は、被災後の損害状況調査やインフラ開発、送電線検査、氷河と積雪状況調査等、様々な目的のために利用することができる。

ダウチュ・ドゥクパ主任によれば、この技術は作業の質を向上させるのを手助けするだけでなく、作業の進捗促進にも役立つという。「この国でのドローン使用に関する規制は現在策定中です。この技術が安全かつ合法的に利用されることが重要です。」

地質鉱山局では、ブータン航空局(BCAA)の承認を取りつけた上で、ドローンを使用している。BCAAは昨年3月以来、ドローンの飛行を禁止している。.

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『定本 日本の秘境』 [読書日記]

定本 日本の秘境 (ヤマケイ文庫)

定本 日本の秘境 (ヤマケイ文庫)

  • 作者: 岡田喜秋
  • 出版社/メーカー: 山と渓谷社
  • 発売日: 2014/01/17
  • メディア: 文庫
内容紹介
昭和30年代前半の日本奥地紀行。1960年に単行本として初めて刊行された際は、秘境ブームを巻き起こした紀行文学の傑作。 戦後の復興を遂げ、都市部では好景気に沸き立つころ、雑誌『旅』(日本交通公社)の名編集長として知られた岡田喜秋氏が、 日本各地の山・谷・湯・岬・海・湖などを歩いた旅の記憶をまとめた紀行文18編を収載。 紀行の名手が紡ぎだす文章は、ときに鋭く、ときにやさしい。 高度経済成長の陰で失われていった日本の風景を描写した、昭和30年代の旅の記録としても貴重である。

ブータンの今を理解したいとき、いちばんいいのは、高度経済成長期を迎える前夜の日本の山村なんじゃないかとふと思った。そんな視点で読み物を物色していて、出会ったのがこの本。僕が生まれる前、昭和30年代前半の日本の、当時でも「秘境」と形容されたような土地を、著者が自ら歩いて、その土地の人々から話を聞いて、紀行文としてまとめたのがこの1冊である。

山、谷、湯、岬、海、湖という6つのテーマで、それぞれ3編ずつのエッセイが綴られている。とはいっても、僕が今までに訪れたことがある土地はひとつも扱われてはいない。辛うじて、北海道の野付岬は近くまでは行ったことがあるという程度だ。これが僕の故郷にほど近い奥揖斐の三国岳や八草峠あたりを歩いて書かれていると、ちょっと感慨もあるんだけど、そもそも揖斐川水系のドン突きでいちばん近場の集落から奥はほとんど民家がないので、秘境は秘境でもやっぱり歩くのには向かないのかもしれない。

それでもなお、自分の生まれ故郷の風景を思い浮かべながら読んだ。僕の記憶が辛うじて残っている奥揖斐の風景といったら僕が10歳くらいの時だから、著者が全国各地を歩かれた頃から既に20年近くが経過していた筈である。従って、僕が当たり前のように覚えている揖斐川水系に何カ所もあった水力発電所も、著者が全国各地を歩いておられた頃には未だ建設されていなかったものがかなりあったに違いない。

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